『ACR/ex』×『キャンペーンカルテ』を活用した複合管理の提案 クロスメディアキャンペーンの効果を把握する

吉田 正寛
ソリューション推進局 ACR/ex事業推進部
吉田 正寛
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!

※本記事は2015年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

昨今、テレビCMに留まらない複数の媒体に出稿した一連の広告活動の効果を把握したいというニーズが増えています。ひとつの訴求内容を複数媒体で出稿する広告活動を、当社では「キャンペーン」という呼称で位置づけ、キャンペーンの総合的効果や各出稿媒体それぞれの効果を可視化する仕組みを『キャンペーンカルテ』として提案しています。

『キャンペーンカルテ』は広告効果のものさしのひとつとなるキャンペーンリーチ(どれだけ広告や情報が生活者に届いたのか)をできるだけ網羅的におさえることはもちろん、個別の広告認知や広告以外のどのような接点でキャンペーン商品・サービスの情報接触(認知)をしたのかを把握することができます。しかし、この『キャンペーンカルテ』は単回の特定キャンペーンの効果を把握することを目的としているため、「広告戦略上必要なコミュニケーション全体を管理する」ことに対しては別の課題です。そういった課題やターゲットの生活やメディアに関する特徴については当社の大規模生活者データベースである『ACR/ex』から導くことができます。

今回はある事例のキャンペーンに対して、という流れで振り返り、次回施策を検討した事 例を紹介します。

STEP1『キャンペーンカルテ』で単回の結果を振返り、課題を抽出

STEP2 その課題に対して『ACR/ex』で検証・分析して次の施策を検討する

キャンペーンカルテとは

『キャンペーンカルテ』は広告効果を測定するオムニバス調査で、1都3県の男女15-69才2,000サンプルを対象に、定型の設問で月に1回実施する調査フレームです。実施タイミングや対象者属性の変更、サンプルサイズや調査項目を変更する場合は『カスタムキャンペーンカルテ』というサービスで対応します。

その前に『キャンペーンカルテ』のカスタム版である『カスタムキャンペーンカルテ』(以下カスタムCPK)における「広告効果」の考え方をここで説明します。

例えば、キャンペーンの認知は高いけれど、態度変容への影響が低いキャンペーンと、認知は低いが態度変容を引き起こす力が強いキャンペーンの2つがあるとします。2つのキャンペーンはどちらが優れていたといえるのでしょうか。キャンペーンの効果を総合的に判断することに加え、その結果の要因を要素ごとに分解して振り返ることが必要です。

仮に2つの広告による市場反響がほぼ等しい場合、それぞれの今後の課題はどのようなものでしょうか。前者の場合は態度変容力を上げる施策を、後者は認知を獲得するための施策を検討する必要があるといえます。同じ効果でもどこ に改善点やネックがあるのかによって、今後の課題は異なります。

「カスタムCPK」ではキャンペーンの効果を総合的に判断した結果である「広告効果」を、認知と態度変容の2つの要素で形成すると考え、

広告効果=認知力⒜×態度変容力⒝

と定義しています

⒜認知力

各広告媒体やその組み合わせでの認知率

⒝態度変容力 商品ブランド関与における広告認知者と広告非認知者との評価差を求めることで広告への影響を算出

〔態度変容力=広告認知者ブランドスコア-非認知者のブランドスコア〕

今回取り上げる事例は子ども向けの商品・サービスを展開するA社

2015_546_15-21_01.jpg

▪メインターゲットは小学生の子どもがいる母親

▪出稿媒体はテレビCM、新聞広告、新聞折込みチラシ、インターネット広告(バナー)(今回の事例では「小学生の子どもがいる母親」に変更、サンプル数を900人とし、追加設問を増やして実施)

1.『カスタムCPK』が指し示すこと

認知力はテレビの媒体展開で大きく伸びる

【図表1】は広告接触別の認知力、態度変容力、広告効果を、商品ブランドの「興味関心」について算出した結果ですが、今回のキャンペーン全体の認知力は87.3%、基準値ともいえる過去平均を大きく上回っています。中でも認知を牽引したのはテレビCM(84%)であり、出稿量に対する認知率の高さ(出稿効率)も良好でした。また、PCネット広告の認知力(20.1%)も過去平均を上回り、効果をみせていますが、その他媒体は過去平均並となっています。

2015_546_15-21_02.jpg

クロスメディア視点では、テレビCMのみ認知(30.9%)に対して、テレビ+他の媒体の認知(53.1%)は20ポイント以上高く、テレビCMに加えての複数媒体による効果が現われています。

他の媒体による広告認知者のテレビCM認知率は97%を超えていることから、ほぼ全員がテレビとの重複であり、認知におけるテレビの力を見せ付けています。

態度変容力は折込みチラシが強い

今回は、「興味関心」という段階における態度変容力をみていきます。【図表1】の中央の結果をみると、キャンペーン認知者における態度変容力は20.3%、これは認知したことで興味関心が押し上げられたスコアです。テレビ+他の媒体の態度変容力(28.8%)はテレビのみ認知者(6.6%)の4倍以上で、クロスメディア効果が顕著でした。このキャンペーンを媒体別でみると折込みの効果が目立ちます。また、それ以外で大きな効果差はみられません。それぞれのクリエイティブ評価(ここでは非掲載)を確認すると、折込みは「印象」「内容理解」に寄与、商品への「好感」「親しみ」を醸成した可能性が示唆されました。

なお、【図表1】に記載はないですが、PCネット広告は「商品認知」において態度変容力が大きく、知るキッカケとしてPCネット広告が機能していることが把握できました。

広告効果は認知力が寄与

広告効果は認知力×態度変容力で算出されることは説明しましたが、それに当てはめると 今回のキャンペーン全体認知者における広告効果は、態度変容力(20. 3%)×認知力(87. 3%÷100)=17.7%となりました。媒体別でみると、テレビCM認知者が17. 3%と最も高いものの、テレビのみに絞ると2 .0%に留まってしまいます。テレビ+他の媒体は、15.3%とテレビのみの7倍以上、過去平均と比べても、クロスメディア展開が良好に働いたことが示唆されます。この要因に寄与しているのが、テレビCMだけでなく、中でもPCネット広告との組み合わせであり、いずれも認知力が高いという特徴があります。

それに対して、態度変容力の高い折込みは、 認知力において若干振るわなかったことから、 広告効果のスコアは小さくなってしまいました。

今回のA社キャンペーンの結果を以下のとおりまとめます。

上記結果を受けて今後の出稿施策を考える場合、例えば以下のような課題が浮き彫りになります。

●テレビCMの広告効果は非常に良好 

→態度変容力は他媒体に劣るも認知力でカバー

●折込みは認知力に課題があるものの 態度変容力が高くクリエイティブでは、

「印象」「内容理解」に寄与、 商品への「好感「」親しみ」を醸成

●PCネット広告は認知力改善、態度変容力では「認知」を牽引

●新聞、携帯ネット広告は 認知力・態度変容力とも相対的に弱め

課題1 折込みのリーチは拡大しないのか?

課題2 PCネット広告の機能と携帯ネット広告の有効性は?

課題3 新聞広告は有効か?

2.『ACR/ex』で課題を解決する

課題を深堀りする前に、『ACR /ex』でターゲットとする小学生の母親の特性(デモグラフィック特性や性格・価値観・嗜好・消費行動)や生活行動、メディアとの関わりやメディア接触実態を分析すると【図表2】のような特徴がみえてきました。

図表2015_546_15-21.jpg

その『ACR/ex』のデータを踏まえ、『カスタムCPK』で得た結果と結び付けて、課題に対する今後の施策を検討していきます。

課題1 折込みリーチは拡大しないのか?

⇒リーチ拡大でなく態度変容力を向上させる施策をとるべき折込みの認知率は11.7%【図表1】と低調であるものの、「ACR /ex」で折込みのリーチをみると到達率は5割、毎日見る人が3割強と一定のレベルを担保しておりますので、認知率向上の可能性はあるとみられます。一方で、今回の広告した商品カテゴリーの情報経路として折込みは3番目(ACR/ex)に高く、詳細情報も掲載しやすい媒体特性があるため、内容理解の促進は期待できます。折込み広告はリーチ拡大ではなく、態度変容力UPを狙った施策検討が重要であることを示唆します。

メディア意識&接触傾向

・平日休日問わず起床在宅時間が長い

・テレビやフリーペーパー、インターネットなどの広告媒体は有用、DMとも親和性大

・地上波民放やフリーペーパー、インターネット(とくにスマホ)のリーチは高い

・BS、新聞のリーチはやや低め

価値観や広告・購買意識から考える訴求に必要なポイント

・基本性能を明確にし、端的に表現

・事前に行う情報収集の受け皿を拡充

・詳細な情報と説明、自分事化できるようなシチュエーション

※データは2014年4-6月度東京50km圏データを用い、特徴は女性一般(女性12-69才)と比較して特徴的な項目をピックアップ

課題2 PCネット広告の機能とモバイル広告の有効性は?

⇒モバイル広告をフックにブランドサイトを充実させ、そこに誘引(クリック)させる工夫&誘目性を持たせる

2015_546_15-21_03.jpg

特徴として、PCのリーチは女性全体並ですが、利用経験サイトの利用率は各サイトとも女性全体よりも高くなる傾向がありました。これはPCではなくスマホでネットを利用していることを示唆します。【図表3】はYouTubeの利用デバイスを確認したものですが、スマホがPCを上回る結果でした。

2015_546_15-21_05.jpg

小学生の母親にとって「ネット」とはスマホでの接触であり、1週間累積到達率が高く、広告注視やクリックも一定量あり、情報収集媒体として親和性が高いといえます。テレビCMとの住み分けを考えると小学生の母親が好むテイストに合わせ、詳細や性能を明確にする説明型のコンテンツが効果を発揮しそうです。

一方、スマホの広告はスペースの関係上今回のキャンペーンのように広告で詳細を語るのは難しいという制約があります。そのため、詳細情報の提供はブランドサイトを充実させてそこに役割を任せ、スマホバナーは詳細を書かないアイキャッチの役割を担うことが得策です。クリエイティブとしては気になるコピーや目立つ工夫が重要になります。

課題3 新聞広告は有効か?

⇒内容理解に加え信頼感醸成が重要となる局面で、記事テイストでの活用は有用

「ACR /ex」でみると新聞は折込みとリーチが連動するため50%と同スコアでしたが、情報 入手経路では折込みの15%に対して新聞は6%と大きな開きが出ており、新聞からは情報をあまり取らないという特性がうかがえました。一方、子ども関連の記事の閲読は高い傾向にあり、広告の印象では「発売されたことを知る(38%)」「広告の内容をしっかり見る(28 %)」等が高く、「内容理解」に効果が期待できます。加えて「信頼できる広告(2 8%)」という新聞特有のイメージも高く、「信頼感」を期待したキャンペーンは有用です。目的によってこうした内容訴求の場合は外せない媒体と言えます。その際は教育、育児系の話題に関するテーマで、記事テイストでの親和性が高いと考えられます。

今回はクロスメディアキャンペーン施策とその効果測定として『カスタムCPK 』と『ACR /ex』を組合せた複合管理フレームの実事例を紹介させていただきました。この案件を経て、事例を提供頂いたA社様ではモバイル広告のバナークリエイティブを見直し、モバイル広告の認知力 UP(それに伴う広告効果UP)を実現されております。

このように、単回の振返りだけでなく「ACR/ ex」を用いたターゲットの意識・生活特性やメディア接触特徴を理解することで今後の施策を簡単に確認することができます。

当社では、『カスタムCPK』【見本①】と、それに付随する〔『ACR/ex』を用いた今後の戦略まとめ〕【見本②】をA3横シートに定型フォーマットとして作成、提供しております。上記エッセンスをA3裏表にまとめたこの資料を確認いただくだけで、キャンペーンの成否から一般知見、今後の施策について一覧することができる仕組みです。このフォーマットもカスタマイズをお受けしております。広告活動の振返りでお困りの際は、是非『カスタムCPK 』と『ACR /ex』による複合管理フレームをご検討いただければ幸いです。

2015_546_15-21_06.jpg

2015_546_15-21_07.jpg

この記事をシェアする
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!