クーポン・プロモーションの理論と実際 3

VRDigest編集部
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※本記事は1988年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

(1)メーカーからみたクーポン

―小売側同様イメージは以外に悪い―

小売側からみたクーポンは、前号で説明したように、店側のマーチャンダイジングに合った商品がクーポン商品としてなかなか出てこず、クーポンを取り扱うことは、むしろ陳列スペースを取るだけで他商品の販売機会の喪失につながりマイナスであるとの見方が強い。一方、メーカーにおいてもクーポンに対するイメージはかならずしも良いとはいえない。その理由としてはいくつかあげられるが、これ迄の多くの試みが失敗に終っていることが根底にあることは否めない。では、何故失敗に終っているのか。その大きな理由は小売側の意見にみられる売れ筋商品消費者ニーズを満す商品をクーポン対象商品としていない、言いかえれば在庫一掃的商品でクーポン・プロモーションを行っているところにある。即ち自分で失敗の種をまいているのである。では、何故在庫一掃的商品でクーポンを行うのか。ひとつにはクーポン=値引きといった概念を強く持っていることにある。今、メーカーにとって在庫問題は重重な問題である。在庫を抱えれば全ての面で効率が悪くなり、また、新商品を出すうえでも在庫商品の処分を考えると二の足を踏むことも起きてくる。その在庫一掃を値引き=クーポンに期待する向きがある。何故クーポンではなく単なる値引きにしないのかといった疑問が湧くと思うが、その理由としては次のような点があげられる。

① 値引き額が大きく設定できない

 値引きは購入者全員を対象とするもので大きく値引いた後、すぐ新製品を出すとすると社会的批判もあり、また、新製品の価格設定のうえでも問題が起きてくる。クーポンであれば、クーポンを利用する人だけに対しての特別サービスということでこれらの問題を逃れることができる。

② 値崩れを多くの人に知らしめてしまう

 ①とも関係するが、ブランドイメージ、メーカーイメージを損う恐れがある。

③ 流通側の値引き対応がスムーズにできない

などである。ここいらの点まで深く考えて在庫一掃の手段としてクーポンを採用するメーカーは希かもしれないが、クーポンは値引きである(確かに行為そのものはクーポンの額面分を値引くのでそのような錯覚にとらわれ卑のもしかたないが)といった概念にとらわれ、クーポンの本質を見極めたうえで戦略に役立てようとしていないのは確かである。もうひとつは、その本質を見極めようにも日本の場合クーポンが未成熟で見極められず、また、プロモーショ、ンコストとして考えるとコスト高となるため冒険ができず、したがって、在庫商品でトライアルしていることも否めない。日本で未成熟に終っている要因については、その一端を昨年のビデオ・リサーチダイジェストの232(9月)号で紹介したが、再びここにまとめておく。いずれにしろ消費者ニーズと掛け離れた在庫一掃的商品や非売れ筋商品では期待する程の商品の動きは現状では起こらず、その多くの試みは失敗に終っているといえよう。

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メーカーのクーポンに対するイメージの悪さは、従来の試みが失敗に終っていることが根底にあるが、そのはか次のような消極的イメージが持たれている。

 ① 日本の消費者にクーポンは受けいれられない。

 ② 商品単価が低く、値引きのメリットが消費者に受けいれられにくい。

③ コンビニエンスストアを中心にクーポン取り扱いに非協力的な店がある現状では、効果が薄い。

④ 営業現場の反発が強い。

⑤ コスト効率が悪い。

⑥ 他社の動きをみてから。

⑦ 現在は売れているのでクーポンを行う必要はない。

今回の私達の試みは狭域エリアでマス・クーポンができる実験場を設定し、クーポンの本質を見極めようとするものである。そこで、クーポンのテストと併行して幾つかの調査分析を行っている。

 (調査・分析メニュー)

 ・クーポン冊子注目率調査

 ・クーポン受容度調査

 ・POSデータによる事前、事中、事後の販売竜調査

・日記式買物パネル調査よりブランドスイッチ状況の把握

・事前、事後のブランド認知率、特徴理解率の変化

・配荷状況チェック調査

など。今回の企画に参加しているメーカーの狙いは、ここにあるともいえる。

(2)他のプロモェションとクーポンの違い

前々号で値引き、スタンプとクーポンの違いを衰にまとめた。また、前号で、プレミアムキャンペーンとくらベクーポンは小売店対応を考えた時難度が大きく、現状では採用しにくい要因の一つであることを述べた。もう一度整理すると次の様な衰になる。

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① 値引きとの違い

 値引きは小売店が自店の集客策用として、基本的には自店のリスクで行うもので、メーカーの意向は通りにくい。もし、メーカーの意向を通すとなると小売店に対し何らかの犠牲を払わなければならない。また、店によっては意向を受けいれない店もあり、面としての戦略にはならない。一方、クーポンは小売店にリスクを与えずメーカーの戦略のもとで面としての戦略が打てる。只、メーカーの一方的な戦略ではなく、小売側の協調を得るとその効果は大きく違う。図2は米国におけるその実例である。単にクーポンを行うだけではなく小売側が積極的に対応すると、実に4倍近くの反応の違いとなってあらわれている。

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 値引きは購入者全員がその恩恵を蒙る。しかし、現在のように恒常的値引きの状態では、その価格が当りまえで得をしたという気持にはならない。また、メーカーの意向が入る特売は、買い控えの問題や、ややもするとブランドイメージのダウンに繋がり長期間特売期間を設定することは難しい。

 クーポンはクーポンを利用するという行為によってキャッシュバックの恩恵(形式上は値引きになるが)を蒙るもので、行為によって得をしたという意識を植えつける。商品購入者全員が自動的に恩恵を蒙る値引きと違い、常に節約意識が色袖せずに保てる。そして利用者のみが恩恵を蒙るということば、全員が恩恵を蒙る手段より恩恵を大きくできる可能性がある。また、クーポンはメーカーの戦略に沿って有効期限が設定でき、消費者にとっては特売にくらべどこの店でも利用できることも含め自由な利用ができる。

 クーポンはクーポンを精算時に提出する迄の過程にクーポン部分を切り取ったり、買物に行く際に持参するといった手間が入り面倒である。そのことを問題視する人もいる。しかし、むしろその手間はクーポン商品を強く意識させることになる。言いかえればブランド・ロイヤリティを強めることになり、自ブランドの親派作りを促進するものである。このことこそクーポンの本質の一つであり、値引き行為とは異なる点である。下図のデータは米国のデータであるが、図のようにクーポンを利用する人の多くはあらかじめ購入商品をリストアップし、且つ、クーポンの有無の確認を行っている。日本の消費者は米国の消費者とくらべ衝動買いが多いといわれている。それ故、クーポンは日本になじまないという声がある。しかし、逆の見方をすればクーポンの有る無しの差が日米の消費行動の差になっているともいえる。なお、クーポンテクニックの中に店内でクーボンを手渡す(商品陳列棚の前に置いてある)テクニックがある。従来、日本において行われてきたクーポンは主にこの手法であるが、この場合はクーポン商品を意識させる力は弱い。ストアを中心としたクーポンの弊害はまた後にまとめるが、少なくともテクニックによってクーポンの本質は違ってくることを心に留めておいていただきたい。

 最後に、マーケテイング戦略上におけるクーポンの役割を値引きとの対比でみると次の図のようになる。

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② プレミアムとの違い

 ひと頃の勢いはないが、相変わらずプレミアムキャンペーンは多く行われている。クーポンもプレミアムも販売増、特にトライアルユースを狙う手段なのに、何故か前に触れたようにクーポンに対するイメージは悪い。というより、プレミアムと同列にみる目が持たれていないといえよう。販売促進策としてインセンティブの内容がお金か物かの違いだけなのである。したがって、クーポンとプレミアムとどちらのほうがコスト効率が良いか、どちらのほうが戟略に合っているかを考えたうえで選択すればよいのである。只、インセンティブの内容の違いが効果の違いとなってあらわれてはくる。特にインセンティプを感じる人の違いとなってあらわれ、クーポンはその商品に興味を持った人であり、それ故反復購入の可能性が強いが、プレミアムは、商品そのものよりもむしろプレミアムに興味を持った人であり、それ故反復購入の可能性が弱いといえる。プレミアムは子供をターゲットにした時に効果があるといわれていることもそのことを裏付けよう。クーポンは主婦向けといえる。このように整理するとクーポンに対するイメージもいくらかは違ってくるのではないだろうか。

                               (クーポン企画室 大木眞熙)

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