「ACR/ex」と「CMカルテ」を併用した広告効果の振り返り ブランドの変化の裏を可視化する

VRDigest編集部
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!

※本記事は2015年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

今回は、「ACR/ex」と「CMカルテ」を用いて、ブランドの管理から広告コミュニケーションの成果の振り返りを行う分析事例をご紹介します。「ACR/ ex」では、約4500ものブランドに対して「認知」「利用」「購入意向」をはじめとするブランド指標を取得、東京50km件に関しては年4回(4月、7月、10月、1月)定期的に調査しています。これら指標は、単純にその指標として確認するだけではなく、掛け合わせることで様々な指標としてみることが可能です。例えば「利用」と「購入意向」の指標で見る場合、以下のように設定することができます。

<指標の掛け合わせで生まれる指標>

「利用アリ&意向アリ」=ロイヤルユーザー率

「利用アリor 意向アリ」=関与率

「利用アリ&意向ナシ」=飲用のみ率

「利用ナシ&意向アリ」=トライアル意向率

こうした掛け合わせ指標や、その他にも歩留まり(例えば、認知⇒利用の歩留まりなど)を見ることで、ブランドの現状や変化を詳細に診断することができます

今回は「ACR/ex」の2014年4月、7月のデータを用いて、この期間でブランドステータスにどのような変化が起こったのかを確認、その変化が起こった層のターゲットやメディア接触を捉えます。加えて、その変化を説明する一要因と考えられる広告活動に関して、テレビCMのクリエイティブ評価の観点から、どのような影響を与えたのかをみます。ここではソフトドリンクの「世界のKitchenから」(キリン)を例として、実際のデータで分析の進め方を確認していきます。

「ACR/ex」で

1.ブランドの現状を知る

「世界のKitchenから」に関して、ブランドの状態を簡単に俯瞰した結果が【図表1】です。

2015_542_16-21_01.jpg

<2014年7月>

このブランドの支持層は特に女性 20-34 才(以下F1層)、女性35‐49才となっていました。特にF1では、ロイヤルユーザー率(利用アリ&意向アリ)が10.3%とさらに高いことがわかります。この指標で前回(4月)の結果を確認すると5.5%であり、この3カ月間でロイヤルユーザー率が倍増していました。これはF1層に対する支持が拡大したといえる結果でしょう。

「ACR/ex」で

2.ロイヤル形成層の特徴を把握する

■基本属性

F1層で増大したロイヤルユーザー率に関して、4 月のタイミングではロイヤルユーザーではなかったF1層が、7月になってロイヤルユーザーとなったサンプル(以下、ロイヤルティ形成層F1)を対象に、その人たちがどのような人であり、どんなメディアに接触しているのかを分析します。

基本属性としてデモグラフィック、ソシオグラフィック特性を確認したところ、ロイヤルティ形成層 F1は一般のF1層に比べて以下のような特徴がありました。

・有職者であり正社員の比率が高い

・未婚者が多い

上記の前提を踏まえて、意識特性を確認します。一般のF1層に比べて意識項目でスコアが5%以上高くなる項目から特徴的なものをピックアップした結果が、【図表2】になります。

2015_542_16-21_02.jpg

■メディア接触状況

続いてロイヤルティ形成層F1のメディア接触状況を確認しました。手始めとして飲料カテゴリーの「情報入手経路(購入に影響する媒体)」では、すべての媒体でスコアが高くなっていました。特に目立つのが「テレビ」「雑誌」「ネット」「店頭」「屋外」という結果で、中でも閲読の高い雑誌のラインナップを見ると、ファッション性が高くいわゆる男ウケを狙わないという人物像が想定されます。

この層の媒体メディア接触を概略すると以下のようにまとめられます。

【テレビ】

リーチは一般 F1 層並みも、接触時間は短め

【雑誌】

リーチが高め。特に「Disney Fan」「FUDGE」「NYLON JAPAN」「装苑」の閲読率高

【ネット】

SNS などが高めも「Twitter」が目立つ結果

この様に、メディアの接触においては F1 層である という特徴がよく出る結果でした。

「ACR/ex」では、媒体の接触だけでなく、雑誌 やインターネット、屋外などすべての媒体で、詳細 なコンテンツ接触までおさえる設計となっていま す。これは、現状の「ネット媒体への出稿が有用」という言葉が意味を持たなくなっている点を反映しています。その「ネット媒体」のなかでもどの媒体が有益なのかという点を明確にし、プランニングに活用するために、コンテンツ・ビークルレベルの接触実態を取得しているわけです。また、雑誌の誌別閲読状況の結果も、意識特性の補完として確認していただくことができます。

以上の分析をもとに、ロイヤルティ形成層F1の特徴をまとめると【図表3】のようになります。この結果は「世界のKitchenから」の商品特徴とも合致しており、この商品との親和性が非常に高いことがうかがえます。

2015_542_16-21_03.jpg

今回ターゲットとするロイヤルティ形成F1層のクリエイティブ趣向として考えられる点を先ほどの特徴【図表3】から検討すると【図表4】のように考えることができます。

「CMカルテ」で

3.ロイヤルティの形成要因を探る

ロイヤルユーザー率が上昇し、新たにロイヤルティ層が形成された裏には何らかの要因があります。その一因を広報活動によるものと考え、今回は特にテレビCMの観点から検討したいと思います。ここでは、2014年4月から2014年7月のタイミングで出稿された「世界のKitchenからソルティライチ」のCMクリエイティブ評価を確認します。

分析の対象とする素材は、CMカルテ2014年6月度調査にある「世界のKitchenからソルティライチ」の素材です。素材は次のようなクリエイティブでした。

<素材の特徴>

・タイのお母さんから教えてもらったデザート「ローイゲーオ」からひらめいて作った飲み物であることを明言

・「タイのお母さん」を訪れ、実際に飲んでもらうというシチュエーション

・「おいしいって褒められちゃった」という最後のナレーション

・シーンはタイのお母さんの「世界の Kitchenから」への反応がメイン

■ CM の基本指標と商品関与

CM認知率はF1で44%であり、出稿量に対するCM認知率の平均(ノンアルコール飲料カテゴリーのNorm値)を上回る結果でした。一般的なノンアルコールカテゴリーの素材に比べて認知効率が良好といえます。また、CMの「内容理解度」「CM 好意度」も、ノンアルコール飲料カテゴリーの平均(Norm値)を10%程度上回る結果であり、CMに対して総じてポジティブな反応が見られます。CMを見たことによる「商品興味関心度」や「購入喚起度(CM認知者ベース)」のスコアも、ノンアルコール飲料カテゴリーの平均(Norm値)を10%程度上回り、CMの接触により商品への関与が促進されやすい素材であることがわかりました。

これらの結果と先ほどのロイヤルティ形成F1層の特徴、クリエイティブ嗜好と素材の特徴を総合的に考えると、CM内容がわかりやすく、それぞれの相性も相まって興味関心が形成され購入喚起に至ったことが推察されます。

そこでポイントが「理解説得」であるとはいえ、この仮説が正しいのかを、CMカルテの『印象に残ったクリエイティブ要素』と『CM イメージ』から検証したいと思います。

■印象に残ったクリエイティブ要素の検討

【図表 5】に、今回の素材の印象に残ったクリエイティブ要素の結果を示します。タレントが出演しないため「タレントキャラクター」の要素は低くなっていますが、「話の流れ・ストーリー」や「セリフ・ナレーション」「背景」のスコアが高く、商品そのものや特徴に関するふたつの項目(グラフ右ふたつ)も平均(Norm値)を超える結果でした。

2015_542_16-21_04.jpg

ここから、話の流れがよく伝わるクリエイティブであり、『おいしいって褒められちゃった』などのセリフも印象的だった結果、商品名や特徴を印象付けることができたことがわかります。また、意識特性【図表2】の「英語以外の外国語関与」から、シーン設定も親和性が高く評価されたことが「背景・画面」のスコアの高さから伺えます。

■ CM イメージの検討

【図表6】に素材のCMイメージの結果を示します。ネガティブイメージはほとんどスコアとして出現しなかったため、ここでは割愛いたします。ポジティブイメージの結果を見ると、テイスト上「インパクト」に関わる項目は、平均(Norm値)に比べて低い傾向が見られます。一方、「理解・説得力」に関する項目は目立って高く、説得力のある素材であったことが伺えます。この要素を助長させたと思われるのが、「タイのお母さん」のシーン設定であり、イメージとしては「情緒のある」として浮かび上がってきます。

2015_542_16-21_05.jpg

以下の内容がロイヤルティ形成を促したと考えられるCMクリエイティブの要因です。

「CM カルテ」 より

ロイヤルティ形成を促した CM クリエイティブ

[1]「からだにいい」「ケア」「デトックス」を追求、『無添加』『機能・成分』がキー

⇒自然美のテイストであり、ナチュラル

→ タイのお母さんを中心とした自然なシーン設定

[2]ファッション性が高く、ファッションも自己表現の手段

⇒おしゃれであり個性が際立っている

→ デザート「ローイゲーオ」を明示したこと

[3]情報感度が高く、最新情報をいち早く入手

⇒今までにない、他との違いが明確である

→タイのデザートをヒントに作った新しい飲み物

[4]自分の考えに基づく消費と、事前に調べる傾向

⇒説明をしっかりとしており説得型である

→ 理解説得を主眼に置いた内容展開

この様に「ACR/ex」のロイヤルティ形成層F1の特性分析の結果と「CMカルテ」のクリエイティブの評価を合わせて分析することで、ロイヤルティ形成F1層に対してフィットする素材であることが明確になりました。

今回ご紹介したように、ブランドの変化の裏に、 その変化が起こった人の特性に共通点があることや変化を促す広告活動の要因など、様々な可視化されない事象が存在します。そうした"水面下"にある事象を、「ACR/ex」や「CM カルテ」をはじめとする当社データを用いて明らかにすることができます。明らかになった事実をもとに、現在の施策を振り返ることや、今後の戦略を立てる際に活用していただくことが可能です。次回以降もデータ事例等を紹介させていただきます。

この記事をシェアする
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!