解剖中国市場 VOL.1 中国宝貝(ベイビー) 粉ミルク、紙おむつに求めるものは高品質と安全性

王 静秋
国際事業室
王 静秋
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※本記事は2015年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

当社では国内のみならず、海外におけるマーケティングサービスや調査も行っています。 それらの活動を通して培った知見と海外ネットワークを利用して、本号より中国の市場動向や生活者をシリー ズで紹介していきます。

ツオングオ・バオベイ

第1回目は「中国宝貝(ベイビー)」です。

「単独二子」で出生率増

中国の子供事情と言ったら、「一人っ子政策」という言葉がきっと真っ先に皆さんの頭に浮かぶでしょう。確かにここ20数年、中国政府が人口の増加を抑えるために、人口の9割以上を占める漢民族を中心に一組の夫婦の間に一人の子供しか産ませない厳しい制限を設けてきました。これによって子供が「小皇帝」と呼ばれるほど大事にされ、「一人の子供に財布が6つ」つくと言われるように、親と祖父母たちが子供に惜しみなくお金をかけ、子供が家庭の中心となる社会風習が形成されました。では、中国では毎年どのくらいの赤ちゃんが産まれて、現在どのくらいの乳幼児がいるのでしょうか。まず、マクロデータでこの半世紀ほどの中国の出生人口の変化を振り返ってみましょう。

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中華人民共和国が建国されてから、3つの出産ピークがありました。第一次ベビーブームは 1949年~1957年です。長い戦争が終わって生活水準と医療衛生状況が回復したのと、朝鮮戦争の援軍として戦死した兵士たちを弔うべく、「光栄ママ」と呼ばれる多産を奨励したからです。その後は「三年自然災害」と称される大飢饉に遭い、4,000万ともいわれる人々が餓死し、出生率が著しく低下しました。その反動の「補償性出産」で1962年から1970年が二回目の出産ピークとなりました。

こうした激しい人口変動を懸念した政府が1971年に基本国策として計画出産策を打ち出し、更に「一人っ子」へと厳しくして出生率を大飢饉の時の最低値よりも低い水準に抑えました。しかし、前の2回のベビーブームで生れた世代が出産適齢期に達したため、1981年から出生率が再度上昇し、1990年までが3回目のベビーブームとなりました。この間、政府が高齢化社会への昂進を意識し、1984年に「双独二子」策を打ち出しました。夫婦双方が共に一人っ子であれば、子供は二人まで設けることができるという緩和策です。しかし、1990年代以降、中国の経済が改革開放によって急速な発展を遂げ、特に都市部では働く人の労働強度が増す一方の状況下、子供一人だけの子育ての楽さに慣れた若い世代では、二人目を産もうとする家庭がなかなか増えず、出生率が低下し続け、2010年に底を打ちました。2011年からは回復がみられ、2013年度には新生児数は1,640万人で日本の16倍、同年末日の6歳までの乳幼児数は9,700万人です。

そして、今年の年初から第二段の緩和策である「単独二子」が新たにスタートしました。夫婦のどちらか一方が一人っ子なら、子供が二人産めるというものです。「一人っ子」政策の達成度が95%以上に維持されてきた都市部では、今後ほぼ全ての家庭で二人目を設けることが可能になります。中国国家衛生と計画出産委員会は今後数年の新生児人口は毎年 10%伸びると予測しています。この予測通りであれば、中国の乳幼児消費市場は日本の18倍に拡大します。

子供用品の消費現状

次は、新生児と乳幼児が使う代表的な消費財として粉ミルクと離乳補助食品、紙おむつを使って、日本と中国の消費の現状を比較してみます。

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中国女性の有職率は、2013年は68%で、日本の35%を大きく上回ります。育児休暇制度が完備されていないため、妊娠中及び6歳以下の子供を持つ母親への調査「CNRS MOM PLUS」によると、母乳だけによる哺育率は僅か16%です。乳幼児の粉ミルクの利用率は、生後6ヵ月までは65.2%、7~12ヵ月は70.9%、1歳から1歳半は72.1%、1歳半以降は75.4%と上昇します。この傾向は母親の社会復帰に伴う変化であり、日本と異なる哺育習慣の現れでもあります。日本の0歳児の粉ミルクの利用率を当社 ACR 調査データでみると、60.7%、6ヵ月以降から徐々に離乳食の量が増えて1歳児の粉ミルクの利用率が25.2%に減り、2歳になるとほぼ卒乳します。一方、中国では、3歳になってもまだ57.9%の子供が栄養補助に「おやつに1本」「寝る前の1本」と粉ミルクを飲みます。小学校に入学するまで飲み続ける子も少なくありません。粉ミルクの利用ブランドを見ると、60.7%の赤ちゃんが、最初に口にしたブランドをその後も最もよく飲んでいます。国産製品のメラミン混入や輸入ブランドのリコール事件を受け、母親がブランドを選ぶ時に最も重要視するのは「無添加と安全(42%)」「搾乳地(31%)」の2項目です。家計の許す限り高い商品をわが子に与えたい心理で、1缶300元以上の高級ブランドの消費量が連年増え続けています。生後6ヵ月の赤ちゃんが1ヵ月に平均4缶(袋)の粉ミルクを飲むので、大人気の日本製品を与えようとすると1ヵ月で約2万円、高価格帯のヨーロッパのブランドなら4万円もかかります。市場シェアが最も大きい中国産のブランドで計算しても月1.4万円になり、中国では日本よりミルク育児の経済的負担が大きくなっています。

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次に、離乳補助食品の利用をみましょう。ここでは、母親等が手作りする離乳食ではなく、瓶やレトルトなどの形状で市販されている離乳食を指します。利用で最も多い層をみると、中国では7-12ヵ月児の43.4%で、日本の48.8%を下回っています。ただ、子供の月齢でみていくと、0歳児と1歳児では日本の高さが目立ちますが、2、3歳児になると、中国の利用率が高くなり、逆転します。この年齢になると、日本では9割の子供が家庭で作られる食事を摂るようになりますが、中国では4人に1人がまだ離乳補助食品を食べています。食べる量が少ない乳幼児にとって、栄養バランスの整った離乳補助食品のほうが、手作りの食事よりいいと親たちが思っているのかもしれません。2、3歳児には普通の食事も摂り、粉ミルクも飲み、離乳補助食品も食べる子供が結構いるようで、肥満児が多いことも不思議ではなくなります。

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最後に、紙おむつでは、中国の乳幼児の各月齢における平均利用枚数は日本とほぼ変わりませんが、利用率は日本ほど高くありません。1歳半までは日本の7から8割程度で、2歳までは6割、3歳児では5割弱です。中国では出産直後の女性に1ヵ月間完全に休ませる「坐月子」という慣習があり、産後3ヵ月から仕事に復帰する母親も少なくないため、家事と赤ちゃんの世話を手伝いに来る祖父母や親戚、またはベビーシッターにお願いする家庭が 多くあります。年配の祖父母が布オムツに拘ったり、どうせお手伝いさんがいるから、布オムツを洗わせればいいといった節約観念が紙オムツの利用の妨げになっています。また、オムツ卒業に対する考え方が日本より厳しくて、オムツが取れるまでに時間がかかることを発育の遅れと受け取る人が多く、そのため、若干無理をしてでもトレーニングを重ねて、早くオムツを卒業させたいと考えます。オムツは子供の肌に直に触れるもので、品質の高いものが求められるため、同じ日本のブランドでも、中国で生産されるものよりも日本からの輸入品がよく売れています。

このように、乳幼児関連の商品では、粉ミルクのような高単価、長期利用のものもあれば、紙おむつのような短期集中利用のものもあります。子供関連商品の消費者に共通するのは高品質と安全性への憧れです。

次回は子育て中のお母さんとお父さんについてご紹介したいと思います。

<データ出典>

中国のデータ:中国国家統計局、CTR 市場研究の 2013 CNRS、2014 CNRS MOM PLUS(2014 年に開始された妊娠中および0~6 歳の子供のいる母親への調査)

日本のデータ: ACR 調査データ(2013 年主要7地区)

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