~海外コンベンション参加報告~ 2000年ARFコンベンション

VRDigest編集部
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※本記事は2000年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 2000年3月6~8日にニューヨークで開催されましたARF(Advertising Research Foundation)コンベンションに参加敦しました。

◆米国ARFコンベンション

「結局のところ情報革命とはPCのことではなかった。膨大な数のPCがお互いに結びついて情報を シェアし、そのスピードが光速にまで加速されつつあることであった。」

 コンベンションのパンフレット見開きにかかれている文章です。メッセージは理解できますが、「LAN・WAN」システムが登場した頃から言われ始め、インターネット市場の発展過程でも、繰り返された視点です。特別な新しさで目を引くこともなく、「今更感」すらあります。ところが、この使い古された言葉が、総合パンフレットの前段を飾ることに、今年のARFの特徴を見い出すことができますごARFは、ESOMARと並ぶ、メディア、広告調査関連企業が集まる団体で、調査会社を中心とし、広告会社や、広告主の企業も会員になっています。この組織が、技術革新を軸とした市場環境の変化に、遅ればせながら本格的に対応し始めたようなのです。前記のフレーズが、主要な場所に掲載されることは、どうもこのことを表しているようです。

 本稿におきましては、ARFコンベンションに参加し、キーノートスピーチや、セミナーを受ける中で、繰り返し登場し、あるいは前提とされていた、広告、メディア調査会社の方向性や、問題意識の一部、あるいは広告主の方々の期待あるいは警鐘に近い発言、要望を踏まえ、記していきたいと思います。

◆広告主、代理店、調査会社の関係

「今までの取引関係のみにこだわることなく、有用な技術、効果的なアドバイスをもつ企業と積極的 に提携関係を構築していきたいと考えています。」

 この発言は、米国の代表的なパッケージ系食品会社クラフトフーズ社のWeb関連ビジネス担当者のものです。文脈としては、従来「マーケティング」として行ってきた活動が、Webの登場により、その手法や意義までも変化し、新コンセプト実現のための技術やアドバイスが必要になってきた」というものです。ARFコンベンションが、ある種、業界関係者のお祭り的な要素を含むことを考慮すると、上記の発言は、やや挑戦的に聞こえます。例えなじみの調査会社や代理店があり、継続発注していた業務があっても、新市場への対応能力如何によっては、同業種の競合企業、または、コンサルティング会社、技術を有する企業に、軸足をシフトすることもある、といっているようなものです。もちろん、Web構築のみならず、必要とあればどのような企業にも業務を発注したり、事業提携を行うのは、しごく当たり前のことですが、同企業のWebに関する積極的展望をARFにて傾聴している状況では、やはり意味ありげな響きに聞こえます。

 同社はまた、このようなことも言っていました。

「私たちのWebは、主婦や普段は料理をしない人がいつでも訪れて、気の利いたストロベリーフロッペの作り方や、ひと工夫ある香辛料の使い方を学ぶ等、便利に利用されることを目指しています。そして、私たちのサイトを繰り返し訪れた人は、結果として私たちの企業や、商品にロイヤリティを感じてくれるはずです」一方で「私たちの戦略実現を難しくしているのはWeb上のライバルが必ずしも同業他社でなく、むしろ全く関係ない業界の企業であったりする事です。例えばミシンメーカーが作成し、家事一般の情報を提供するWebサイトがあったとすると、私たちのサイトと競合する場合があります。私たちは、あらゆる競合Webに対し、優位性を持ち、また、多くの人々が私たちのサイトに訪れるよう適切に誘導する方法を開発する必要があります」さらに、「Webを利用した顧客との関係構築は、最終的に私たちの企業の構造そのものを変革させる力をもつことに気づきました」

 一方で、調査そのものの重要性を力説していたのは、MTVネットワーク社の社長でした。

「MTVの成功について、人々は折しいアイデアや優れたセンス(市場感覚)のせいにしたがる。しかし、若年層を対象とするサービスを提供しているものにとって、継続的に成功し続けるのはそれ程簡単ではない。的確な調査を繰り返し実施し、変わりやすい若年層の顧客を振り向かせ続けることが必要だ」「この種の調査を実践するために、ベストなパートナーを探すことも重要で、MTVの場合は、ニケロデイオン(子供向けチャンネル)である。」

 成功している現在のビジネスを「旧事業形態」と位置づけ、未開の分野に進出する企業や、多様に変化する生活者の噂好に、自社のサービスを高速で対応させる企業があります。私たち調査会社は、彼らが問題を解決し、課題達成を目指すプロセスの中で、どのような役割を果たしていくのか、今後ぞくぞくと発表される予定の当社の新規事業への取組が、この答えの一つになっていくと考えます。

◆技術革新と調査

今回のARFコンベンションでは、3日間で計38のセミナーが併設され、このうち約4割、16のセミナーがインターネットを中心、もしくは重要なパートとして扱っているものでした。1998年のセミナーにおける同比率が1割以下であったことを考えると、様変わりに近い印象を受けます。

インターネット関連のセミナーでも、大きく2つのタイプに分けられるようで、伝統的調査マン風アプローチと、シリコンバレー的ネットマン風アプローチです。前者の例で言えば、バークインク(Burk Inc.)が代表と思います。「既存の電話調査とインターネットを利用した調査の差異につき、出来る限り同じ条件を実現しつつ、調査過程と結果を分析する」というテーマでセミナーをおこなっていました。120程度の席は満杯で、60、70名の立ち見が出る程でした。

―「私たちは、1、2年前まで、『インターネット調査は誰でも出来るけれど、不正確である』と言っていればよかった。だが今、クライアントの強い要望に応えるため、調査会社はインターネット調査の特質を真筆な気持らで見極めていかねばならない。」

―「データ収集の一手法としてインターネットを検証する場合、リサーチャーが利用できるリソース は、殆どありません。バーク社ではインターネットがもつ独自の効果を明らかにするため、厳正に管理された調査を実施しました。既存のコンセプトテストや態度の分類、顧客満足度に用いられるスケールをはじめ、様々な測定基準について、インターネット調査と電話調査の差異を調査研究しています。」

 実際の差異分析ですが、30分という短時間にしては充実した説明であるも、やはりより詳細な情報を知りたいと強く感じました。

一方、ハリスインタラクティブ社は、インターネットを経由して、540万人モニター(2000年3月時点)を有する調査会社との触れ込みでした。セミナーでは、調査そのものより、技術的な内容の説明に力が入っていて、聴講者より挙がった「代表性」に関する質問には、的確な返答が得られませんでした。「1時間当たり29万通のメールを処理するシステムをもち、現在、皆が驚くような技術を研究している」と、聞かせどころでの発言がありました。説明を担当していた青年の風貌は、とてもネットマン的でした。

 技術革新を一つの要因とした、業種、国境をこえる競争に飛び込む(あるいは巻き込まれる)クライアントに対し、適切な調査、分析、アドバイスを実践するために、調査会社自身もまた、同じ世界に進みつつあることを実感しました。

◆スピードとタイミング

 

他の技術系調査会社によるセミナーでも感じたのですが、数牢前であれば、受け入れられないコンセプトや技術が、市場環境の変化とともに受け入れられるような場が出来上がっているようです。先日、日本駐在の米国人弁護士と打ち合わせがあり、雑談の席で聞いたのですが、1990年代前半に、米国のネット系企業が日本に進出するのに伴い、日本企業との提携関係構築の可能性を探るべく、当時、「将来有望」と認識されている中堅企業を十数社リストアップしたそうです。ところが、現在それらの企業は、どれ一つ存在しないのだそうです。「一部企業は買収されたと思うが、残りは倒産でしょう」とコメントがありました。何事につけ「スピード」が大切と言われますが、同じくらい「タイミング」も大切なのだろうと感じます。

 余談ですが、大手通信会社が15年ほど前、「近未来の生活」というテーマで出版した本を最近手にする機会がありました。通信を利用したオンディマンドテレビや、現在インターネットで実現されているコンセプトの原型が登場してくるのですが、そのころ陰も形もなく、今大きな存在感をもつのは、携帯電話です。

 新規事業に関して投資をしたり人的資源を投入する際には、例え、その技術そのものが市場競争の中で消えてしまったり、全く新しい技術・商品が登場しても、「見えない資産として企業に積み上げられる何らかのノウハウを収得する」との視点が事業推進当初の段階から必要とされ、この事が、リスク回避の一部になるのではないかと感じました。

◆ARFのテーマ(1998年と2000年)

1998年のARFコンベンションセミナー発表の中で、興味深い2つのテーマがありました。

①「今後広告代理店が『総合サービス型』から、メディアバイイングやWeb広告等、プロセスの特定部分に焦点をあてた戦略を取っていく中で、広告調査会社は何ができるか。

②広告主が、特定の媒体社を利用せず、自社でHPをもち、売買機能をもち、顧客の発掘管理する、代理店を通さぬマーケティングコミュニケーションが登場している。

この状況下で、調査会社の役割はどのように変わっていくのか。

 残念ながら、今手元に残っているのは、セミナーの事前内容説明だけなので、上記情報以上のものがありません。米国事情、業界事情をご存じの方々、また勉強されている方々からは、「米国の広告主と代理店の関係を表すのに最適なフレーズではない」と笑われてしまうかも知れません。その一方で興味深いと思えるのが、上記発表が今から2年前の広告調査会社を中心メンバーとする米国ARアコンベンションにおいて行われたことだと思います。広告業界の急激な変化に対し、やや敏速さに欠ける広告、メディア調査会社が、本格的に業界の変化、市場の激変に対応しはじめた時期を、表していると言えないでしょうか。

 そして、「広告、メディア調査企業による市場環境への対応」についての、一つの答えが、2000年3月ARFコンベンションでの、「インターネット調査への真撃な取組」(バーク社)に繋がっていくのではないでしょうか。

 少なくとも私たち「調査会社」にとって、米国は遥か前方を駆け抜けている訳でなく、わずか先の、あるいは同様の問題意識と格闘しながら走っており、米国事情を含む適切な情報収集とその分析は、世界規模で生じている広告、メディア、調査業界再編成の中で、私たちが具体的な行動を起こす際の、よき教訓になるのではないかと考えています。

◆コンベンションと事後情報収集

 

今回のコンベンションに参加するに当たり、事前に確終したのは、パンフレットによる併設セミナー内容が主でした。この種のセミナーでは珍しくないのでしょうが、セミナー中、説明資料配付はありませんでした。不十分なりにメモは取っていたつもりでも、帰国後のレポート作成時には詳細につき確認したい事柄が頻出しました。ところがセミナー担当企業のホームページを見ても、セミナーで発表されるような最新の内容は未収録の事が多く、また、触れられていたにしても、わずかの情報でありました。そこで、海外のマーケティング関連雑誌の必要部分を集めてみたところ、普段は気にとめなかったようなところに、該当記事の収録されていることがありました。日常のわたしの情報収集が不十分であることにもよるのですが、ある企業が発表した新たな調査手法や、マーケティング理論の実証データに関する情報が、部分的ではあるにしろ様々な形で取り上げられているのです。例えば、あるセミナーテーマである「コマーシャル効果の継続的トラッキング」につき、担当企業のHPにも収録されていない情報が、専門雑誌の特集の一部で発見できるという形です。(詳しくは下記を(※)ご参照下さい)

 雑誌・ニューズレターということで、情報密度はオリジナルテキストや論文程ではないにしても、ホームページのニュースリリースや、記事まで含め押さえておくことの意義を実感しました。また、欧米で注目されている事象を、ある程度遡り、時系列・構造別に把握することの大切を再認識しました。

 ※ 当社、国際事業室にて、海外雑誌等の翻訳情報を、見出しや一部内容含め、日本語で配信する  という企画が進行中です。日常業務で忙しいなか、重要と思われるニュースをさっと日本語で確認できるサービス開発を目指しています。サービスのご利用対象の方としては、日本の広告関連業界の方、また海外駐在中の方、あるいは海外関連の雑誌を翻訳されている方々を想定しております。お手ごろ価格に設定される予定ですので、しばしお待ち下さいますようお願い申し上げます。ご興味のある方は、国際事業室まで、お問い合わせ下さい。

ARF InfoPlex2000 概要

開催期間:2000年3月6日~8日

開催場所:米国、ニューヨーク州、ニューヨーク市 ヒルトン・ホテル&タワーズ

参加人数:豹1,300人

 

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国際事業室 事業推進部  後藤啓一

                TEL:03-554-6506(E-Mail:v009852@videor.co.jp)

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