ブランド評価を高めるCMとは?~ブランド認知を指標とした場合

宮田正晃
マーケティング事業推進局 企画開発部
宮田正晃
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※本記事は2017年に発刊したVR Digest vol.555に掲載されたものです。著者の所属部署は当時。

商品ブランドの評価を高めるCMとはどのようなクリエイティブのCMでしょうか。信頼度の高いタレントを起用する?面白おかしい表現でイメージを残す?ただひたすら商品特徴を訴求する?ストーリーで代弁する?など肌感や経験則では理解していても、データで語られることが多くないクリエイティブの話について、「CMカルテ」の豊富なストックデータを基に、どのようなCMクリエイティブがブランド評価を高めるのに効果的かを可視化します。

本稿のテーマ

CMを作るにあたり、「今回のキャンペーンの目的に適ったCMクリエイティブの傾向」を事前に整理しておくと有用でしょう。広告主の視点からは、クリエイターや広告会社に依頼する際に指針にできるからです。一方、クリエイターや広告会社の視点からは、広告主に説明する際に自身の意向の後押しとなるからです。

データに隷属することになってはクリエイティブにとって最も重要な創造性を阻害すると考えることもあるでしょう。創造的なクリエイティブとは一般的法則から乖離したものであると感じるからです。確かに世の中の話題をさらうようなクリエイティブにはそのような傾向が強いのかもしれません。

しかし、定石を外したクリエイティブは失敗しやすいことも事実です。これから作ろうとしているCMは目的に対しどのくらい成功しやすいのかを計れると意思決定に役立ちます。また、あらかじめ期待値を持ち、実際の広告反応を確認することで、自社のCMクリエイティブのあり方への感覚が研ぎ澄まされていくことでしょう。

キャンペーンの目的がブランド評価の向上である場合に、事前に把握しておくとよい課題は次のようになります。

「ブランド評価を高めるにはどのクリエイティブ要素に影響力があるか?」

ブランドごとに抱えている課題、伸ばすべき評価ポイントが異なると思いますが、今回は「新ブランドがブランドの認知を獲得するには?」という観点で「ブランド認知率」を目的の指標として取り扱います。

本稿ではこの問いに対し、下記の分析ステップでアプローチします。

分析ステップ

①「CMのブランド評価への貢献」の数値化 ~AEI~

② CMクリエイティブ要素の影響度の算出~影響度分析~

③ 結果の解釈、具体的事例の確認

まず「CMのブランド評価への貢献」をどのように把握するのかについて説明します。

1.「CMのブランド評価への貢献」の数値化 ~AEI~()

「CMのブランド評価への貢献」の数値化にはAEI(AD Effectiveness Index)というスコアを使用します。これは、CM認知者とCM非認知者のブランド評価の差分からブランドへの貢献を割り出す考え方です。この「CMの貢献」部分が世の中全体のうち、CMで何ポイントブランド評価を押し上げることができたかのスコア(AEI)となります。

例えば、2015年10月13日にOA開始されたロッテ「乳酸菌ショコラ」CMでは、CM認知率が42.8%でブランド認知率AEIは(64.4-18.5)×42.8÷100=19.6ポイントでした【図表1】。

555_14-17_01.jpg

つまり、世の中全体で19.6%の人がこのCMによりブランドを認知した勘定になります。これはブランド認知率AEIが高い事例なのですが、その要因は何なのでしょう。読み解くために次の「影響度分析」という方法があります。

2.CMクリエイティブ要素の影響度の算出~影響度分析~

ブランド認知率AEIを高めるクリエイティブ要素は何か、クリエイティブ要素ごとに「影響度」を算出して確認します。影響度とは、そのクリエイティブ要素の偏差値が1ポイント上がると、AEIが何ポイント上がるか(下がるか)を示す数値になります。影響度は、因子分析と重回帰分析を組み合わせることで算出します。

分析は「TV-CMカルテ」の直近5年間の調査対象で、食品・飲料カテゴリと耐久財カテゴリの新ブランド※1のCMを対象とします。「食品・飲料」165CM、「耐久財」58CMに対して、ブランド認知率AEIを算出し、影響度分析を行った結果が【図表2】になります。

555_14-17_02.jpg

影響度がプラスの要素は、その要素を強めるとブランド認知率AEIが高くなることを意味します(マイナスの要素は、逆に低くなる)。つまり、CMによってブランド認知を効果的に獲得するには、プラスの影響度が高い要素が重要になります。

3.結果の解釈

[食品・飲料]

イメージ訴求よりも機能訴求が効果的

まず、[食品・飲料]の結果を確認します。「タレント」の影響度が最も高くなっています。これは、何はともあれCMを見てもらうために、タレントの人目を引く力が重要ということでしょう。

他に目立つ点は、「商品の機能・特徴」の影響度が「商品名の出し方や呼び方」よりも高めになっている点です。普通に考えると、ブランドを認知してもらいたいなら名前のみをアピールして刷り込むとよいだろうと思ってしまうところですが、それよりも「その商品がどういうものか」ということをより強調しておいた方がよいようです。これは、「名前だけ」よりも「機能特徴と名前がセットになっている」方が意識しやすい・忘却しにくいということでしょう。

逆に、「親しみ」「共感」「情緒」といったイメージ訴求は影響度が高くなっておらず、心理的に「消費者に寄り添ったものですよ」というアピールはブランド認知獲得にはあまり効果的でないようです。

具体的に、ブランド認知率AEIが高い事例を確認してみます。

AEIの高い事例

ロッテ/乳酸菌ショコラ/小松菜奈

出稿確認日 : 2015年10月13日

[食品・飲料]新ブランドのブランド認知率AEI平均が9.2ポイントであるのに対し、こちらは19.6ポイントと大きくブランド認知を獲得しています。

「乳酸菌をチョコで摂る」と言う商品コンセプトのメッセージひとつだけに絞り、セリフ、ナレーション、文字テロップで大きく打ち立てているクリエイティブです。「商品名の出し方や呼び方」の印象度は平均程度でしたが、コンセプトを伝えることだけにすべてを集中することで、高い「商品の機能・特徴」の印象度を獲得しています。商品特徴の新規性に自信がある場合は、一点突破を狙うとよさそうです。

[耐久財] 

商品そのものよりもストーリーやセリフで身近に感じさせると効果的

[耐久財]では「話の流れ・ストーリー」「セリフ・ナレーション」の影響度が高く、それを「親しみのある」「面白い」ものと感じさせると効果的なようです。一方で、意外にも「商品名の出し方や呼び方」「商品の機能・特徴」の影響度は高くなっていません。

[耐久財]は[食品・飲料]などの消費財に比べると商品の対象ターゲットが狭く、商品との接触機会も少なく、関心が高まりにくいです。そのため、関心が薄い消費者と商品を関連付けることから始めることが必要で、周辺情報であるCMのストーリーやセリフというものをフックにしつつ身近に感じさせ自分ゴト化させると効果的なのでしょう。

具体的に、ブランド認知率AEIが高い事例を確認してみます。

AEIの高い事例

ニコン/D5500/小栗旬

出稿確認日 : 2015年2月5日

[耐久財]新ブランドのブランド認知率AEI平均が5.7ポイントであるのに対し、こちらは10.7ポイントと大きくブランド認知を獲得しています。

商品であるカメラについては「父親が子どもの写真を撮る」という話の流れの一部を担う程度にとどめ、子どものうそ泣きに騙される微笑ましい情景を核に描写したクリエイティブで、「ストーリー」の印象度と「親しみのある」イメージが高いCMとなっています。

カメラ自体は常に画面に出ていますが、特別に何か説明をするというよりは自然とそこにあるものとしておさえており、「商品特徴」の印象度は平均を大きく下回っています。商品を説明したいという発信側の気持ちをぐっとこらえてストーリーテリングに徹したところにポイントがあると思われます。

おわりに

[食品・飲料]ではイメージ訴求よりも「商品特徴」を印象付けることが、[耐久財]では商品よりも「ストーリー」「セリフ」などの周辺情報を親しみ深く印象付けることがブランド認知獲得に効果的、という対照的な結果となりました。新ブランドでブランド認知獲得を目指す際のCMクリエイティブを検討する指針となるのではないでしょうか。

以上、どのようなクリエイティブにすればブランド認知を高められるか、AEIと影響度分析、事例確認を通して分析した事例を紹介しました。

「TV-CMカルテ」を使えば、「ブランド認知率」以外にも「ブランド好意度」など他のブランド評価指標での分析や、既存ブランド・他カテゴリでの分析なども同様にできます。

ご興味をお持ちになった方はお気軽に当社営業担当までお問い合わせください。

特別分析レポート「TV-CM KARTE Special report 2016」(既刊)には、[食品・飲料][耐久財]カテゴリで他のブランド評価指標「性能・品質がよさそう」「購入・利用してみたい」イメージなどに対する同様の分析が採録してあります。

こちらについてもぜひお問い合わせください。

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