解剖中国市場 VOL.3 バーリンホウ ジョウリンホウ「80 后」と「90后」学歴・所得・メディア接触「中国の若者」7年の差

王 静秋
国際事業室
王 静秋
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※本記事は2015年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

今回は若者特集に合わせて中国の消費者データベースChina National Resident Survey(略称CNRS) を用いて、中国の若者をご紹介します。

中国の世代に関する社会研究は出生年度を10年刻みで行うのが一般的です。例えば1970年1月1日から1979年12月31日までに産まれた世代を「七〇后」、80年代に産まれた世代を「八〇后」、90年代に産まれた世代を「九〇后」と命名するように、産まれた年代で世代を分類します。本稿もこの分類法に倣います。

これから紹介するデータは、当社が取り扱っているCNRSの調査結果です。最新の2013年度と、当社が保有している最も古い2006年度(CNRSは1999年スタート)のデータを用いて「中国の若者」を比較してみたいと思います。2013年現在の若者として、14~23歳の「九〇后」が年齢幅といい話題性といい、最良の分析対象になると思います。「九〇后」との比較対象として「八〇后」を採用したいのですが、2006年当時の「八〇后」は17~26歳で年齢幅が異なります。そこで、年齢幅を揃えるために両年に共通の17~23歳を取り、更に下限を中国の成人年齢である18歳に引き上げました。世間一般に言う10歳刻みの「八〇后」「九〇后」と区別をつけるため、本稿の分析対象である現在の若者(2013年現在、1990年~1995年生れ、18~23歳)を「90 后」、一昔前の若者(2006年当時、1983年~1988年生れ、18~23歳)を「80后」と表記しました。

育った環境に大差

「80后」は改革開放と呼ばれる経済改革の初期に産まれました。改革開放の前に比べて中国経済の成長がかなり速まったとは言え、1983年の一人あたりのGDPは世界ランキングの122位(日本19位)、137カ国の中では下から数えて16番目、インドを下回っていました。この遅れた経済状況は20年ほどかけて緩やかに改善され、2003年頃からやっと高度成長期を迎えました。生活水準の劇的な変化を国民が感じ始めた時、大学まで進学することができた「80后」は、ちょうど新社会人となったばかりの時期で、給料が低く生活に余裕を感じられなかったのではないかと思います。「80后」より10年遅れて産まれた「90后」は中学生の頃から中国の経済が持続的に二桁の高度成長を遂げ、大学在学中の2010年にはGDPが世界2位、一人あたりのGDPが186カ国中の95位にまで躍進しました。「80 后」に比べて恵まれた経済環境の中で育ったことが分かります。

では、データで「80 后」と「90 后」が育った環境の違いを検証してみます。中国国家統計局が公表した都市部住民の一人あたり平均年間可処分所得を「80后」と「90后」のライフステージに合わせて計算した平均値が【図表1】で、それぞれの若者の親世代の可処分所得とします。親世代の一人あたり可処分所得は、小学校入学前の6年間では「90后」が「80后」の3倍以上、小学生以降では2倍以上となっています。また、2013年と2006年のCNRSデータで比べると、政府の所得倍増政策もあり、「90后」の平均世帯月収は8,452元で、「80 后」の2,639元の3倍に上っています。

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また、【図表2】に見られるように、「80后」と「90后」が暮らす世帯の住居と所有するいくつかの耐久財を比べても、2013年の所有率が2006年を軒並み大きく超えています。普及率が95%以上のテレビは薄型化、高機能化、複数台所有へと進化します。パソコンはほぼ1家に1台、タブレットPCも「90后」の家庭の20%が所有するようになりました。持ち家に次ぐ大きな買い物となる自家用車の所有率はまだ低いとは言え、7年で5倍に増えました。これらの所有率の上昇も、「90后」が暮らす家庭ではモノの環境が「80后」の当時より快適で豊かになったことを表しています。

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若者は高学歴化、家庭重視に

中国の現代史に大きな混乱の痕を残した「文化大革命」(1966年~1976年)の期間中、その前半は大学入試が完全に停止させられ、後半は少人数の推薦入学だけが許されるだけと、社会全体に学問不要論がはびこっていました。高校卒業生の大学入試が正式に再開されたのは1977年のことで、「80后」の親世代の間で学歴が再び脚光を浴び始め、「90后」の親世代が学歴をますます重要視するようになりました。調査データでわかるように、「80后」では短大以上の高等教育を受けた若者が4割ほどでしたが、「90后」になると6割近くに増えました【図表3】。男性が女性より多い中国ですが、大卒以上の若者の男女比が2006年の53.5:46.5から2013年には48.2:51.8と逆転しました【図表4】。最近の男性は早く就職して自立したい、女性はいい就職先が見つからなければ、とりあえず大学院に進むという傾向があると推測できます。

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「80后」は「一人っ子政策」が徹底して実施された後の初めての「一人っ子」世代で、親と祖父母たちに大事にされながら育ちました。第三次ベビーブームもありましたが、大学入学規模拡大の恩恵を 受けて比較的楽に大学に進学し、難なく卒業することができました。国が高度成長期に入ったお陰で、大手外資企業に就職することも夢ではなくなりました。しかし、順風満帆に過ごしてきた「80后」の新社会人を待ち受けていたのは、低賃金(2006年の正規雇用者の平均月収が1,575元)と物価・不動産価格の急上昇、結婚もなかなかすぐにはできないという辛い境遇でした。図表では示しませんが、職業観を見ると、正規雇用の若者の「仕事から大きな満足感を感じた」が10.9%で全体平均の12.3%を下回り、「いい収入を得るためなら、他の都市に転職することも厭わない」が56.8%で全体平均より16%も高くなっています。一方、「仕事に比べて家庭のほうがより大事」に賛同する若者は54.8%にとどまって全体平均を10ポイント下回り、家庭よりも生計の改善を優先しているということがわかる結果となっています。

「90后」が産まれた時は、経済改革の成果が既に現れ、生活水準が大きく高まりました。前述のように、より多くの「90后」が高等教育を受けられるようになりましたが、一方で、就職口は比例して増え続けることはなく、親世代と「80后」が国営企業の民営化で早期退職や転職を余儀なくされたことを多く見聞きしてきたため、就職難を危惧して早くちゃんとした仕事につきたいと考える「90后」が増えています。【図表5】に見られるように、2013年では若者に55.5%の正規雇用労働者がいて、2006年当時よりその割合が高くなっています。有職者が多くなり、かつ収入も「80后」当時の2倍以上(2013年の正規雇用者の平均月収が3,639元)に増えて、それに連れて結婚する若者も多くなり、「90后」の独身率が「80后」より6.4%低下しました【図表6】。「90后」の「私は家族と一緒にいるのが好き」が63.4%、「仕事に比べて家庭のほうがより大事」が61%と「80后」より1~2割高いデータもあり、「90后」は仕事でも家庭生活でも堅実な考えを持っていることがわかります。

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テレビからインターネットへ

若者が最もよく利用するメディアは、「80后」がテレビ、「90后」がインターネットであることが【図表7】に示されています。2006年当時の「80后」は1日あたり85.7%の人がテレビに接触し、費やした平均時間が148分に対し、2013年の「90后」のリーチは65%に低下、1日あたり平均81分間しかテレビを見ていません。現在の「90后」が「信息時代的優先体験者」(情報化時代の最初の経験世代)と呼ばれるように、彼らは幼い頃からインターネットに親しんできました。2013年には10人に1人の若者が毎日220分間もインターネットを利用していることがCNRSの調査で明らかになりました。

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では、「90后」のインターネットの利用状況にフォーカスしてみます。前述の通り、ほぼ1家に1台パソコンがあり、パソコンによるインターネットの利用率は94.5%ととても高くなっています【図表8】。若者はほぼ全員(98.5%)が携帯電話を持っているので、携帯電話・PDA によるインターネットの利用も85%あります。タブレットPCを含めたモバイルデバイスによるインターネット利用は、女性のほうが男性より多くなっています。ネットでの買い物経験では、全体平均利用率の35.5%に対して「90后」は50.2%、また、女性が55.8%と男性より11%多くなっています。男性がネットで最もよく買うのはファッション類、日用品とIT製品で、女性はファッション類、化粧品、日用品となります。1年間の買い物金額では、男性が4,143元で女性が3,515元、どちらも正規雇用労働者の1カ月分の収入を超えます。

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インターネット動画では、「90后」の視聴リーチが74.6%でテレビよりも高く、1日あたり平均50分間視聴、また、インターネットによる電子新聞の閲覧リーチが32.6%で紙の新聞と同じです。雑誌では、紙の雑誌をほぼ読まない「90后」ですが、4 人に1人(27.1%)が電子雑誌を読んでいます。

以上、現在の若者として2013年の18~23歳である「90后」と一昔前の若者である2006年の「80后」を取り上げて、7 年間の変化を時代背景を交えて両者のプロフィール、意識、メディア接触に注目して概観しました。

中国が二桁の経済成長をしていた数年前には、「中国は秒針で進む」と言われていましたが、最近はさすがに聞かれなくなりました。とは言うものの、7%台の経済成長を目標に経済活動が行われ、所得も2020年までに2010年比倍増という「所得倍増」計画も進行中です。「所得倍増」の恩恵は「90后」だけに及ぶものではありませんが、少なくとも「90后」は「80后」が就職した当時の低賃金を経験することなく職を得て生活している恵まれた世代であると言えます。

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