VRホームスキャン・データ分析事例(4)

VRDigest編集部
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※本記事は1988年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

―ホームスキャン・データによるシェア要因分解―

 今回はパーフィット・コリンズモデルを応用してインスタントラーメンのブランドシェアの分解を試みた。

 このモデルは本来は既存製品市場に参入した非耐久消費財の新製品について究極的シェア(定常状態でのシェア)を予測するものである。

(詳しくは、片平秀貴 著『マーケティングサイエンス』p.173~175参照)・

このモデルの定常状態でのシェアの関係式だけを利用してシェアを分解してみた。

シェアの重要性

 成熟市場においては売上げ数値よりもシェア変動の方がマーケティング管理上重要な指標となる。

 シェアは普通、支店・支社別やユーザータイプ別などの横断面と月間、半期、年間などの時系列の数値として表現される。この指標は0~100までの単なる数値としてしか表現されないが、メーカーの様々なマーケティングアクションの最終結果(評価)としての意味を持っている。ただ、単なる数値としてしか表現されないためマーケタ一にとって自社のマーケティングミックスのうち、どの部分が有効でどの部分が有効性が小さかったかの

判断材料はひとつも与えてくれない。

 そこで、時系列やセグメント別に分析することで類推している訳だが、ここではこのシェアの数値を3つの要因に分解してみることでそれぞれがマーケティングミックスとどのように関連しているかをみようとしている。

パーフィット・コリンズモデル

パーフィット・コリンズモデルでは定常状態のシェアを以下のように仮定する。

      S=p r b

  S:ブランドシェア

  p:普及率(当ブランド購入者/全消費者)

  r:反復購入率(当ブランド反復購入回数/当該製品力テゴリー購入回数)

  b:購入量ウェイト(当ブランド1回当り購入量/全ブランド平均1回当り購入量)

 このパラメータp r bを初期の購入データから推計し、新製品の定常状態でのシェアを予測している。

 ここでは新製品のシェア予測ではなく既存品のシェア関係の要因分解を試みる。

VHSデータによるシェア要因分解

 先のモデルでの

       S=p r b

を以下のように定義しなおす。

    シェア(S)=世帯シェア(p)×ロイヤリティ(r)×購入水準(b)

この式に入れるべき数値をホームスキャンデータから次の要領で取り出す。

インスタントラーメン(袋麺)市場でのAブランドを想定して説明する。

       Aブランド購入世帯数       :a1

       Aブランド購入個数        :a2

A購入世帯の袋麺全体の購入個数  :a3

袋麺全体の購入世帯数 :b1

    袋麺全体の購入個数  :b2

 まず、この5雇類の数値から先の3つの指標は以下のように表わされる。

vol235_08.jpg

この3つの要因の意味と各マーケティング変数との関係を実際のデータを使ってみていこう。

袋ラーメンの半期データへの適用

'87年4月~'87年9月の半期のデータでシェア要因分解を行った結果は表のようになった。

    中華三昧で確めてみると

        S=p r bであるから

         0.320×0.341×1.188=0.1296となって

     シェア13.0%を再現している。

vol235_09.jpg

3つの指標を比較すると結果(シェア)に対する説明力は世帯シェアが最も高そうである。

次にロイヤリティ、購入水準の順となっている。

 今回の分析は要因分解といいながら、シェアが3つの指標に分解できるということで、まず分けてみようということが先行して要因の要因たる所以は後から帰納的に考えてみるということになってしまった。

そこでブランドの特徴と数値から3つの指標の意味を考えていく。

 まず、世帯シェアであるが.先に述べたようにシェアに最も相関がある指標だが、よほど特殊なセグメントだけに深く受容されたブランドでない限り、購入世帯を多く獲得した方が勝ちということで当然、最も重要な指標となる。

COOPブランドはこの世帯シェアが最低にもかかわらず(既存品の中で)シェアはサッポロラーメンの塩味と並んでいる。これはロイヤリティ指標が圧倒的に高いために起きた現象で、COOPブランドのこの市場における特殊性が出ている。

以上から世帯シェアはそのブランドのポテンシャルを基本的に表現しており、シェア獲得のための前提条件といえる。

 次にロイヤリティ指標だが、袋ラーメン市場の場合は0.2以上のブランドが長寿ブランドといえそうである。

サッポロ1番シリーズとチャルメラが0.2以上となっている。(中華三昧は4アイテム計の数値のため該当しない。東京ラーメンこれだねは新製品のためもう少し様子をみる必要がある。)

 購入水準指標は当該ブランドがその製品ジャンル内の平均的ユーザー(購入量レベルでの)に対して偏っているか否かの指標である。この数値が小さいブランドは当該ジャンルの中でポジションが少しズレていると解釈できそうである。

中華三昧が1.19と低いのはこの中で唯一の120円製品(他は80円)であるためと考えられるし、0.28と極端に低いラーメンバーはまるかじりラーメンということでお菓子とも考えられる。

 このように購入水準指標の極端に低いブランドは製品ジャンルが異ると判断した方かよいのかもしれない。(今後、スキ間商品的新製品を既存のどの製品ジャンルにくくるかの1つの判断材料にもなりそうである。)

3つの要因とマーケティング変数との関係

 今回の分析はシェアを説明するために3つの要因を取り出し、それと・マーケティング変数との関係をみることを最終目標としていた。ただ、データが一時点であったことやブランド数が少ないこともあり、おもわしい結果は得られなかった。

 また、先の各要因の説明でもふれたように、世帯シェアとロイヤリティは、コミュニケーション政策(CM出稿)や流通政策(店頭プロモーション、価格)と連結していると概念的には想定できる。

しかし、購入水準は製品政策自体の問題とも考えられ、既存品の場合は現実的に対応がとりずらい。例えば中華三昧の購入水準指標が低いのは、ラーメンの主流となっている80円市場から離れて120円ものの市場を形成しているためであるが、購入水準指標を上げるために製品を80円ものに変更するということはコンセプト自体の否定となってナンセンスに過ぎない。

 このように購入水準指標は変更可能なマーケティング変数と直接結びついておらず、シェアの要因として取り上げることはあまり有意義でないかもしれない。

今後の展開

 今回の方法はシェアの『要因』分解としては必ずしも満足できる結果ではなかった。

今後は以下の点を究明していきたい。

1.他製品ジャンルでの分析

  少数ブランドでシェアの5割以上を占めるような品目でほどうか。

2.方法論自体の見直し

  特に購入水準指標を概念的なものから再検討する。

vol235_10.jpg

(消費者行動分析部 石井栄造)

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