ACR/ex 分析事例 妊婦さん篇 妊婦さんの幸せのために、"制約"に着目を

コーポレートコミュニケーション室・ACR/ex事業推進部 
青山 隆一・岸  斉史
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※本記事は2015年に発刊したVR Digest に掲載されたものです。

「ACR/ex」8月期データを利用して、ひとつのトピックを取り上げて様々な角度から生活者を紐解いていくシリーズ。

2回目は「妊婦さん」の生活をフォーカスします。

日本の総人口に占める子ども(15歳未満人口)の割合は、世界的にも最低水準だと言われています。2013年の出生率は1.43で人口減少に歯止めがかからず、50年後には8000万人台に達するという予測も出ていますが、政府は1億人の線を維持するように目標設定しました。その目標を達成するためには、出生率向上が必要となりますが、それにはまずこれから子供を出産しようとしている、今妊娠中の女性の姿を正しく捉えるところがスタートなのではないか。そんな想いから、当社が代表性を保ちつつ、1万人にタブレットを配布して行っている業界初の調査「ACR/ex」(エーシーアールエクス)調査のデータから、今の妊婦さんに関する概観分析を行っていきます。

【1】妊婦さんの年齢分布

まず、妊婦さんの年齢分布を見ると【図表1】、20代と30代で9割を超えています。中でも最も割合が多い層は25-29歳で、4 割を超えます。

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また、20~30代の各年齢で、妊婦さんがどれくらいいるのかを1才刻みで見てみると【図表2】、27才がピークで8.1%でした。一方、奥さんが妊娠している旦那さんの年齢は32才がピークで8.3%でした。妻が27才で妊娠中、夫は32才、そんな家庭が現代日本のひとつの姿なのかもしれません。

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【2】妊婦さんの平日の生活行動

次に、妊婦さんの平日における生活行動を時間量の観点から見てみました【図表3】。平日1日あたりでの睡眠時間量は8時間以上で、女性20-30 代と比べても40分程度長い睡眠時間を確保しています。一方で、外出の時間量は4時間43分と女性20-30代よりも2時間以上短く、1日の約半分(11時間14分) を自宅内で過ごしているようです。

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妊婦さんの起床と就寝の時間帯を見てみると【図表4】、約半数が6:45頃に起床、23:00には就寝しており、女性20-30代と比べて早寝・遅起きであることが分かります。また、日中における睡眠の割合も女性20-30代より高めに推移しています。これらのことから、早寝・遅起きや日中などで長めの睡眠時間を確保している様子がうかがえます。

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さらに、平日の外出時間量は4時間43分と短めでしたが、その時間の使い方を見てみると【図表5】、午前は11時台をピークに10時半~12時、午後は16時台をピークに14~17時の時間帯で買い物をする人が多いようです。

一方、外食ではランチを12時台にとっている人が多く見受けられ、買い物や外食など、日中でアクティブに動いている様子がうかがえます。

夜は19時台前後で一部外食している人もいますが、多くの人は家で食事をしているようです。

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ちなみに、妊婦さんはどんなところで外食しているのでしょうか。飲食店の利用経験率を見てみると【図表6】、女性20-30代と比較して特に高かったのは、「ケンタッキーフライドチキン」と「モスバーガー」でした。妊娠すると、から揚げやとんかつなどの肉類やポテトフライを食べたくなるという話をよく聞きますが、それを表しているのかもしれません。

【3】妊婦さんがよく飲む商品

ところで、妊婦さんは日頃どんなものを好んで飲んでいるのでしょうか?よく飲む飲料カテゴリーを見ると【図表7】、女性20-30代より比較的高い(10pt以上高い)カテゴリーは、「100%天然果汁飲料」と「トマトジュース・野菜ジュース」でした。胎児のために健康面に気遣っている様子がうかがえます。さらに、この飲料2カテゴリーでどんな商品ブランドが飲まれているのか見てみると【図表8】、「ミニッツメイド」が2位の倍以上の圧倒的なスコアで1位、2位以下に「伊藤園1日分の野菜」「伊藤園充実野菜」「ウェルチ」が続きます。これらの飲料カテゴリーでは、どの商品ブランドにおいても女性20-30代を上回る飲用経験率で、積極的に野菜・果物を摂取しようという意識が垣間見えます。また、「妊婦さんがよく飲む飲料カテゴリー」では、ノンアルコールの飲用経験率で、女性20-30代よりも高い結果となっています。たまには息抜きをしないとストレスがたまるのかもしれません。

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では、ノンアルコールのどんな商品ブランドを飲んでいるのかを見ると【図表9】、1位「サントリーのんある気分」、2位以下に「キリンフリー」「サントリーオールフリー」と続いています。これらTOP5の商品ブランドに共通するのは、いずれもアルコール度数が0.00%であり、度数1%未満の低濃度ノンアルコール飲料はランクインしなかった点です。それだけ胎児への影響を最大限気遣っている様子がうかがえます。

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また、1位の「サントリーのんある気分」は、アルコール度数だけでなく、カロリーや糖質もゼロにしており、さらにカクテルの風味を楽しめ、ラインナップが豊富である点などがうけているのかもしれません。ちなみに、2位「キリンフリー」以下の4商品は、商品発売以降に投下されてきたテレビCM出稿量の多い順となっており、それだけテレビCMが効いている様子も、ここからうかがえます。

【4】妊婦さんがよく見るテレビ番組

では、妊婦さんのテレビ視聴実態を確認してみます。

妊婦さんは、在宅時間が長いこともあり、どの時間帯でもテレビ視聴の割合は高い傾向にあります【図表10】。特に平日の7~8時台や日曜の午前帯、それに木曜から週末にかけての18~22時台などで、よくテレビを視聴していることがうかがえます。

次に、妊婦さんが普段どんなテレビ番組を観ているのか見てみると【図表11】、「ヒルナンデス!」「ZIP!」のような情報番組、「ザ!世界仰天ニュース」「しゃべくり007」のようなバラエティ番組、それに「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」のような家族で楽しめるアニメ番組がよく見られているようです。

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ここまで外食や天然果汁飲料・トマトジュース・野菜ジュースから0.00%のノンアルコール飲料に至るまで様々なカテゴリーで妊婦さんの嗜好性を見てきましたが、紹介してきたカテゴリーに限らず、妊婦さんが求める商品カテゴリーであれば、上記のような習慣的に視聴されている番組内で広告展開をすると、購買意欲を喚起することが出来るかもしれません。

今回取り上げた各カテゴリーを見ても、妊婦さんは女性20-30代全体とは異なる動きをしています。

それはある種の"制約"がかかるからでしょう。今回取り上げたノンアルコール飲料はその最たる例です。妊婦さんにアルコールはよくない、という"制約"があるから、「アルコール気分を味わえるけど、アルコールは入っていない飲料」が重宝されるわけです。

アルコール以外でよく耳にする話は、「妊婦さんにカフェインはよくない」でしょう。妊娠するとカフェインを控えなければならないというのは、アルコールと共に今や社会的な常識となっている感もありますが、このような"制約"こそが、メーカーからするとビジネスのチャンスがあるという見方も出来ます。

例えば、【図表7】を見てみると、「緑茶飲料」「インスタントコーヒー」「紅茶飲料」「ペットボトル/紙パックタイプコーヒー飲料」「レギュラーコーヒー」「缶コーヒー」「セルフ式ドリップコーヒー」などのカフェインが入っている飲料カテゴリーは、すべて20-30代女性よりも大きく下回っており、妊婦さんがカフェインを控えている様子がうかがえます。

しかし一方で、妊婦さんがカフェインを控えているならば、【図表6】で妊婦さん利用率第4位に「スターバックス」があがり、さらには20-30代と変わらない利用率であるのは何故でしょうか?

その要因のひとつとして、スタバに「デカフェ」という商品があることが考えられます。「デカフェ」とは、カフェインを含んでいる飲食物からカフェインを除いたもののことです。ノンアルと同じ構造ですね。これはしてはいけないという"制約"を逆手にとった商品開発の好例でしょう。"制約"ばかり押し付けられると、妊婦さんの息も詰まってしまいます。ただでさえ、様々な不安を抱えているであろう妊婦さんが息抜きできて、ささやかな幸福感を満たすことが出来るような商品がどんどん開発されていくといいですね。そしてそのような商品が出来たら、妊婦さんが楽しんでいるテレビ番組をはじめとした各メディアで情報発信していくことで、一人でも多くの人に知らせて欲しいです。

そのための始めの問いは、「妊婦さんにどんな制約があるのか?」ですね (^^

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