解剖中国市場 VOL.2 中国の育女・イクメン

王 静秋
国際事業室
王 静秋
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※本記事は2015年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

賢い「辣妈」と拡大する「父嬰消費市場」

当社では国内のみならず、海外におけるマーケティングサービスや調査を行っています。それらの活動を通して培った知見と海外ネットワークを利用して、中国の市場動向や生活者をシリーズで紹介します。 第2回目となる今回は、「中国の育女・イクメン」についてご紹介します。

前号の中国乳幼児市場に続き、今回は育児中の両親についてご紹介します。

日本では育児中のお母さんを「育女」、お父さんを「イクメン」と呼ぶ流行りの言葉がありますが、中国でも「辣妈」(ラーマー)、「奶爸」(ナイバー)というネット流行語があります。直訳すると「スパイシーなお母さん」と「ミルクを与えるお父さん」になります。

「辣妈」は若くておしゃれで、強い向上心を持ち、はつらつとした母親のイメージを表し、若いお母さんたちの憧れとされていますが、「奶爸」は乳幼児の子育てに参加している父親の汎称です。育児休暇が取れようが取れまいが、楽しく積極的に子供の世話をしているかどうかに関係なく、家に乳幼児がいて、少しでも子供のことでデレデレする素振をみせたら、周りから「奶爸」と茶化されます。「辣妈」のポジティブ一辺倒のイメージと違って、「奶爸」には仕事と育児を両立させなければいけない辛さも含まれています。

ここでは、中国の現役の子育て世代について、調査データを用いてご紹介したいと思います。

八〇后の「辣妈」は手抜きをしない

中国の法定結婚年齢は、男性は満22歳、女性は満20歳となっていますが、人口が増えすぎないように国が「晩婚晩育」を推奨しています。結婚時の年齢が法定結婚年齢を3つ超えれば晩婚となり、法定3日間の有給結婚休暇が最長1週間加算されます。晩婚後の出産が晩育と認められ、法定90日間の有給・有賞与の育児休暇を延長できます。CNRS MOM PLUS調査によると、都市部の妊娠中および6歳以下の子供を持つ母親の平均初婚年齢が 25.5歳であり、第一子の平均出産年齢が27.4歳です。昨年の日本人女性の初婚29.3歳、第一子30.4歳に比べて3~4年も早いのですが、立派な晩婚晩育となっています(日本のデータの出典は「平成25年日本厚生労働省人口動態統計月報年計(概数)の概況」)。

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まだ一人っ子の家庭が多い中国ですから、上記第一子の平均出産年齢で、現在の母親の大方は1980年代生まれの「八〇后」と呼ばれる年齢層です。調査結果で「八〇后」が母親の8割を占めていることがわかりました。「八〇后」は「七〇后」と「九〇后」をつなぐ世代で平均収入も、当たり前ですが、3 世代の真ん中に位置します。年齢に10歳の差があればジェネレーション・ギャップが存在すると言われるように、2~3年後に「九〇后」が平均出産年齢に達し、母親の世代交代が起きると考えられます。

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【図表3】に、母親の生活意識を女性の全体平均と比べてみました。子供にまつわる項目が見事、トップに上がり、女性全体平均の3倍以上の数値となっています。前号で粉ミルクなどの子供用消費財を紹介した時にも言及したように、子供に最高の物を与えたい気持ちが大変強いことの表れです。

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「自分のためにたくさんのコスメを買う」「過去に比べて食生活がより健康的になった」など、自分自身の美と健康に関わる項目も平均を超えて上位に並びます。体重の重い赤ちゃんイコール健康な赤ちゃんとの考えが根強い中国では、妊婦が栄養を取りすぎて肥満になってしまうケースが多く見られます。出産後も授乳と体力回復のため、食事の量が減らせずに出産前の体重に戻せない人も多いのです。昔の女性なら体型のキープを諦めてしまうかもしれませんが、CNRS MOM PLUS調査でわかったのは、今は50.5%の女性が産後ウエストニッパーや骨盤ベルトを使用し、26.4%(女性平均15.4%)が毎月ジムに通い、44.9%(女性平均36.7%)がダイエットを試みています。天然成分が多く含まれるシミ取り・美白・アンチエイジングなどに効能がある薬用化粧品の利用率が25.8%で、女性平均の1.5倍になっています。今時の女性は母親になって、より美と健康に気を遣うようになったことがわかります。

有職率が高い中国の女性は子供を産んでも仕事を続けます。仕事をする目的は収入を得ることに止まらず、半数以上の女性が人生のキャリアとして考えています。外では仕事を通じて自分だけの世界を目指しながら、家庭では、「子供の世話は主に私がする」が73.0%、「仕事以外の時間は子供と過ごす」が73.4%、「子供と共に勉強し、成長過程の共有を楽しむ」が82.9%であるように、子供と過ごす時間でも手を抜きません。お母さんたちは女性一般に比べて海外旅行好き、外国の食品好きがやや多く、子供に違う世界を見せてあげたい、味わってみてほしい、視野の広い人間になってほしい、一緒に特別なメモリアルを作りたいなどの思いが含まれているのでしょうか。

「辣妈」の賢い買い物術と「父嬰消費市場」

仕事と育児を両立しているお母さんは常に時間不足を感じています。子供と一緒に過ごす時間を増やすためには自分のレジャー時間や家事などをする時間を減らすしかありません。「時間が節約できる物になら、お金を多く払っても価値がある」と思う母親が71.8%(女性平均56.5%)、「普段は何かを本当に必要とする時だけ買い物に行く」が65.1%(女性平均42.3%)であり、いずれも女性平均を大きく上回ります。時間不足のお母さんには、短い空き時間を使ってどこからでも利用できるインターネットショッピングは都合のいい買い物手段ですが、お母さんたちがよく利用する時間帯が朝7 時台、お昼休みと夕方の5時から夜の10時までの間です【図表4】。午後と深夜に子供関連商品をお薦めしても効果が薄いことが想像できます。

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では、子供用品の種類によって店頭で買うかそれともネットで買うかの違いはあるのでしょうか。児童書や玩具のようなタイトルや品番が決まって、品質への心配がほぼ要らない商品は遠出して店で捜すよりもネットで買ったほうが楽です。食品や食器、薬など口に入れる物は似たような商品が多く、品質による被害が最も恐れられているので、自らお店に行って実物をよく調べた上で買ったほうが安心できるようで、薬は殊に顕著です。体の外側につける紙オムツや衣料・靴など、スキンケア用品は店頭でもネットでも買いますが、ブランドやデザインの多い児童服ではネット購入に少し軍配があがります【図表5】。

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前述のように、お母さんたちは海外旅行と海外の食品が好きなことがわかりました。インターネット間を使ってどこからでも利用できるインターネットショッピングは都合のいい買い物手段ですが、お母さんたちがよく利用する時間帯が朝7時台、お昼休みと夕方の5時から夜の10時までの間です【図表4】。

午後と深夜に子供関連商品をお薦めしても効果が薄いことが想像できます。

では、子供用品の種類によって店頭で買うかそれともネットで買うかの違いはあるのでしょうか。児童書や玩具のようなタイトルや品番が決まって、品質への心配がほぼ要らない商品は遠出して店で捜すよりもネットで買ったほうが楽です。食品や食器、薬など口に入れる物は似たような商品が多く、品質による被害が最も恐れられているので、自らお店に行って実物をよく調べた上で買ったほうが安心できるようで、薬は殊に顕著です。体の外側につける紙オムツや衣料・靴など、スキンケア用品は店頭でもネットでも買いますが、ブランドやデザインの多い児童服ではネット購入に少し軍配があがります【図表 5】。

前述のように、お母さんたちは海外旅行と海外の食品が好きなことがわかりました。インターネット用品を買うお父さんが 8 割近くに増えています【図表6】。

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中国最大のEC総合サイト「淘宝」が公表した2013年度の数値によると、男性による子供用品のネット取引決済金額が181億元(3,500億円相当)であり、女性の291億元には及ばないものの、子供用品を購入した男性が男性ネットショッピング利用者の44%を占め、2012年度に比べると12%も増えていることが、一昨年の中国EC市場の特徴のひとつとなっています。妊婦と乳幼児用品市場を指す伝統的な言葉である「母嬰消費市場」に因んで、「淘宝」が<「父嬰消費市場」が到来し、今時のいい「奶爸」を測る基準が「スポーツカーに乗れて、ショッピングカートも操れる」>と表現しました。「単独二子」政策の進展に合わせてスポーツカー(高級車を所有してレジャーを楽しむ)とショッピングカート(家事を進んで分担する)を両立させる「奶爸」が増え、「父嬰消費市場」の活性化・拡大が期待されています。

以上、2回にわたって中国での子育て事情をご紹介しました。

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