クーポン・プロモーションとクーポニング戦略(下)

VRDigest編集部
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※本記事は1987年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

早稲田大学大学院商学研究科 委員長 小林太三郎

クリアリング・ハウスとクーポン

 クーポンの歴史(アメリカ)をひもとくと、小売店にメーカーが直接結びついて、そのクーポン償還とか回収をしたときがある。あるときには、メーカーのセールスマンが小売店を定期的に訪問し支払ったこともあった。しかし、いまではクリアリング・ハウスとリデンプション・センターが利用されるようになったので、メーカーの直接的処理は歴史的なものとなった。第2図はクーポンの流れを示したもので、アメリカでのクーポンのほとんどはこのような流れ方をしている。消費者(ショパー)が小売店でクーポンを利用すると、その小売店はクーポンを数え束にして、契約しているあるクリアリング・ハウスに、またはそのストアが属しているチェーン本部に送る。後者の場合、チェーン本部はストアからのクーポンを分析し-緒にして、クリアリング・ハウスに提出し支払いを求める。クリアリング・ハウスはそれらクーポンを検証し、送付ずみの小売店にフェイス・バリュー(クーポンの記載値段)+標準扱いフィー(数セント、10セントということもある)の合計額を支払う。クリアリング・ハウスは、メーカー別にそれらのクーポンを選別し、その分量と全金額を計算し、メーカーに、またはメーカーの契約した契約ずみリデンプション・センターに、請求計算書を付けて送り込む。クリアリング・ハウスは、小売店にとってのクーポン精算所といったところとなる。アメリカでクリアリング・ハウス、リデンプション・センターとして活発な動きをしている会社は、A. C. Nielsen、R. H. Domelley, The Maple Plain Company, Manufacturer's Marketing Service, Stratmar Systemなどがあげられる。

 なお、このリデンプション・センターについては、広告主自体が所有しているところもある。たとえば、ゼネラル・フーヅ、ブロックター・アンド・ギャンブル、ゼネラル・ミル、クエーカー・オーツなどの場合がそれである。リデンプション・センターを経営するには、そのオペレーションを割安にするためメキシコにセンターを設置しているところもある(最大センターの2つがこのメキシコ地区)。また回収クーポンの数えをサンプリング・システムで行っているところもあるのはいうまでもない。

 広告主は毎月2~3回のクーポン・リポートを受領するシステムを作っているのが普通。このリポートの内容項目はだいたい次のようになっている。

 月別回収クーポン報告書(プロマネやSPマネジャーなどにクーポン効果を測定させるためのもの)。配付日、締切日、フェイス・バリュー、利用した媒体(手段)、リデンプション・センターコード、ナンバー、対象市場とか地区、ブランド数(フレーバー、サイズ、タイプなど)、推定リデンプション(%)、これに伴うオーバーレイ(返金、くじなど)、前月のリデンプション、現在までの累積リデンプション(%)、目標成果、現在までの費用<回収クーポン×(フェイス・バリュー+取扱い料)>などとなっている。

 小売店への支払い報告書 小売店別回収クーポンの日付・数量・タイプ、チェーンまたは卸商当りの、ブランド別、フェイス・バリュー別クーポン総量、小売店のインボイス数・日付・小切手枚数及び金額など、小売店計算の正確性のチェック、前回の小売店計算・その他などからみた普通とほちがった変化に関する報告書。

 テスト報告書 フェイス・バリューのテスティング、表現要素(カラー対ブラック・アンド・ホワイトなど)のインパクト・テスティング、定期報告書のときよりも小さな市場セグメントにおけるリデンプションのテスト結果など

vol225_01.jpg

 広告主にとって大切なのはリデンプションをできるだけ高めることである。リデンプションに影響を及ぼす主な要因はコントロールできない要因とコントロールできる要因をあわせ一般には次の14とされている。

1.コントロールできない要因

 (1)商品力テゴリー

 (2)ブランド占有率/ブランド・ロイヤルティ

 (3)商品消費サイクル

 (4)季節的販売の差位

 (5)人口統計的、地区別クーポンの傾向

 (6)同時期の競争傾向

 (7)新/既存商品

2.コントロールできる要因

(1)小売流通

(2)フェイス・バリュー(節約額)対小売値段

(3)クーポン配付のための利用媒体・手段

(4)クリエイティブ(クーポン・インパクトを高めるため)

(5)同時期の小売店の活動

(6)オーバーレイ(くじ、返金など)

(7)他の広告の量・タイミング

クーポン回収量は上記の14要因からの影響を受けるだけに、クーポン広告管理面ではこれらの要因を考慮することが大切である。つぎに回収クーポン当りのコストの計算方法について触れておきたい。

回収クーポン当りの費用

 回収クーポンの費用はどう見積ればよいのか。たとえばごブランドのクーポン(フェイス・バリュー10セント)をダイレクトメールを使って1千万枚配付し、10.2%のリデンプションがあったと仮定しよう。この時に考えられる諸項の処理は次のようになる。

         コ ス ト 要 素           (単位1、000)

   1.クーポン配付童 @10ドルCPM $100

2.印 刷     @ 5ドルCPM 50

3.アートワーク、タイプ、レイアウト、その他           2

4.リデンプション @10.2%×10MM=

     1、020M×10セント フェイス・バリュー 102

5.リデンプション×8セント(小売店の扱い料とする。

     これはあくまで仮定額であり実際とは異る)         81

6.リデンプション×2セント(リデンプション・センターの

扱い料)                        $355

またルイスJ.ホー氏は、かつて次のような仮設例を紹介したことがある。

         コ ス ト 要 素

  1.クーポン配付費

    配付クーポン10、000、000、1、000当り5ドル $50、000

  2.リデンプション率=4.2(想定) 420、000枚

                            (回収クーポン)

  3.リデンプション費

420、000枚回収、フェイス・バリュー25セント 105、000

4.取扱い費

   420、000枚回収、*各7セント 29、400

5.上記1+3+4 184、400

6.回収クーポン当りの費用184、000ドル÷420、000枚 43.9セント

7.回収に基づく実際の販売商品(ミスリデンプション率を15%とする)

420、000枚×85% 357、000枚

8.商品当りの費用

  プログラム費用(184、400ドル)÷回収に基づく実際の販売商品

(注) * 当時7セントは近く10セントになると言う。 51.65セント

クーポンと広告・販促産業界 ―クリアーしたい点―

 クーポン戦略・戦術の策定・展開が、わが国ではできないというわけでもない。現状でもある程度はできるが、クーポン・サービスを、主要新聞とか雑誌社が本格的に提供できるようになると、クーポンは次第に注目され、いっそう重視されるようになるだろう。これからの媒体事情に特に注目したいものである。

 クーポニングは、広告主~小売店の両者の直接的関係で処理できるならよいが、これでは広告主に大きな負担をかける。したがって、広告主はクリアリング・ハウス、さらにはリデンプション・センターなどをうまく利用した上でのクーポン処理という方向を強くすることになるだろう。それではどこがクリアリング・ハウス、さらにはリデンプション・センターの機能を遂行するところとなるのだろうか。これが日本でのこれからの問題となる。客観的に考えればクリアリング・ハウスもしくはリデンプション・センターはメーカー、小売店の間に立った公正な第三者機関が携わることがベターである。クーポニング発展のためその点からビデオ・リサーチのようにデータの信頼性を得ている会社が参画することが考えられる。

 広告会社やマーケテイング・エージェンシイ、またはプロモーション・エージェンシイは、クリアリング・ハウスやクーポン・リデンプション会社などと、どういう関係を保つようになるのか。エージェンシイの社内体制、スタッフの配置、教育などの面をどうしたらよいのか。広告会社やS.P会社にとっては、この種のサービスはフィーの増大化にどう結びつくのか。これからどう対応したらよいのか......などの問題が、エージェンシイの場合浮上してくる。

 クーポニングの効果にまつわる基本的研究も次第に要請されるようになるのは必至といえるだろう。インストア・テスティング及びその他のもの(たとえばクーポニング期間中のブランド・スイッチング、常規顧客・試用客に対するクーポン効果、インセンティブの想起効果、クーポン付き広告のリーダーシップ、各種のリーファウンド条件に対する反応、その他)などが、測定されるようになるだろう。こういう基本的な資料が入手できないと、クーポニングの生産性向上は得られまい。

 クーポニングに対する消費者の考え方・態度・行動も問題となる。これらがクーポンに対し受容的なものであれば、クーポニング戦略・戦術を強める促進剤となるだろう。

 クーポニングを発展させる一つの起爆剤は、クーポンを扱うときのその取扱いフィーの額である。プロモーション業界にとって、これは重大な問題となるだろう。

 クーポニングとPOSとの関係にも注目したい。クーポンの効果を即座に測定できるものがPOSである。このようにクーポニングでは、クーポニング効果が同時に要請されることになる。その点でビデオ・リサーチが開発ずみのVRホームスキャン・システムはその要請に対応できるものであり、また、この種の面の整備・充実化が日本のクーポン発展のために今後ますます要求されよう。

 以上は、わが国でもしクーポンが発展するとすれば......という前提に立った上での、二、三の問題点の指摘である。

                                    (以 上)

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