US Media hot News 米国で話題沸騰!『ネット社会のプライバシー問題』

VRDigest編集部
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※本記事は2000年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 米国ではかつてない勢いでネット社会のプライバシー保護を求める声が強まっています。その声は政府の介入を求めるレベルにまで届いており、ビジネス誌「ビジネスウィーク」やハイテク専門誌の「PCコンピューター」では表紙を飾るトップストーリーに取り上げられ、連日のように新聞や雑誌の紙面を賑わしています。

 騒ぎのきっかけは、今をときめく"インターネット広告代理店"で米最大手の"ダブルクリック社"がネットユーザーのプロフィールを特定の個人と結びつけようとしたことです。"クッキー"と呼ばれる小さなソフトウエアを組み込んでユーザーのネット活動を追跡し、DARTと名付けた独自の広告配信ネットワークを編み出したダブルクリック社はライバル会社を抑えて業界トップの道を走ってきました。

 今日、IT技術の急速な進歩のおかげで、携帯電話やテレビからもインターネットヘアクセスできるようになり、それだけ個人情報が外へ流れやすくなってきています。消費者は一段とプライバシーが侵される危機感を察して、業界に待ったをかけたというわけです。

 プライバシー保護の問題は3~4年前からネット社会が抱える課題のひとつとされてきました。広告主最大手のプロクター・アンド・ギャンブルと新興ネット企業などが集まってできた団体「FAST」や、アメリカ・オンラインやマイクロソフトなどの出資による非営利団体「トラストe」、消費者サイドでは「EPIC」(電子プライバシー情報センター)と呼ばれる組織が結成されて問題に取り組んできました。

 その結果、ポータルサイトやウェブサイトが各自でプライバシー政策を設けたり、業界組織が認定証を与えたりする動きが生まれました。ただ、こうした取り組みは自主策に過ぎないため徹底するのが難しく、規準もあいまいだと批判されています。IBMやウォルトディズニーがプライバシー保護策を明確に打ち出していないサイトへの広告を控えるなど、広告主側から圧力をかける試みもなされていますが、まだ満足のいく水準に達していないのが現状です。

 しかし、マーケティングの見地からすると、効率的な広告を打つことは至上課題です。ネット媒体に限らずテレビでも雑誌でも、いかに有益な情報を的確なターゲット層に届けるかを日夜、頭をひねって考えているわけです。抜くか抜かれるかのネット業界では、大胆な戦略がトップの座を守るのに必要です。しかし、最近のダブルクリック社の動きは速すぎて、消費者の懸念を煽る結果になってしまったよ

うです。

 現在、ダブルクリック社を相手取り少なくとも6件の訴訟が起きています。個人訴訟や集団訴訟に加え、州政府訴訟まで飛び出しました。公正取引委員会(FTC)はデータ収集方法について調査に乗り出し、騒ぎは大きくなるばかりです。

 しかし一方で、こうした騒ぎは行き過ぎだという冷めた見方も浮上しています。たしかに、従業員がやりとりした電子メールや訪問したウェブサイトを監視する"ビッグ・ブラザー"と呼ばれる行為はプライバシーを守る権利に触れるでしょう。しかし、マーケティング活動に利用するデータの収集ならば許容範囲内ではないでしょうか。何も、悪徳商法に利用しようというわけではありません。各社が自信を持って開発したサービスや製品を消費者に届けたいとしてインターネット広告代理店の力を借りているわけです。

 ネット企業は、この世論の高まりにどう対応するのでしょうか。

 最も避けたいのは政府による介入のようです。議会では、本人が承諾した時のみ個人情報を引き出せるデータ収集方法「オプト・イン」を含む規制法案をまとめました。しかし、オプト・インでは情報発信者から受け手へのアクセスを遮断することになり、ネット社会の無限大に広がる可能性の芽を摘みかねません。

 ガイドラインの設置に動き出した州もありますが、州ごとに独自の法律が出来ては、国境を超えて利用されるインターネットに適切とは言えません。かと言って、連邦レベルで法律を定めるには時間がかかりすぎるでしょう。一般のビジネス界に比べて7倍の速さで進むと言われる「ネットイヤー」の世界では、やっと出来あがった法律が時代後れになりかねません。

 最も望ましいのは個々の企業による迅速な対応だとの意見が大勢です。ダブルクリック社は消費者の懸念を深刻に受け止めて、新技術の適用を中止しました。データ集積および利用に対する理解を深めてもらうために「プライバシー・チョイス・ドット・コム」というサイトも開きました。プライバシー問題を一括する「チーフ・プライバシー・オフィサー」なる役職を設け、監査機関に定期的な「プライバシー保護遵守チェック」を依頼したところです。

 たとえ究極の解決方法を見い出せなくても真撃な対応と行動を取れば、消費者の信用を回復でき、企業活動を前進させる力になるのではないでしょうか。

Video Research USA, Inc.

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