クーポン・プロモーションの理論と実際 15

VRDigest編集部
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※本記事は1989年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

―クーポン広告テストマーケットの結果 6―

6.小売店レベJレにおけるたれかたち受容性

 今回のテストを行うにあたりテスト地域の小売店に対しクーポンの取り扱いの交渉を行った。その結果は当該地域の対象店になると思われる小売店約1,000店のうち、了承してくれた小売店は357店という結果に終った。(昨年の本誌10月号:No.244参照)何故その程度の参加率に留まったれ その詳細については昨年の本誌2月号(No.236)でまとめてあるが、改めてポイントだけをあげておくと

 ① 販売増につながらない

 ② 売れ筋商品が出てこない

 ③ 取り扱い加盟店に参加するとクーポン商品を揃えなければならない

 ④ 以前クーポンで失敗している

 ⑤ クーポンを以前取り扱ったが精算にあたって無責任である

 ⑥ 時期尚早

 総じていうと小売側のクーポンに対するイメージは意外に悪いということになる。

 そのような前提はあるが、ここでは今回のテストに参加した小売店が、テストを通じどのような対応を図ったか、どのような感想を抱いたかなどを明らかにし、今後のクーポン・プロモーション展開にあたっての小売側のポイントをいくつか浮き彫りにしておく。

1.クーポンの受容性~小売店ヒアリング調査より~

 マーケティング手段として今後のクーポンに対する期待は次表のように現場の担当者レベルでは期待が大きい。特にスーパーで期待が大きく、スーパーの現場レベルでは本部レベルでの判断と異なりクーポンによる集客効果やメーカーの対応の変化に期待を寄せている。

vol249_07.jpg

ヒアリングによる意見

・値引きは魅力的なので消費者に浸透すればもっと伸びる..................7

・メーカーの力の入れ方次第でもっと伸びると思う...........................2

・メリットをもっとアピールし商品アイテムが増えればよい...............2

・雑誌・新聞が出れば効果が出る...................................................1

・DM的に伸びそう。冊子と商品宅配システムとして作れば発展する...1

 同種のセールスプロモーションとの比較評価においても良好な評価を得ており、今後のセールスプロモーションの有効な手段として現場の受容性はかなり高い。

vol249_08.jpg

2.今回のプロモーションの問題点~小売店ヒアリング調査より-

 クーポンの今後への期待は大きいが、今回行ったテストの内容に対してはいくつかの問題点が指摘されている。

 一つは、今回のテストに当って卸、メーカーの熱意が小売側に伝わらず、小売側と一体になったプロモーションに昇華せずに終っていることである。そして、クーポン冊子の内容に対して指摘する声が多い。その多くは消費者側からみた時と同様、参加クーポン商品に対してで、"売れ筋商品がない"、"商品が少ない"、"食品のアイテムが少ない"などの不満が多い。

3.今回のプロモーションへの対応~小売店ヒアリング調査より~

 プロモーションが開始されると同時にクーポン商品の配荷(店頭取り扱い)率が急激に高まることを昨年の本誌11月号(No.245クーポン広告の本質の見極め-その1-)で紹介した。また、クーポン広告により配荷効果はみられたものの、残念ながら陳列効果への波及は大きなものがみられなかったことも紹介した。

 では、個々のお店ではそのほかどのような対応をしたのだろうか。今回はテストマーケットということで敢えて小売店側の協調プロモーション及び支援体制を積極的に求めなかった。しかし、ヒアリング調査の結果、店によっては自発的に対応している店もみられる。ヒアリング調査対象25店のうち、対応を図った具体的な内容を列挙すると下表のようになる。

 また、右の写真は某薬局店が折り込み広告で行ったダブルクーポンの例である。

vol249_09.jpg

ダブルクーポンとは

 クーポン額面を2倍保証するテクニック。追加分の保証額はメーカーが保証する場合とスートア側が保証する場合がある(今回はストア側が保証)。消費者に対しては射幸心を煽りインパクトが強まるテクニックである。

写真のようにクーポン参加商品のうちの1商品の販売価格の例を取り上げ販促に結びつけている。クーポンの額面分を自店のリスクで負うことになるが、見事な集客策としてエキサイティングな結果に終った。このようにクーポン実施が単に消費者の需要活成につなげるだけではなく、小売側に対しても活性化の契機を促す役割を持っていることがわかろう。また、小売側の協調プロモーションや支援体制のテクニックが洗練されてきた時、クーポンは大きなうねりをみせる可能性がある。

4.価格政策とクーポン~POSデータ分析より~

 今回のテスト(クーポン広告)により流通サイドではチャネルのフェイス拡大が招かれ、消費者サイドではクーポン商品に対するマインドの高まりが得られ、結果的にマーケットシェアの拡大に繋げていることがわかった。(詳細については昨年の本誌12月号:No. 246クーポン広告の本質の見極め-その2-参照)

 では、個々のお店ではどのような販売動向をみせているのだろうか。クーポン取り扱い店の中でPOSレジを導入しているお店の協力を得て、テスト開始1か月前('87年10月)からテスト終了1か月後('88年6月)までの9か月間のPOSデータを公開してもらい分析を行った。次の表はそのうちのある商品種類の商品別販売動向及び販売価格の衰である。

vol249_10.jpg

 表を見てわかるように、量販店の場合は価格政策が激しく、月によって各商品の販売量が大きく変動している。一方、コンビニエンスストアの場合は価格が一定で落ち着いた販売動向を示している。その中でクーポン商品はテスト期間中、徐々に売上個数を伸ばしている。販売価格が一定の状態であればクーポンは販売シェアを伸ばすのに有効とみられる。つまり、言いかえれば、現在のように価格政策を中心としたマーケティング戦略の中ではクーポン・プロモーションは現状その力を発揮するには非常に無力であるということを示している。この量販店のケースの場合、その価格政策がメーカー主導型のものかどうか定かではないが、時によっては通常の半値近くで販売されているのは異常ともいえよう。メーカーも含め従来の価格政策を中心としたマーケティング発想から、クーポンを巧みに利用し自店の利益を最大にするマーケティングへの転換を考えて行くことが必要と考えられ、また、そのような時期が到来しているものと思われる。

(クーポン企画室 大木眞煕)

調査概要

<小売店ヒアリング調査>

調査方法:ヒアリング調査

調査対象:クーポン取り扱い店の小売店主もしくは売り場責任者

調査店数:25店

調査期日:昭和63年5月

<POSデータ分析>

分析方法:POSレジ導入店よりPOSデータを入手、加工

対象店数:6店(但し、商品によっては取り扱っていない店もある)

分析対象期間:昭和62年10月~昭和63年6月

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