クーポン・プロモーションの理論と実際 2

VRDigest編集部
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※本記事は1988年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

(1)クーポンの基本的なプロセス

 メーカーは数多くあるクーポンテクニック(前号参照)の中から何らかのテクニックを使って消費者の手元にクーポンを運ぶ。消費者はその中から利用したい商品(サービス)のクーポンを持参し、その商品の購入時にクーポンを提出することによりクーポンの額面分の値引きサービスを受ける。即ち、メーカーがクーポン券上に保証している額面を小売店が一時立て替えることになる。そのため、立て替えた小売店はメーカーに立て替え額の請求を行い、メーカーはその立て替え額を小売店に支払うことになる。図示すると図1のようなプロセス、精算の流れを辿ることになる。

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 ところがこの流れであると、小売店は取り扱ったクーポンをメーカーごとに仕分けをし、積荷を作り送付し、精算業務をメーカーごとに管理しなければならない。また、メーカーはクーポン取り扱い店から送られてきたクーポンのチェックと精算を小売店別に行わなければならない。したがって、クーポンを行うメーカーもしくはクーポンを取り扱うお店が少なければこれらの作業に大きな労力を必要とほしないが、もし、クーギンを行うメーカーもしくは取り扱い店が夥しい数になってくると、この流れでは非合理的なものになる。

そこで、小売店とメーカーとの間に精算業務代行機関が自然発生的に生まれて来る。米国ではこの機関のことをクリアリングハウスと称している。クーボンが発達している米国におけるクーポンの基本的なプロセスは最終的に図2のようになる。

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(2)クリアリングハウスの必要性

クリアリングハウスはクーポンが発展して行く過程の中で、メーカー、小売店の労力を軽減するために自然発生的に生じてきたことを述べた。即ちクリアリングハウスの業務はメーカー向けサービスと小売店向けサービスの2面性を持っている。米国ではこのクリアリングハウス事業に乗り出している企業は200~300社にのぼるといわれている。また、それぞれのクリアリングハウスがメーカー、小売店に対するサービスで競い合っている。主なクリアリングハウスとしてはA.C.ニールセン、カロリナ、セブンオークス、CPAなどがあげられ、この4社で全米の80%のシュテを占めている。そのうち最大手のニールセンは、最近、巨大になりすぎたためサービスの低下が云われシェアを落してきているが、メーカーサービスで60%、小売店サービスで40%のシェアを持ち、依然大きな存在であることに変わりはない。しかし、ここで注目すべきことは、メーカー向けと小売店向けのサービスのシェアの大きな違いで、このことからも両者のサービスは全く異質のものであることがわかろう。

 自然発生的に生まれたクリアリングハウスであるが、その必然性をわかりやすくまとめてみると次のようになる。

①コスト効率からみた必然性

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 クリアリングハウスがない場合は、クーポンの回収や仕分け、精算業務にまつわる費

用が(メーカーの数×小売店の数)であるのに対し、あった場合は(メーカーの数+小売店の数)と掛け算と足し算の違いになる。したがって、クーポンが発展すればするほどクリアリングハウスが存在することによりコストの効率化が図れる。

② ミス防止及び小売店との良好な関係の維持からみた必然性

 1) 金券という性格

  ●トラブルが発生した時お互いに感情を損わないためにメーカー、小売店の間にどちらにも属さない第三者の精算機関が入ることが好ましい

  ●メーカー、小売店にとって信頼でき且つ厳正な集計処理ができる機関が必要

  ●熟練専門機関による高度なミス防止テクニックと不正監視

 2)クーポンは小売店の協力の下に成り立っている

  ●消費者に対して値引いた金額は小売店が一時立て替えているのであり、精算を迅速に行うために精算専門機関が必要

  ●小売店の処理の省力化を図ることが必要

③ マーケットデータの作成及びデータ管理技術からみた必然性

 1) クーポンの結果はマーケティングの結果である

  ●メーカー、メディア、小売業に属さない公正な第三者のデータ処理機関が必要

 2)クーポン手法は拡がりがあり且つ複雑で、クーポンの発達は豊富なマーケティングデータを生む

  ●クーポンデータを処理、管理できる技術を持った高度な情報処理機関が必要

  ●データ処理機関を統一化することにより、正確、且つ撤密な分析結果が得られ、最適クーポン手法の選択にも活用できる。

 因みに、ニールセンがクリアリングハウスとして名乗り出たのは今から30年前の1958年で、クーポンの誕生といわれる1895年からみると約60年後となる。

(3)鶏が先か卵が先か

クーポンが発達している米国では、長い歴史の中でクーポンを実際に利用する消費者も、また、取り扱う小売店も、その良さ、仕組みを熟知してきており、問題なく消費習慣に根付いている。一方、未だ未発達な日本では、もし、限られた標的市場ではなくマスのクーポン・プロモーションを採ろうとするならば、消費者と小売店との間のトラブルは避けられないであろう。特に、多くの小売店がクーポンの取り扱いを拒否した場合、無用の混乱を招くことになる。そこでそのような場合、クーポンが消費習慣になじむまでの問は、小売店に対しクーポン取り扱いの協力を求めたうえで実行する必要がある。この点が、同じ消費者向け販売促進手段の一つであるプレミアムキャンペーンとくらべ、難度が大きく、プロモーション手段としてメーカーが採用しにくい要因でもある。

 今回、私達が試みている「はい!クーポン」※は、クーポン広告特集冊子を全戸宅配するという方式(米国の新聞F.S.I.スタイル)でこれは、マス・クーポンのテクニックにあたる。そこでその実行にあたって、冊子を配布する地域の対象小売店全店に対し、その取り扱いの交渉を行った。その結果は、対象小売店約1,000店のうち400店近くが取り扱いを了承してくれた。約4割の参加率ということになる。何故その程度の参加率に留まったか、幾つかのポイントが指摘されるが、交渉の過程で小売店側から出てくる言葉は、「どのようなメーカー、アイテムがクーポンに参加するのか」である。それによって取り扱いの是非を検討しようということである。-方、今回の企画に参加するメーカーを募る段階で、メーカー側から出てくる言葉は「どのような店が取り扱いに応じてくれるのか。カバー率はどれくらいか」である。まさに鶏が先か卵が先かで、思ったように事が運ばないのが実態である。

              ※詳しくは昨年のビデオ・リサーチダイジェスト9月号No.231を参照。

(4)小売店からみたクーポン ―クーポンのイメージは意外に悪い―

 何故4割の参加率に留まったか。確かに小規模小売業ではクーポンを理解していない店もみられるが、参加に応じた店も含め小売側からみた「クーポン」はおおよそ次のようにまとめられる。

① 販売増につながらない

② 売れ筋商品が出てこない

③ 取り扱い加盟店に参加するとクーポン商品を揃えなければならない

④ 以前クーポンで失敗している

⑤ クーポンを以前取り扱ったが、精算にあたって無責任である

⑥ 時期尚早

などである。①~④はそれぞれが関連し合っており、云いかえれば店のマーチャンダイジング政策に合った商品がクーポンとして出てこないということである。そのことはひいては消費者ニーズを満さず、これ迄の多くの試みは失敗に終り、小売店側のクーポンに対するイメージはかならずしも良いとはいえない。小売店レベルにおいて、POSによる売れ筋商品の管理志向が出てきている今、メーカーとしては、クーポン・プロモーションを行う際、小売側のマーチャンダイジングを十分考慮に入れたうえで採り入れて行く必要がある。クーポンはあくまでも小売側の協力、理解のもとに成り立っているもので、小売業との良好な関係の維持なくしてはプロモーション自体大きな成果が得られないであろう。

                                (クーポン企画室 大木眞煕)

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