広告界1992年ECへの対応 

VRDigest編集部
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巨大市場でのブランド戦争に備えて

 世界の熱い目が1992年EC市場の統合に向けられている。 欧州単一市場となるEC、広告界はどうなるのだろうか。月刊ECジャーナルがアド・エージ誌、ケヴィン・コート氏の記事をとりあげているので紹介することにした。

ゲヴィン・コート/「アドバタイジンク・エイジ誌」編集部

 国際企業と広告代理業は、欧州での製品販売とサービスを一新する今後4年間のタイムテーブルに歩調を合わせようと必死の努力を続けている。実施の年をとって1992年構想と呼ばれるこの構想は、EC12ヵ国内の貿易の物理的・財政的・技術的障壁を撤廃するための指令案から成る。

 ECの推定では、この障壁撤廃によりこの間2,000億ドル以上の販売経費が節約されることになる。たとえ拭ケロッグ社は欧州では国によって広告規制が異なるために、コーンフレークのテレビコマーシャルを数種類準備しなければならない。1992年の市場統合計画には、テレビコマーシャル基準の統一という条項も含まれている。これによってケロッグ社もEC域内には同じコマーシャルが使えることになる。もちろん言葉が違うのでナレーターは変わるが、巨額の経費節約になる。

 ブリュッセルのEC委員会本部では、1992年には3億2,000万人の消費者を抱える欧州単一市場が形成され、国際貿易において米国と日本の強力な競争相手となる、との見方を示している。理想は、人・製品・サービスの移動を、米国の州間の移動のように、スムーズに実施すること。衛生・安全、技術基準を続一し、ECの一カ国で販売が許可された製品は自動的に他国でも販売できるように改めることである。

 ブリュッセルの産業ロビー団楓 ヨーロピアン・アドバタイジング・トライパータイトのテンペスト氏は「この市場統合構想が実現されれば販売活動はずっとやりやすくなるはずだ」とみている。この欧州市場改革案は、本来企業側か提唱を始めたものである。特にフィリップス社は欧州の家電製品に単一の技術基準を設ける必要性を声高に主張してきた。

実業界の1992年にかける意気込みは相当なもので、これによって欧州が変貌するだろうことを疑う者はいない。しかし広告専門家の中には、日用品は噂好や文化の差が障害となって国境を越えての販売は難しく、多くは国に販売されるとみる者が多い。ロンドンの広告業界では市場統合が自社のブランドにどんな影響を及ぼすかよく分からない、というのが一般的な反応のようだ。欧州経営センターがさる6月に「1992年に向けたマーケティング」というテーマの会議を主催したところ、一カ月前に参加の予約は締め切られたほどだ。

 ここ最近、国際企業の市場統合を念頭に入れた再編成の動きと広告業界の対応ぶりが目立っている。例をあげてみると以下の通り。

 ●ジョンソン&ジョンソン●

  生理用品シルエッツ3,500万ドル分の販売にあたり、今年は欧州を異なる国々の集合体としてではなく単一市場としてとらえてアプローチしている。同社初の試み。広告担当はサッチ・アンド・サッチ。

 ●パッカー・アンド・スピールボーゲル・ベイツ・ワールドワイド(BSBW)●

  関連会社のテッド・ベイツ社とロンドンのドーランド事務所が併合する際、BSBWのスピールボーゲル会長は「ロンドンに重量級事務所を置くことによりベイツの欧州のネットワークを強化したい」と述べた。

 ●ユナイテッド・ピクチャー・インターナショナル●

  (米国の映画会社パラマウント、ユニバーサル、MGM/UAの輸出部門を担当) 欧州各国市場担当の広告会社を多数解約し、ロンドンのヤング&ルビカムと3,000万ドルをかけた欧州での映画プロモーションを契約。

 ●ジョンソン・ワックス●

  全欧州主義に基く商標戟略を実施するために、約6,000万ドルをかけて、家庭用品と化粧品の販売で、DDBニーダム・ワールドワイド、ペリア、フット・コーン&ベルディングの3社と再び提携した。

 ●マスターカード・インターナショナル●

  欧州のパートナー会社ユーロカードの株式の15%を取得。これにより欧州での販売戟略に積極的に乗り出すかまえ。

 ●フット・コーン&ベルディング社●

  フット・コーン&ベルディング社は強力な欧州のパートナーを求めて、この象バブリシス社と提携した。

広告業界は活気づいている。というのは多国籍の顧客が、特定ブランドを指定して全欧州規模で予算を組んでくるからだ。ヨーロッパ3Mは約50ほどの広告業者と解約し、全欧で2社ないしは4社と契約を結びたい、と考えている。

「部外者にしてみれば、欧州単一市場の考えが徐々に浸透していく様子をみるのは大変興味深い」と、欧州コルゲート・パームオリーブ社のバージン副社長は語る。同氏によると、コルゲート歯磨きなど一部の製品はやがて単-の製法で全欧で販売できることになる。現在のところ、国によって価格の異なる製品もある。

また最初から欧州各地で売れるような製品のみを開発するよう製造部門に命じた企業もある。ジレット社では「ナチュレル・プラス」という名の体臭防止剤(デオドラント)の販売を米国、オランダ、スペイン、北欧で始めた。ロンドンのサッチ・アンド・サッチが広告担当である。

ブリュッセルから次から次へと出されてくる指令の影響を受けない業界は、ほとんどない。ブリュッセルのEC問題のコンサルタント、デデイ氏は、「1992年の市場統合関連の法案は、ほとんどすべての産業に影響する」と指摘する。たとえば航空会社は急速にマーケティングに力を入れ始めた。料金プール制のような今までの独占的慣行が規制されつつあるからだ。西ドイツのルフトハンザ航空では、重要航路には「航路部長」を任命している。

かつては保護されていた西ドイツのビール市場に、外国の競合会社が参入してくるのは時間の問題である。欧州裁判所は咋年、同国の伝統ある純粋ビール法は、厳しい原料条件を守っていない他国のビール製造業者にとっては、貿易障壁であり、不法な障害であるとの判決を下した。英国のバス・エール社はそのビールをドイツ市場に導入するにあたり、デュッセルドルフのB・W・ベッセーレ社に広告を依頼した。

スペインの石油・ガス公社の販売会社 キャンプサは、サウスランド・コーポレーションの協力でミニ・マーケットのセブン・イレブンを200店舗ほど、同社のガソリン・スタンドに併設することを決めた。海外の石油会社の市場参入で大幅減益となることを見込んだキャンプサがセブン・イレブンの売上でその分を埋め合わせ、同時にキャンプサ・スタンドのイメージを高めようというわけだ。

市場統合のもたらす重大な変化について広告業界は産業界に訴えてきたが、その結果 自らのための広告予算も生み出した。英国貿易産業省は、国内の企業に1992年がいかに重要かを訴える広報の仕事(予算900万ドル)を、ロンドンのダーシー・マシアス・ベントン&ボールズ社に発注した。他の政府も同様の広報活動を予定している。

欧州の国営放送の独占体制の規制緩和と関連づけてみると、販売会社にとって1992年計画の重要度は、増す。広告収入によって支えられた全欧州向けの衛星放送との競争によって、各国政府は民間放送局の新設を余儀なくされている。貴重なテレビコマーシャルの時間枠も大幅に増えるだろう。テレビコマーシャルについてはまだ割当制を敷いている国が多いのが現状である。

市場統合については恐怖感を抱いている販売企業が多い。ある筆記具会社の欧州所長は、「市場統合の新しい規則により、EC域内でブランド開発をコントロールしていくのは難しくなるだろう」と述べている。貿易障壁のなくなった欧州では、ある国で低価格で売られている製品は、高い価格で売られている国への進出が簡単にできるようになる、という点に懸念が寄せられている。

もちろん市場から姿を消すブランドも出てくるだろう。買収の結果西ドイツ・ネッスルは3つのブランド名でヨーグルトを売っている。

シャンブルシ、リュネベスト、エリタである。2年前に同社はシャンプルシとエリタにネッスルの名をかぶせた。やがてはネッスルひとつに統合していく考えである。しかし英国など他の国では、シャンプルシの名は残るようである。

フィリップス、ネッスル、ユニリーバなどの欧州の大企業は、欧州のさまざまな貿易規制の中で自国で強い経済力をつけることで生き延びてきた。貿易障壁が取り除かれると、複雑な輸出貿易には適さなかった中小企業も、多国籍企業並みに国境を越えた販売活動が行えるようになるだろう。全く無名だったブランドが突然、大企業のブランドの競争相手になるという日も遠くはないかもしれない。

(月刊ECジャーナル1988年128号より)

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