クーポン・プロモーションの理論と実際 9 ―クリアリングハウス事業を起こすにあたって―

VRDigest編集部
VRDigest編集部
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!

※本記事は1988年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

◆日本におけるクリアリングハウス存立の可能性

 日本においてクーポン広告が実施できにくい一要素としてクリアリングハウスが無いことをあげる人が多い。しかし、この論議が主客転倒であるということは、米国におけるクリアリングハウスの発生過程をみれば明らかである。クーポンが大量に出回ることになってこそクリアリングハウスが必要であり、クーポンが根付いていない今、クリアリングハウスの存立云々自体は大した問題ではないのである。つまり、本来的には、メーカーもしくはメーカーの意向を受けた卸売業が、小売業をコントロールする力がありさえすれば、クーポン自体は何時でも実施できるのである。このことはプレミアムキャンペーンを考えれば分るであろう。ただ、問題は、クーポンの場合は小売側に精算業務が入いるため、メーカーが強気に指導できないことであり、クーポン商品に対するメーカーの意向と小売側のマーチャンダイジングとが一致しないことも、小売側を指導できない一因となっていよう。その難作業をクリアリングハウスに期待するが故に、クリアリングハウス云々の問題が出ているとみられる。

 一方、クリアリングハウスを事業として考えたとき、収入面の問題がある。米国のクリアリングハウスは、小売店向けサービスとメーカー向けサービスの二面性を持ち収入を得ているが、いずれもその収入は取り扱いクーポンの処理枚数に求めている。しかもその収入は1枚当りわずかに2セントぐらいである。したがって、日本においても米国と同じスタイルのクリアリングハウスを目指すならば、クーポンが大量に出回らない限り単独の事業としては成り立たない宿命にある。そうはいっても、他のマーケティング手法が既に発達している中にクーポンを持ち込むとすれば、余程効率的な仕組み作りを一挙に作り上げなければプロモーション手段として根付くことば不可能で、クリアリングハウスが中心となった仕組み作りとなることは否めない。短時日のうち、事業として成り立つクリアリングハウスとクーポン全体の仕組みを如何に作るか、それがポイントといえよう。

◆日本におけるクリアリングハウスの現状

 ビデオリサーチは今、そのクーポン全体の仕組み作りと、クリアリングハウスを事業として成り立たせることに力を傾注している。

 現在、そのほかにクリアリングハウスを事業として行っている会社として日本クーポンシステム社がある。この会社の概要を説明すると昭和57年にフジサンケイグループと複数の広告会社の出資で設立された。その3年前に、サンケイリビングはフリーペーパーであるが故に新聞業の公正競争規約の束縛を受けないことから、クーポン広告を始めた。そのクリアリング部門が発展したものとみてよい。当時のシステムをチャートすると次のようになる。

vol243_15.jpg

 その後、サンケイリビング紙上によるクーポン活動は、クーポン効果が伴わないこともあり休止状態に近い状態となっている。そこで新たな展開として出てきたのが、機械によるクーポン発券システム"なるほど!ザ・クーポン"である。このシステムの概要については本誌'88年5月(239号)でまとめてあるが、このシステムの運用は日本クーポンシステムが行っている。このシステムをチャートにすると次のようになる。

vol243_16.jpg

 この2つのチャートをみると分かるように、この会社はクリアリングハウスの機能だけではなく、クーポン・プロモーションのエージェンシーもしくはプロモーション会社としての機能も併せ持ち、収支からするとむしろ後者のほうが主となっているといえよう。クリアリングハウス単独では事業として成り立ちにくい現状では、このようなシステムにならざるを得ないともいえる。

◆あるべきクリアリングハウスの姿

クリアリングハウスの必要性については本誌′出年2月(236号)で紹介したが、ここにその必要性に対応するクリアリングハウスはどうあるべきかを再度まとめてみると、

①クーポンは金券である

 メーカー、メディア、小売業のいずれにも属さない公正な第三者の精算機関が必要

②多くのメーカーが全国の小売店を対象にクーポンを行う

 コストの合理化と小売業の事務処理の簡潔化のため専門の精算機関が必要

③小売店はメーカー側の要請に基いて値引きしている

 小売業の処理の省力化と精算を迅速に行うために精算専門機関が必要(小売業との良好な関係の維持)

④クーポンの発達にはミス・リデンプションによるコスト効率の低下を極力防ぐことが必要

 高度なミス防止テクニックと不正監視を持つ熟棟専門機関が必要

⑤クーポンの結果はマーケティングの結果である

 メーカー、メディア、小売業のいずれにも属さない公正な第三者のデータ処理機関が必要

⑥クーポンの発達は豊富なマーケティングデータを生む

 正確、且つ撤密な分析結果を得るためにデータ処理機関の統一化が必要

大体以上であろうか。

 このようにみると、日本クーポンシステムの場合、クリアリングハウスというよりはむしろメディアに近く、クーポンが金券という性質上、そして、公正なマーケティングデータを生むという性質上、精算・データ処理機関のポジションに位置するには適していないと考えられる。ビデオ・リサーチが何故クリアリングハウス事業に乗り出したか、それは前出の中でも特に⑤、⑥を意識したものであり、正に視聴率調査会社として、「公正なる第三者機関」を旗印として立社した精神に通じるものである。プリントメディア版ビデオ・リサーチ調べを提供するものである。

◆今後の我国におけるクリアリングハウスと仕組み作りの中の問題点

 新聞、雑誌のクーポン広告解禁問題を契機として、クーポンの可能性があらゆる所で模索されてきている。クリアリングハウスについても同様で、事業としての可能性が検討されている。既に事業として取り組んでいる日本クーポンシステムは、当然先程の矛盾点も含めてその方向性を模索していよう。

 では、そのはかに今後どのような動きが出てくるか、既に出ている動きに推論も含めていくつかのケースをみてみよう。もち論、それらの会社は今後ビデオ・リサーチの競合社になる。

 一つには卸もしくは商事会社が乗り出してくるケース。これは米国のクリアリングハウスの発生の歴史からみて考えられる。いわゆる初期のクリアリングハウスの形態で、小売店支援・サービスを目指すものである。クリアリングハウスの小売店向けサービスを満すものとしては一番無理のないスタイルとみられ、収支もサービスの一環としてみれば深刻な問題にはならない。

 次は異業種が集まり、クーポン・プロモーションも含め多機能な事業化を起こした中に、独自にクリアリングハウスを持つケース。米国のインハウスクリアリングハウスの寄り合い版であることから可能性としては高い。但し、米国でもそうであるように、小売店向けサービスへの対応までインハウス方式で行うとすれば、効率的ではないであろう。

 最後にマーケティング会社の参入。米国でそうであるように、この種の会社が乗り出し事業として成り立つならば、クーポンを発達させるうえで最も理想的なケースといえよう。正にビデオ・リサーチはそこに位置しているのである。

 このように、クーポンの開花を前にその環境作りとしてクリアリングハウスは間違いなく輩出してくると思われるが、そのあるべき姿はよりコスト効率のよい仕組み作りの中で、より信頼のおける精算処理、データ処理の中で考えられるべきである。そのことが、クーポンを発達させ得るか、得られないかのポイントとなる。

 また、米国のクリアリングハウスの構造からみると、小売店向けサービスを行うクリアリングハウスとメーカー向けサービスを行うリデンプションセンターとに分化されるが、日本においてもこのような視点が必要と考えられる。つまり場合によっては、先程の競合社と思われる企業は場合によっては協力関係に成り得ることもある。

 最後に、クリアリングハウスの収支、というよりクーポン全体のコストの仕組みの中で米国と対比して解決しておかねばならない問題をあげておく。

①小売店の取り扱い手数料とクリアリンフィー

 米国の場合は最初に小売店の取り扱い手数料が決められ、長い歴史の中で大量にクーポンが出回ったことにより、その取り扱い手数料の中からフィーを払ってでも代行業者に精算を依頼したほうが小売店にとって効率がよくなってきた、というように、手数料の中からクリアリングハウスにフィーを払うことに対する合意がある。日本の場合は、米国のように小売店に保証する取り扱い手数料の中からクリアリングハウスへ支払うフィーを捻出する仕組みは無理であろう。何故ならクーポンに取り扱い手数料を表示した時点で小売店は自分が得られる権利と思ってしまう。したがって、クリアリンダフィーは別個にメーカーからクリアリングハウスに支払われる方式に必然となろう。それぞれの妥当額はここで

は論じられない。

②独立(零細)小売店の扱い

クリアリングハウスを事業として考えるなら、クーポン処理枚数が多い大型店だけと契約し扱うことが効率がよい。そのために、米国では処理枚数に応じてクリアリングハウスの得るフィーを決めているが、その結果は、独立店(=零細店)が独自に直接メーカーにクーポンを送付するようになっている。日本の場合、米国とくらべ零細店が多く、もし、これらの独立店を無視したら、各メーカーほその対応に困惑するであろう。また、独立店はメーカーごとに送付することになるから、送付料のコストアップにも繋がる。

③クーポン回収のための送料

 米国の場合は大量にクーポンが利用されているため、クーポンを回収するために要する送料はクリアリングハウスのサービスとして片付けられているケースもあるが、日本の場合は、独立小売店の問題も含めでき得る限りクリアリングハウスを-括化し、当面の間は受益者(メーカー)負担とする方法が賢明と思われる。

 また、米国とくらべた時、日本の場合は郵送費が高いことを念頭に置く必要がある。

④保険料

クーポンは金券である。小売店からクリアリングハウスへの送付中紛失した場合、どのように保証するのか。現在、その基準となるデータがない。

                                (クーポン企画室 大木真煕)

この記事をシェアする
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!