VRホームスキャン・データ扮析事例(2)

VRDigest編集部
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※本記事は1987年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

新製品のテレビ広告・プロモーション効果についての事例研究

 前号では、カレーマーケットの分析とその新製品の市場浸透状況を紹介した。今回は、ある新製品のテレビ広告やプロモーション活動がその製品の購買行動にどれだけ影響を与えたのか、更に広告やプロモーション活動データが購買行動をどれだけ説明できるかといった試行錯誤の結果を-部紹介するとともに、今後の研究の方向性や可能性についての手懸りを提供したい。

 なお、今回の事例研究は今春新発売された3商品のトラッキングデータによるものであるが、紙面の都合上「食品Aブランド」のケースを中心に紹介する。

  

1.食品Aブランドの広告・プロモーション到達状況

今回事例としてとり上げた食品Aブランドは今年の4月初旬に発売され、その後9週間でマーケットの8.3%の世帯に1度以上の購入がなされている。この間、この新製品の告知と販売促進の為に大量のテレビ広告と、少なくとも3度にわたる新聞折込みチラシ、延3日間にわたるスーパーマーケット内での試食販売が行なわれている(表1参照)。これらの広告・プロモーションの調査世帯への露出量を到達率として比較してみると、表3の通りテレビ広告の到達量が圧倒的に多く、この新製品の告知情報は、ほぼテレビ広告によるものであると言えそうだ。なお、個々のチラシ広告や店内プロモーションの到達状況、及びその計算方法は表2とその注に記した。

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2.チラシ広告・店内プロモーションの直接販促効果

食品Aブランドのチラシ広告は延3回、店内プロモーションは延3日間実施されている。ここでは、少々乱暴ではあるが、まわりくどい購入動機を考えずに、プロモーション実施中にそのストアでの購買行動をそのプロモーションの直接効果とみなすことにしよう。

プロモーション実施中のそのストアでの購買実績は表2に示した通り、ほとんど数量的に取扱える量ではない。

このように、プロモーションの直接効果を計画的に把握しようとすれば、もっと多くのプロモーション実施例をベースに累積的な統計量として取扱わなければならないようだ。

3.テレビ広告の販売促進効果の分析

 図1をみると、チラシ広告や店内プロモーションが実施された週の新規購入率、または市場浸透率の伸びとの間には、ほとんど相関関係がないことはすぐにみてとれることと思う。つまり、前項の直接効果に続いてプロモーション告知からの間接効果も直感的にはほとんど実証不可能であるようだ。(少なくとも、この食品Aブランドのケースにおいては......)

 次に、テレビCMの到達率との関係を調べてみよう。図2は、食品AブランドのテレビCMのHS.GRP(スキャンパネルでのGRP)と市場浸透率の相関図であるが、強い相関関係にあることを示している。他の新製品食品Bブランド、日用維貨Cブランドの場合も、ほとんど同じように強い相関を示す図が描ける。

 そこで、以下に示すような幾種類かの回帰モデルを設定し、各マーケティング指標ごとにその変化を最もよく説明する回帰式を探ることにした。各マーケティング指標相互の関係は表4、実証研究に用いた回帰式は表5、回帰分析結果の最も精密度の良いケースは表6に示した。表6の分析結果を眺めてみると、3ブランド中2ブランド以上のケースで検定的に有意な回帰式は、市場浸透率と購入率に関するものである。試みとして、この2つの回帰式と表4の定義式とを使って4つのマーケティング指標の推定を行ったところ図3の結果が得られた。食品Aブランドのケースは、実測値と推定値との平均絶対誤差(MAE)は市場浸透率で0.25、購入率で0.26、新規購入率で0.30、反復購入率で0.06とかなり良くフィットすることがわかった。また、日用雑貨Cブランドの場合の推定精度はこのケースより幾分良く、食品Bブランドのケースでは精度がやや落ちるという結果であった。特に、食品Bブランドのケースでは図2のようなGRPと市場浸透率の相関図を措くと、きれいな直線が引けず段差のできる箇所があるので、他のマーケティング変数(例えば、店頭配荷率など)をとり込む工夫が必要ではないのかと考えている。

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4.事例分析から得られたこと

 今回の実証的事例研究は、わずかに3ケースの新製品についてのトラッキングデータを分析したものであるので、まだまだ確かなことは言えないが、市場浸透(見方を変えれ拭新規購入)についてはテレビ広告の露出量(GRP)で推定可能という感触が得られた。

今後は、研究事例を数多く蓄積し推定モデルを少しでもタフなものに改良して行く必要があるだろう。また、既存品のマーケティング効果についても順次研究の幅を広げて行きたいと考えている。

 次回は、何か別の角度からの実証的研究成果を紹介したいと思っている。

                               (消費者行動分析部 八木 滋)

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