電子メール通信の将来像に関する調査研究結果について

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※本記事は1988年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

マルチメディアへの発展

今後の公衆サービスにおけるインフラストラクチャーとして、発展が期待されている電子メール通信の普及・振興を図るため、「電子メール通信の将来像に関する調査研究会」において、電子メール通信サービスの現状と動向、今後の利用形態とその在り方、電子メール通信の技術動向、普及のための課題等について検討を行い、このほど調査研究結果を取りまとめた。

本調査研究結果は、電子メール通信の将来ビジョンを、総合的な観点から取りまとめている。その概要はつぎのとおり。

電子メール通信の将来像に関する調査研究報告の概要

高度メッセージ通信の代表的なものの一つである電子メール通信は、その通信メディアが有する社会性・公共性・技術的可能性、パーソナルコンピュータやワードプロセッサの普及状況、ポータブルワードプロセッサやラップトップ型パーソナルコンピュータに見られる端末の低廉化、国際及び国内標準化の進展等から、今後の公衆サービスにおけるインフラストラクチャーとなる可能性を有している。

本調査研究報告書では、同一興味、同一目的を持った特定の人とのやりとりが主な利用形態であるものを「プライベートメール」、将来的にいつでも、どこでも、誰にでも通信が可能となる電子メール通信を「パブリックメール」と位置付け、プライベートメールの発展形態、新しいメディアへの発展形態、パブリックメールの利用形態について調査研究を行い、今後の課題について取りまとめている。

1.プライベートメールの発展形態

現在、企業内、企業間や大学、研究機関、さらに個人、グループ間まで幅広く利用されている。

企業における-般的な利用形態としては、比較的定型的な文書(通知文、会議開催案内、供覧文書等)の発信が主なものであるが、今後は、商談、業務指示、意志決定業務等への利用が図られる。また、時差のある国際間において、極めて有効な通信手段となる。

大学、研究機関においては、研究者の意見交換や論文発表、データベース検索への利用が考えられる。

個人、グループでは、現在、趣味の領域で最も広く利用されている。今後は、ホームトレード、各種チケット・座席予約、ホームショッピング、ニュース検索等の各種データベース検索、通信教育による家庭学習等への利用が期待される。

2.新しいメディアへの発展形態

パブリックメールへの発展過程においては、網の相互接続や他のメディアとの連携により新しいメディアへの発展が促され、接続範囲が拡大する。

既存の配信サービスに関しては、郵便等と連携することによって、配信範囲が電子メールサービス非加入者まで拡がるとともに、電子メール通信の高速性を生かした短時間のエンド・ツー・エンドの配信が可能となる。

また、他の通信サービス、通信メディアとの連携では、ファクシミリ、テレックス、ビデオテックス、音声(電話機系)端末、ワードプロセッサ、ポケットベルなどが挙げられる。

これらのものとの相互接続やメディア変換が行われることによって、サービスの利便性が向上するとともに、高度化が図られる。

たとえば、ファクシミリと接続することによって、パーソナルコンピュータやワードプロセッサなどで作成した文書を紙に出力することなく送信が可能となり、音声端末との接続によって、音声による入出力が可能となる。また、ポケットベルは着信を知らせる手段として有力である。

3.パブリックメールの利用形態

いつでも、どこでも、誰にでも通信が可能となるパブリックメールの段階になると、-般家庭や公衆分野への利用が広まり、外出先においても電子メール通信が利用されるようになる。

この段階では、駅、空港、ホテルなどのパブリックスペースに公衆メール端末やメール端末が接続可能なモジュラージャック付きの公衆電話が設置され、皆に気軽に利用されるようになる。外出先においては、持ち運びが容易な簡易端末等が用いられる。さらに、国際間において、自動翻訳機能を利用した電子メール通信も可能となる。

4.今後の課題

以上述べた発展形態、利用形態を実現するためには、次の課題を解決していくことが必要である。

(1)標準化に関する課題

ア) どこからでも、また誰にでもメールを送るためには、網の相互接続性が必要である。このため、電子メール通信システムは、少なくとも網間接続についてCCITT等の国際標準またはそれに基づく国内標準をサポートすることが必要である。

イ) 多くの家庭にまで電子メール通信が普及するためには、端末価格が低廉であること、操作が容易であること、さらにスペース専有の少ない小型であることが望ましい。このためには、簡易端末用のプロトコル等の標準化と簡易端末の開発を有効な手段として推進すべきである。

ウ) より多くの人と通信を行うためには、高価なパーソナルコンピュータなどの高機能端末に限らず、ファクシミリ、ワードプロセッサなどの既存端末も有効に活用されるべきであり、このための標準化の検討も重要である。

エ) 電子メール通信を利用者が使い易い形式でアクセスできるようにするためには、ディレクトリシステムの標準化と運用が急務である。

(2)技術開発上の課題

ア) どこからでもメールを送るためには、公衆メール端末や、メール端末が接続可能な公衆電話(モジュラージャック付き)しの設置がひとつの有効な方法であり、特に公衆メール端末の技術開発が必要である。

イ) 利便性と信頼性向上のため、自動着信機能(着信者にメールが届いたことを知らせる機能)、着信確認機能(相手のメールボックスまたは相手自身に届いたことを発信者に知らせる機能)、自動出力機能、ジャンクメール対策機能、音声認識・合成等のマン・マシンインタフェース機能等の開発が必要である。

ウ) 決裁文書、領収書等の正式な文書をメールでやりとりするためには、印鑑に代わる何らかの保証機能や、セキュリティ対策上からID、パスワードに代わる認証機能、加工防止機能等の開発が必要である。これは特に、現行の社会規範全般に係る問題であり、通信のみならずより広い見地から考察する必要がある。

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(3)制度上の課題

ア) 誰にでもメールを送るための有効な手段として、郵便、電報等との連携が考えられる。今後、制度上の問題を整理する必要がある。

イ) 第2の電話として潜在的な可能性を持っている電子メール通信においては、通信インフラストラクチャーとしての性格上、低廉な通信コストを保証することが望まれる。今後、通信料の遠近格差、料金上の優遇措置等、通信形態に合理的な料金体系の在り方を検討する必要がある。

ウ) 電子メール通信の利用範囲を広げるためには、今後、着信確認機能や認証機能の効力を法的に認知していく必要がある。

エ) エンドエンド間の電子メールとは性格の異なる電子掲示板サービスについては、内容に対する著作権の問題、事業者の責任の問題等、通信の秘密や事業者の守秘義務等とも絡み今後整理していく必要がある。(米国では1986年に電気通信プライバシー法を制定しており、電子メールも同法の対象になっている。)

(4)普及のための課題

我が国では、電子メール通信に対する社会的認知度が低いこと、パーソナルコンピュータやキーボードに対するアレルギーがあること、電子メール通信をいつでも、どこでも気軽に利用できる環境にないことなどから、以下のような具体的施策を講ずることにより、電子メール通信の普及を促進することが必要と考えられる。

 ・駅、郵便局等の公共の場にメール端末を設置し、利用機会を増やす。

 ・テレトピアや郵トピアなどのモデル地域にて実験サービスを行うことにより、社会的反響、問題点の把握や普及促進に資する。

 ・電子メール通信関連装置への減税やメール端末開発のための低利融資、減税等の税制上の措置を講ずる。

 ・デモンストレーションや各種の行事を行うことにより、電子メール通信の社会的認知度向上に資する。

また、今後の電子メール通信をより高皮かつ広域に展開するために、電子メール通信に関する各通信事業者、端末機器メーカー、ソフトウェア業界及び政府機関の相互間で、今後とも積極的な検討を行っていく必要がある。

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