クーポン・プロモーションの理論と実際 8

VRDigest編集部
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※本記事は1988年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

―クリアリングハウスの業務と実際―

クリアリングハウスの収入と経費

◆クリアリングハウスの収入

 クリアリングハウスの収入は小売店向けサービスで得る収入と、メーカー向けサービスで得る収入との2種類がある。しかし、メーカー向けサービスは、リデンプションセンター機能を併せ持つクリアリングハウス(実質的にはメーカーとサービス契約しているクリアリングハウス)が得る収入であり、小売店向けサービスのみを行うクリアリングハウスは、小売店向けサービスで得る収入のみとなる。

 小売店向けサービスの収入は、メーカーが保証している1枚当りのクーポン取り扱い手数料8セントを、クリアリングハウスと小売店とで分配をしており、クリアリングハウスのフィーは小売店が指定する精算日数とクーポンの処理枚数とで決められ、小売店との精算代行業務の契約に至っている。そのフィーは、平均すると処理クーポン1枚当り2セントぐらいと推察される。

 一方、メーカー向けサービスの収入は、独立小売店と他のクリアリングハウスから送られてきたクーポンも含めて、契約しているメーカーのクーポンをプロモーション別に仕分け、そのうえでデータエントリーをし、データを加工、マーケティング資料を提供することにより得る。このフィーは前号で紹介したように1枚当り2~4セントと云われている。どちらの収入も1枚当りの処理料は数セント、今の日本円でいえば3円になるかならないかのフィーである。したがって、行程によっては何銭を争う原価計算となり、厳密なコスト管理が必要となる。

◆クリアリングハウスの経費と作業現場の概要

 経費の主たるものは人件費となる。特に、現時点ではクーポンの仕分け、データエントリーとも手作業で行い、しかも、全米で年間70億枚ものクーポンを処理するのであるから、正に人海戦術となる。例えば、業界4位のCPAは、推定すると年間8億枚ぐらいの処理枚数となる。月に直すと7000万枚、1日当り250万枚ぐらいの処痙となる。これを2つの工場で合計1000人(2交代制)のアルバイトを雇い、処理している。

このように大量の人力を必要とするのであるから、当然、主要なクリアリングハウスは安い労賃と人員の確保を求める。その結果、主要なクリアリングハウスの作業現場は、労賃が安く、就職口が少なく職に困っている人が多いメキシコ側に求めることになる。アルバイトの労賃は、1日約5ドルである。

日・米の1時間当りの労賃とほぼ同じである。また、工場、事務所を設営するにあたっても経費が安く済む。先程のCPAを例にとってみると、

 1日当りの処理枚数 250万枚1枚当り2セントの収入=50,000ドルの収入

 1日当りの労賃    5ドル1、000人の使用    =5,000ドルの支出

ということになる。(但し、CPAはソート専門の会社なので1枚当り1セントぐらいの収入とみられる)

このほか、アルバイトの管理者、米側の従業員の経費、工場の運営費、輸送費、マーケティング資料作成費などが掛かる。

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 全米各地で集められたクーポンは、経費の関係上、直接メキシコには送らない。一旦、航空便でエルパソ(メキシコとの国境)の郵便局へ集結させ、エルパソからメキシコ側のファレスにトラックで送る。クリアリングハウスによっては、ファレスから更に奥地へ送り込んでいるケースもある。仕分け、データエントリーを終ったクーポンとデータを収めたテープは再びトラックでエルパソへ送り返される。以上がクリアリングハウスの作業の実態である。また、クリアリングハウスのメキシコ工場の実際の現場は前ページの流れのようになっている。

クリアリングハウスの収入、経費をみてきたが、クリアリングの経費に関しては次のような経費もある。

クーポンは金券であるので紛失をした時のために保険料が掛けられている。また、金券であるが故に不正が起きるが、そのための弁護士料が必要である。

そのほか、クーポンをクリアリングハウスもしくはリデンプションセンターへ送る(郵)送料も必要である。弁護士料は別として、保険料、送料は小売店対クリアリングハウス、リデンプションセンター対メーカーの力関係で決まっているようである。即ち、クーポンを大量に発行しているメーカーは送料をリデンプションセンターに持たせ、取り扱いクーポンが多い小売店の送料はクリアリングハウスがサービス内容の一メニューとして取り扱われている。

インハウスのクリアリングハウス(リデンプションセンター)

クーポンを大量に発行するメーカーでは、自社所有のリデンプションセンターを持つようになってきている。その理由は次のようにまとめられるであろう。

・大量なクーポンが回収されるためにリデンプションセンターへのフィーが莫大になってきている。

・クーポン以外のプロモーションも増えてきており、その対応のために内部に組織を持つ必要が出てきた。

・したがって、プロモーション管理部門の中にリデンプションセンター機能を持たせることが、経費面からみても可能になってきている。

・ターゲット・クーポンの志向が強まり、自社内でデータベースを有効活用しようとしてきている。

などである。自社所有のリデンプションセンターを持つ企業としては

  Procter & Gamble

  General Foods

  Carnation

  Ralston-Purina

  Coke Foods

  General Mills

  Pillsbury

などがあげられる。

マーケティング・レポートの内容

クーポン・プロモーションがこれほどまでに伸びた理由の一つとして、データ管理技術の向上がある。正確、且つ撤密な分析結果が得られることは、最適クーポン手法の選択に繋がる。具体的に言うならば、最適フェイス・ヴァリュー、最適クーポンテクニック、最適エリア、最適クリエイティブ、最適協調プロモーションなどの選択に役立てられるものである。これらのことにより、失敗の少ない、より的確な、より効率の良いクーポン・プロモーションが採用され、マネジメントは安心して次のプロモーションの戟略を練ることが可能になる。したがって、クーポン・プロモーションを積極的に採用するメーカーにとっては、クリアリングハウスから受け取るマーケティング・レポートは今や重要なものとなっている。

 提供されるレポートの内容はクリアリングハウスによって異なるが、基本的な内容は次の3点となる。

(1)回収クーポンについてのマーケティング・レポート(プロダクト及びプロモーション・マネジャーにとり累積的成果のチェックがこれで可能となる。)

(2)顧客、地域別の小売店への支払いレポート(マーケテイング・マネジャー、販売マネジャーにとり異常な差異がわかる)

(3)特殊(テスト)レポート=毎月の定例レポート以外のスペシャルレポートである。

これらのレポートの詳細については本誌'87年2月(225号)で小林太三郎先生がまとめているので省略する。

あるクリアリングハウスは、メーカーに対してマーケティング・レポートの有効性を次のようにうたっている。

・クーポン配布を最大限に管理したプログラムが、マーケティング結果向上の促進となります。

・費用の有効性が投資に対して高い返却を提供します。

・広範なサービスとその質の高さや安全性は、インハウスで独自に行うよりも良い結果を生み資力を浮かすこともできます。

・信頼のおける正確、且つ主観的な評価と報告です。

クリアリングハウスにおけるミス・リデンプションへの対応

クーポンの問題点の一つとしてミス・リデンプション=誤回収があげられ、その対応方法が云々されるが、ここでは、クリアリングハウスにおいて、ミス・リデンプションと思われるクーポンが発見された時にどのように対応しているか、その対応方法をみよう。

◆受けとり拒否をするクーポンの種類

 次のような場合は受取りを拒否し、理由を明記し送り返している。

 ・無関係なクーポン ・枚数のカウントミス ・計算ミス ・ストアタッグがないもの ・製品を扱っていない小売店のクーポン  

・クーポン対象地域外の小売店のクーポン

 ・疑わしいクーポン(ギャングカット、ミントコンディションなど)

 ・期限切れクーポン

 ・存在がはっきりしない小売店のクーポン

 ・値引額が判読できないクーポン

◆受取り拒否をするクーポンの発見方法

監査機能として、人間の技術と機械とがあるが、基本的には人の目、手にした時の感触、記憶力という人的監査による。まずクーポンを受取ったらギャングカッティング、人の手を経ていないと思われる状態のクーポン、異常量、ふだん目にしない商品のクーポン、期限切れなどについての全般的な状態が細かに調べられる。更にリデンプションセンターでは、プロモーション別に仕分けをする段階で、エリア外のクーポン、ストックされていない製品のクーポンや、地位が確かでない小売店などについて、支払い決定システムに情報として付加する。機械的には、マーケティング・レポートのレポート内容でみたように、小売店の事前実績を基にした異常変化によって管理を行なっている。

◆受取り拒否クーポンが発見された時の対応

もし、受取り拒否のクーポンが発見された場合は、次のような対応でそれらのクーポンを差し戻している。

小売店向けサービスにおける対応

小売店向けサービスでは、クーポンの種類を次の3つに分けている。

・Good クーポン支払いをしてよいクーポン

・Return クーポン支払いをせずに小売店に差し戻すクーポン

・Relay クーポンカウントはするが支払いをせずに直接メーカーに送付するクーポン

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<Returnクーポンとは>

・ミント・コンディション(偽造と思われるクーポン)

・ギャング・カット(消費者の手を経ないで意図的に大量に集められたクーポン)

・セールスマン・クーポン(セールスマンが回収、精算するクーポン)

・アウト・オブ・エリア(クーポン対象地域外で回収されたクーポン)

・期限切れ

・存在が疑わしい小売店

などのクーポンを指す。これらのクーポンはその理由を明記し、支払いをせずに送り返している。また、小売店の過去のクーポン取り扱い枚数1枚当りの平均値引額などのヒストリィファイルを所有しており、特定月に大量のクーポンや、異常に高い平均値引額が出た時には、クーポンの現物の再チェックを行っている。

<ReIayクーポンとは>

Relayクーポンとは、メーカー側からみて疑わしいと思われる小売店について、各クリアリングハウスに対しリレイ=直接メーカーに送れという指示をメーカーが出す場合を指す。メーカー側は受取ったクーポンを基に、小売店に対し、仕入れ伝票や売上伝票の提出を求め、その内容のチェックを行い、すべての疑問が解消された段階でメーカーが直接小売店に支払う仕組みとなっている。

両処置とも厳しい対応を示している。クーポンが一担回収されたとなると、金券に変わるが故の対応といえるが、小売店の力が強い日本では、どこまで強い対応で小売店に臨めるか、難しい問題である。

メーカー向けサービスにおける対応

メーカー向けサービスは前記にあげた理由すべてが差し戻しの対象になる。その中で、製品を扱っていないと思われる小売店のクーポンやエリア外のクーポン、小売店の存在が不確かなクーポンなどについては、支払い決定システムに異常情報として付与される。そのうえで各メーカーに支払い登録が提出され、各メーカーは異常情報を再確認し、支払い拒否を認めるか否かを決定する。もし、メーカーがミス・リデンプションの判断に同意した場合、すべての疑わしきクーポンは無効となり、すべて小売店へ戻される。小売店へは、手紙によってクーポンの償還が認められない理由が説明され、小売店は適切な償還の実行であることを誓約することで、問題のクーポンを再び提出する機会が与えられる。

支払い拒否になった場合はその小売店の精算代行業務をしているクリアリングハウスに対し、その調整額を連絡する。クリアリングハウスはその小売店に対し、次の精算段階に調整額を引去し精算を行うことになる。

このように、メーカー向けサービスにおいても厳しい対応が行われている。クーポンの仕分けが小売店サービスとメーカーサービスと二重にチェックされていることを前号で紹介したが、それぞれのレベルでこのように厳しい対応が行われており、その対応は、クーポンの流通の中から疑わしいクーポンをでき得る限り取り除くのに大いに役立っている。また、小売店にも再考を促す根拠を示す機会を与え、教育、指導の役目も果している。

                                (クーポン企画室 大木眞煕)

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