ホームエレクトロニクス導入の未来像(下)

VRDigest編集部
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※本記事は1988年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

5.ホームエレクトロニクスの将来予測

 家庭生活におけるホームエレクトロニクスの普及予測を健康管理システムからテレビ電話、ハイビジョンなど16機器について2010年を見通し、普及パターン、普及率をみると次表のようになる。

昭和85年(2010年)を見通したホームエレクトロニクスの普及予測

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注 1.ホームコンピュータについては用途が広く準必需品型と準選択品型との複合型と考えた。

2.普及パターン

     必需品型:短期間で急速に普及

     準必需品型:長期間にわたり着実に普及

     選択品型:特定層には比較的速く普及するが、以降伸び悩む。

     準選択品型:特定層に長期間にわたり着実に普及

  3.可処分所得については、昭和60年の実績値(37万円/月)から、実質1.8%/年の伸び(昭和57年から61年までの5年間の平均)で増加するものとし、昭和70年85年はそれぞれ45万円/月、58万円/月としている。

 多機能ベット及び家庭用エレベータについては、普及初期に価格的な問題があるが、高齢者等の特定層に強いニーズがあり、社会的要請も高いため、政策的な配慮が必要と考えられる。

6.資源面からみたホームエレクトロニクス

・近年家電機器の普及等から家庭で消費されるエネルギー竜は増加している。(昭和46~60年:一世帯当たり平均年率2.5%の伸び)

・また家庭用土ネルギ一に占める電力の比率も増加している。(昭和60年約30%)

・今後ホームエレクトロニクスの普及にともない、家庭におけるエネルギー需要は、更に増加すると考えられる。

・エネルギー消費の伸びを抑制する上で、多機能ヒートポンプや高効率の高周波点灯蛍光灯篭省エネルギー機器の導入は極めて有効であり、その推進を図る必要がある。

 モデル家庭における昭和85年(20川年)のエネルギー消費量の予測

① 予測の条件

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注1.試算に当たっては、普及率が50%を超陰る機器・システムを中心に抽出し、生活パターンを設定した上で、エネルギー需要量及び消費量の計算を行った。

② 予測の結果

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注 1.将来モデルは多機能ヒートポンプ等の省エネルギー機器を利用。

  2.電気についてのみ、一次エネルギーに換算している。

(一次エネルギー換算値)=(二次エネルギー消費量)×(2,250/860kcal)

・ホームエレクトロニクスのうち、ホームコンピュータ、ファクシミリ、テレビ電話及び情報通信システム等の一世帯当たりの年間エネルギーの消費量は約1,100×103kcalである。

・ホームエレクトロニクスの占める面積は、現在モデルに比べ1d程度の増加につながる。

 家庭用エレベータ、多機能ベッド等が普及する場合は3~4㎡増加する。

在宅勤務、電子新聞による省資源・省エネルギー効果

・在宅勤務により、通勤エネルギー及び通勤時間の節約、更に事業所用建設設備等の合理化等が可能である。

・衛星放送等を利用した表示装置としてのハイビジョンと記録用ディスク装置を組み合せた電子新聞は、情報の効果的収集のみな、らず、森林資源の節約を可能とする。

・これらのシステムは、社会習慣の面から急速な導入は見込めないが、省資源・省エネルギーの観点から、段階的に普及することが望まれる。

電子新聞の省資源・省エネルギーの試算例

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7.ホームエレクトロニクスと家庭生活との調和に関する課題

 家庭生活との調和を図るための課題

(1)生活の便利さと引き換えに生ずる運動能力や生活能力の低下

 ① 運動能力の低下

情報化の進展から家庭において各種の用務をこなせるようになる一方で、体を動かす機会が減少し、運動能力の低下を促す恐れがある。

 ② 生活能力の低下

   家事の自動化等から、例えば調理の方法等の基本的な生活技術の喪失・低下が予想される。

(2)定着に至るまでの需要者とのあつれき

 ① ライフスタイルに適合しない機器

従来の家電機器と異なり、高度な技術を内装している上 欧米等での使用実績等も少なく利用方法についての実証的情報が少ないため、普及初期には、国民が個々のライフスタイルに応じて機器を使いこなせない恐れがある。

 ② 供給サイドからの-方的普及

現在、供給サイドのシーズ提案という形で進んでおり、機器・システムについて需要サイドの十分な要求が反映されない場合、経済晩 効用、操作の容易性等の点での技術の未成熟さが国民に負わされる恐れがある。

 ③ 心理面への悪影響

   テレビの普及により家庭内の会話が少なくなる等の問題がかつて生じた。高度技術への不適合により発生したテクノストレス等の問題が家庭にも発生する恐れがある。

(3)安全性と安定性の確保

 ① 高齢者及び身障者用機器の故障・誤動作

   高齢者及び身障者用機器については、自動化による利便性の向上の一方で、心身機能の低下からその故障・誤動作時の被害が大きくなる恐れがあり、故障・誤動作時には安全サイドに作動する等の対策により安全性を確保する必要がある。

 ② 停電時及びその復旧時の混乱

コンピュータ等の情報機器の導入及び電気事業者からの電力供給への依存度の高まりから、停電時及び復旧時の機能停止及び誤動作による混乱が予想される0このため、バックアップ電源等の停電時対策及び停電前の正常な状態を記憶するメモリ機能による誤動作防止対策等により安定性を確保する必要がある。

③ プライバシーの侵害

   情報化の進展に伴い家庭内に蓄積された財藍医療等の個人情報の侵害、あるいは家庭内機器のコントロール等への第三者の侵入による被害等が予想される。プライバシー保護のため適切な対策が必要である。

(4)ホームエレクトロニクスの技術的な課題

 ① 高調波による電力の波形のひずみ

   周波数変換応用機器の普及増加に伴い、高調波の発生が電力の波形に歪みを生じ他機器に発熱を生じたり、高い精度を要する回転機器(CDプレーヤ等)へ悪影響を及ぼす恐れがあり、技術面及び法制面において対処の必要がある。

 ② 高周波によるマイコン等の誤動作

   マイコン等デジタル機器の使用の増加に伴い、マイコン相互あるいは外部からの高周波信号等によりマイコンが誤動作する恐れがあるため、技術面及び法制面において対処する必要がある。

 ③ 100/200V併用とアースの設置

   現在、家庭用はほとんど100Vであるが、将来は大容量の電力利用に適した200Vの配線も必要と考えられる。また、安全の面から設置の必要性が増加すると予想されるので、欧米のコンセントのようにアース端子付コンセントを標準化して機器の使用時は必ず設置されているようにすべきである。

7.調査結果まとめ

 21世紀の初頭におけるホームエレクトロニクスの役乱普及状況及びその問題点について検討した結果、次のような結論を得た。

(1)将来の家庭生活で求められるホームエレクトロニクスの役割

 家庭生活の将来変化から、今後、ホームエレクトロニクスの導入に際して期待される役割は次の通りである。

 ① 家庭における健康管理、就業、学習、娯楽及びコミュニティ活動等の家庭機能の支援

 ② 高齢者の知識・能力を生かすと共に生きがいを確保するため就業を中心とした社会参加の支援、及び低下する心身機能の管理・補完

 ③ 女性の社会進出に対応した、女性の就業、育児 高齢者介護及び家事の合理化

(2)ホームエレクトロニクスの普及過程

  21世紀初頭におけるホームエレクトロニクスの普及状況を予測すると、家事労働の省力化に資する高度に自動化した機器・システムの普及率が高く、次いで、娯楽、仕事あるいはマネージメント等多目的型の情報通信及び情報処理機器の普及が進むものと予測される。

  一方、高齢者介護機器は特定層に強いニーズがあり、社会的に重要性が高いものの、普及初期においては可処分所得に照らし高価格なものがあり、これらを円滑に進めるためには政策的な配慮が必要である。

(3)省資源・省エネルギー効果の高いホームエレクトロニクス導入の必要性

  ライフスタイルの多様化に対応したホームエレクトロニクスの普及は家庭内の資源・エネルギー消費量の増加要因となる恐れがあり、今後とも資源:メネノレギー消費量の抑制に努める必要がある。この中で、例えば多機能ヒートポンプ等の普及はそのエネルギー消費量の増加を抑制し得る。また、将東 漸進的ではあるがハイビジョン等を利用したペーパーレス電子新聞の普及により紙等の節減効果が期待される。したがって、このような省資源・省エネルギー効果の高いホームエレクトロニクスの積極的な導入を推進する必要がある。

(4)家庭生活とホームエレクトロニクスの調和を図るための課題

  身近なレベルで具現化された科学技術であるホームエレクトロニクスの普及に伴い、生活の便利さと引き換えに生ずる運動能力及び生活能力の低下 高度技術への不適合等によるあつれきの発生及び第三者からのプライバシーの侵害等人間性に係る問題の発生が予想される。また、停電時・災害時等の機能停止、及び高調波・高周波による誤動作等の問題に対処することも必要である。これらの課題に適切に対応するためには、技術面あるいは制度面等からの対処に加えて、利用技術について国、需要者及び供給者等の連携のもとに調査・研究を進め、その利用の望ましい姿を明らかにする必要がある。

モデル家庭における使用機器の諸元

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