ラジオのはなし 聴取率測定編(第6回)

VRDigest編集部
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※本記事は2000年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

~音声比較方式その2

 先月は聴取率の機械式測定には大きく分けて3つの方法があることをお話しました。今月はその中の「音声比較方式」について、さらに深く考えてみましょう。

【音声比較方式とは】

まず、おさらいです。

 Aさんのラジオのスピーカーから、何かの番組の音が流れているとし、その放送局名を当てるとします。このとき自分のラジオを取り出し、ダイアルを回しながらAさんのラジオと同じ音がする局を探す、これが音声比較方式です。この方式の大きな特徴は、自分(つまり測定機側)にもラジオが必要だということです。

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【2つの方法】

 さて、この測定システム側のラジオをどこ(場所)に置くかで、音声比較方式は2つに分かれます。ひとつは、測定現場にラジオを置きその場でリアルタイムに放送局を特定してしまう方法、もうひとつは、センター側にラジオを置き測定現場から送られてきた音声を事後処理で音声比較する方法です。前者を端末比較方式と呼び、当社のテレビ視聴率測定機「VTRセンサー」がこの方式でした。また後者はセンター比較方式と呼び、当社の「VRカーラジオメータ第二号試作機」がこれにあたります。この両者にはそれぞれ一長一短があります。

【音声(端末)比較方式】

 

少しだけテレビ視聴率調査の話へ寄り道します。

 80年代に入り家庭用VTRが普及しはじめ、従来のローカルピックアップ方式では、正しい視聴率が測定できなくなりました。かならずしもテレビのチューナーが指し示すチャンネルが画面に出ているとは限らなくなったためです。そこで開発したのが音声(端末)比較方式のテレビ視聴率センサーでした。この測定機にはTVチューナーを内蔵しています。この内蔵チューナーのチャンネルを次々と切り替えて、家庭のテレビから特殊回路でピックアップした音声と、同じ音声のチャンネルを特定します。

 さて、ローカルピックアップ方式の「カーラジオメータ」も同様に音声(端末)比較方式への移行を検討した時期がありました。ローカルピックアップ方式では、カーラジオを車からいったんはずして、内部に特殊なピックアップセンサーを取り付ける必要があったからです。車からカーラジオを取り外すことは、私たち電気を専門にする者の想像をはるかに超えた難作業でした。車ごとに違う場所にある隠しビスを探り当て、ダッシュボードの隙間にマイナスドライバーを差込んで、テコのようにして運転台のカバーをはずします。このとき、多かれ少なかれ傷が残ってしまうので実際に運用するときの調査現場を考えると、これは無視できない大きな問題でした。

 そこで音声方式ならば、スピーカから音を分岐したり、マイクで音をピックアップするだけで、ラジオを分解しなくてもよいだろうと考えたのです。しかし実際には「音声(端末)比較方式」はごく初期段階で廃案となりました。その理由はアンテナでした。測定機側のラジオにも、やはりアンテナを接続しなければなりません。当初は測定機用小型アンテナを後部シートあたりに置く方法を考えたのですが、調査対象車両のラジオと測定機のラジオでは聞こえ加減に差異が生じ、音声比較がうまくいかないのです。電波が強いエリアではうまくいきますが、弱電界エリアを走行した場合、車両のラジオは聞こえているが、測定機側は聞こえないという状況があり、車両用としては適切ではないと判断しました。

 この方法がテレビ調査で実用化できたのは、テレビは世帯内調査(固定受信)なので、1本のアンテナから、テレビと測定機の双方に同じ条件で電波を分配できたからです。このような理由で、海外のラジオ調査研究事例でも、音声(端末)比較方式は主流ではないようです。

【音声(センター)比較方式】

 車のラジオアンテナをカーラジオと測定機に分配すればある程度問題は解決しますが、車両を分解したくないという大きなテーマには応えることができません。

 それを解決するのが、測定機に内蔵させていたラジオをセンター設備側に設置し、ここで比較しようという「音声(センター)比較方式」です。極端に言ってしまえば、車両側装置は単なるテープレコーダで良いことになります。車両内でサンプリングしたラジオ音声を、なんらかの手虚でセンターに送り、センターで事前に蓄積しておいた24時間全局マスターと照合する方法です。

 ただしセンター比較方式の場合は、端末比較方式では全く考慮する必要のなかった、「時刻あわせ」がとても重要になってきます。たとえば良く知られている相関係数を使った音声比較で考えてみましょう。相関係数は+1から-1の範囲の数字です。似ているほど+1に近づきます。Aという波形と、Bという波形の相関係数を位置を少しずつずらしながら求めてみます。ただし波形Bは波形Aの一部分と全く同じだとします(図1)。位置(すなわち時刻)がぴったり合ったときは+1です。しかし、ほんの少しでもずれると急激に相関係数は低下します(図2)。ラジオ音声を使った場合でも同じです。わずか1/10秒ずれただけでも別物であると判定します。

 カーラジオメータは内部メモリーに溜め込んだラジオ音声データを9600bpsの携帯電話でセンターに送りますなるべく通信時間を短くするために、1分間おきに6秒間だけのサンプリングにしました。そして正確な時計装置を内蔵し、この6秒間データに「何時何分XX秒」というタグを付けてメモリーに格納します。センターでは携帯電話から送られてきた、データの時刻タグをまず参照し、センターに蓄積されている24時間全局マスターと照合しますそのためセンターの時計と、複数の調査車両の時計がミリ秒オーダーで正確に同期がとれるかどうかが重要なキーになりました。

 来月号では相関係数を使い、実際に音声認識のシミュレーションをしてみます。どうぞお楽しみに。

                            

技術開発部 田中 博

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