クーポン・プロモーションの理論と実際 4

VRDigest編集部
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※本記事は1988年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

◆メーカーからみたクーポン ―その2

 メーカーのクーポンに対するイメージは予想外に悪いことを述べた。その主因としては、クーポン=値引きという概念に掃われクーポンの本質が見極められていないことにある。-方、価格政策に対するアレルギーがメーカー側に強くあることも一因であろう。そのような中で、クーポンの理論については一様に熟知されている。その-つとして、商品の成長過程の申における有効なクーポンの採用時期に対する意見があげられる。多くのメーカーはトライアルユースを促す商品の市場導入期と、商品の寿命をでき得る限り延ばすために成長期から衰退期に入ろうとしている時期に採用することを有効としている。このことは、クーポン先進国米国でも云われていることである。

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 しかし、実際にクーポンを行う段階になると既に衰退期に入っている商品や-皮も成長期を迎えることなく、未成熟のままにとどまっている商品をクーポン対象商品としている。理論と実際が掛け離れている例である。そのことは別にして筆者としては成長期、成熟期に目を向けたい。

 市場は今や、高度成長期のように競合社同士が競い合いながらお互い利益が得られた共存共栄市場から、お互いのシェアを喰い合うシェア獲得市場へと移ってきている。したがって、一人でも多くの顧客(既に競合社の商品を使っている顧客である)をつかみ、且つ、一度つかんだ顧客は絶対に離さないようにすることが必要な市場となってきている。そこで商品の顧客層を最も多くつかむ(リーチ=利用層の拡がりを最も持つ)成長期こそクーポンを採用することにより更に一層の顧客の拡がりを持たせることが必要であり適していると考えるのである。一方、パイが最も大きな状態になった成熟期には、顧客を逃さないクーポンテクニックが必要といえる。わかりやすく図示すると次貢のようになる。

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 このような見方は各メーカーともまだ希薄である。このことに対するメーカーの代表的な意見は"今、売れているからクーポンをやる必要はない"である。しかし考えてみていただきたい。今売れている商品は売るためのマーケティング活動を何もやっていないのか。

その商品の多くは売れている現在でも売るために莫大なマーケティング費用をかけているはずであり、それに伴い広告も大量に打っているはずである。何故か、その目的はより多くの顧客を得るためであり、より商品(顧客)のロイヤリティを高めるためであろう。こう考えてみると"今売れているからクーポンをやる必要はない"という意見ほかならずしも妥当な意見ではないことがわかろう。では、何故このような意見が出てくるのか、それは

  クーポン=値引きをしなくても売れる

 または

  売れている商品にクーポンをつける(値引きをする)とブランドイメージを損なう

ということであろう。やはり、クーポン=値引きという概念に掃われているからである。

そうではなく、クーポンは

   その商品を利用したいと思っている人にキャッシュバックという特典を一時的に与え、そのことによりその商品を買いたいと思っている消費者の心をくすぐり、買うという行為に踏み切らせる(新しい顧客の開発)ものであり、また、既存顧客の固定化を図るものである。

という整理が必要である。値引きではなく、メーカーからの消費者に対する積極的な特典の供与であり、恒常的なものではなく一時的なものであるという考え方が必要で、特に、新規顧客に対しては"我社の製品を一皮クーポンで試しに使ってみてごらんなさい。きっとあなたはファンになりますよ"といった自社の製品に自信を持った姿勢が必要といえる。

 今、花王の「アタック」が評判となっている。今、この製品のプロモーション手段の一つとしてクーポンを採用するならば、更に一層の新規顧客を短期的に、爆発的につかめると筆者は思う。周知のように、アタックの良さは口コミにより、多くの消費者に伝播するようにまでなっている。そこにクーポン・アドを提供することにより、消費者は口コミによる漠然とした商品理解から確信理解になり、しかもクーポンにより通常で買うより安く買えるという動機付けが得られるのである。購買行動に移さぬわけには行かない。また、クーポン広告を提供することがアタックのブランドイメージを損うものとは思われない。

 一説によると、この三年間の円高差益は30兆円にのぼるといわれている。しかし、消費者の感覚では、その円高差益が物価に十分に反映しているとは感じていないであろう。当然ともいえる。

 企業側からすれば不安定な為替相場の中で積極的に値下げには踏み切れないであろう。しかし、クーポンならそのような不安定な状況の中でも対応が可能である。円高差益がある間は通常価格はそのままでクーポンにより消費者還元を行い、円安になればクーポンを中止すればよいのである。値下げの場合は一旦価格を下げてしまうと元の価格に引き戻すことは容易なことではなく、また勇気がいるが、クーポンの場合は通常価格をいじらずに価格調整ができ、消費の活性化にも繋がるのである。昨年、ハンバーガーが一挙に価格戦争に突入したが、消費者からみるとそれはそれで良いとして、クーポンという手段もあったのではないかと思う次第である。このように、クーポン=値引きといった概念に掃われずに、時に応じて消費者のニーズを適確にとらえ、クーポンの採用の適否を考えて行けばよいと考える。

                               (クーポン企画室 大木眞熙)

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