解剖中国市場 vol. 7 ディェンスーホーシャン シェイジュウチェンフゥー 電視河山、誰主沈浮

王 静秋
国際事業室
王 静秋
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※本記事は2015年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

前号に続き、中国各地でどんなチャンネルがよく見られているのか、どのテレビ局のパワーが最も強いのかを、毛沢東が詠った有名な詩「問蒼茫大地、誰主沈浮?」(蒼茫たる大地に問ふ、誰か沈浮をつかさどると)の一部を借りて今回のタイトルにします。

テレビ局のパワーバランス

前号でテレビ環境について述べたように、中国には全国放送の国家級テレビ局とローカル限定の省級、地級テレビ局があります。人々が生活する地域において、CCTV、教育チャンネル、 地元の省級局のチャンネル(地元の衛星局を含む)、地元の地級局のチャンネル、それから、他の省の衛星チャンネル、外国チャンネルなど様々な放送が見られます。テレビ局の強弱を判断するに当たって、先ず、テレビ局とチャンネルを分類しておく必要があります。ここでは、以下の4種類に分けます。

① CCTV(全国放送)

②地元の省級局(地元のみのローカル局)

③他省の衛星局(全国放送)

④教育局や地元の地級局、香港や外国のチャンネルをまとめたその他局(ローカル放送がメイン)

【図表1】は、2014年、テレビ視聴率調査の対象となっている30の省級区画における上記4種類のテレビ局を、占拠率でテレビ局の強弱を示したパワーバランスマップです。4種類のテレビ局の中で、①CCTVが強い地区をグレーで表示し、濃いほどCCTVが強いことを表します。②地元の省級局が強い地区は紫色で示し、濃いほど強いことを表します。実線で囲んだ白い地区は③他省の衛星局が最も好まれる地区で、斜線の入った2区画は④その他局もよく見られている地域です。

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この地図から次のことが分かります。西部のほぼ全域、華東と華南の西部、それに東北と華北の南部の約半数の14行政区画で、CCTVが他のテレビ局を抑えて最も高いシェアを持ち、CCTVが「半壁江山」、つまり天下の半分を占めています。地元省級局が強いことを示す紫色は、北京市から浙江省までの東部沿岸6地区と中南部の湖北、湖南、広東3省、それから東北の黒龍江省の計10区画に見られます。CCTVも地元の省級局も弱く、他省衛星局がシェアを取っているのは内蒙古(内モンゴル)から雲南省までの縦ラインに位置する6区画です。

以前、CCTVが唯一の全国放送であった時代、視聴率においてはほぼ中国全土を制覇していましたが、ローカルメディアの成長と衛星局の活躍によって、東部と中南部を中心とした地域が徐々にCCTVを離れ、地元または他省のローカル放送をよく見るように変わってきています。

では、CCTVの占拠率が最も高い寧夏自治区(【図表1】のNo.29)、地元のテレビ局が最も強い上海市(同No.9)、それから、その他局がよく視聴される広東省(同No.19)を例に、 それぞれの特徴を見てみます。

お堅い内容が好きな寧夏

寧夏は全国の行政区画の中で、面積が下から5番目、人口とGDPが下から3番目に小さい貧困の代表的な地域です。CCTVが52.6%、他省衛星局が40.7%とこの2つの放送が全体の93.3%のシェアを占め、地元のローカル局がいかに虚弱であるかが明らかです。占拠率の高い10チャンネルの内訳はCCTVが7チャンネル、他省衛星局が3チャンネルとなっています。テレビ番組のジャンルで見ると、ドラマ、ニュース、バラエティーに集中し、ドキュメンタリーやスポーツ、音楽があまり見られていないことが分かります。年度高視聴率Top30の番組では、CCTV総合チャンネルが上位の29本を占め、習近平主席の談話を放送した番組が11本も含まれる珍しいランキングで、CCTVの放送番組の中でも特に政府寄りの内容がよく見られているようです。

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海派文化最高の上海

上海は直轄市で省級待遇を受けています。都市GDP創出ランキングでは常に1位に君臨するだけに、テレビ局が所属する上海メディアグループ(SMG)もCCTVに次ぐ実力を持ち、14チャンネルを展開しています。2014年の平均占拠率は56.3%で、11チャンネルが上位を独占して、CCTVの占拠率を全国最低値の16.1%に押さえ込みました。【図表3】で1日の推移を見ると、深夜3時を除けば、常に30%超えでトップを走り、朝7時と夕方6時から7時では70%~80%の高率を示しています。年度高視聴率番組のTop30を全て上海のテレビ局が占めるほど、ニュース、生活情報、バラエティー、ドラマなどあらゆる番組ジャンルにおいて、独自の「海派(上海スタイル)文化」を基にした番組編成で、上海の視聴者をしっかり掴んでいます。

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大家族のような広東省

広東省の省級テレビ局は2014年4月の統合を経て、現在12チャンネルを持っています。

2014年の地元省級テレビ局の占拠率が38.7%とリードしていますが、【図表4】が示すように、ここ数年では、低下し続ける一方、CCTVと他省衛星局のシェアが拡大しています。その他局を「香港・外国放送」「地級ローカル局・他」に分けてみると、「香港・外国放送」は低下傾向で、「地級ローカル局・他」は伸びています。広東省は香港と共通の方言を有するため、広東省でしか見られない香港のチャンネルを好んで見るというイメージがあると思いますが、「香港・外国放送」の魅力が徐々に薄れていることがこれで分かります。広東省は省の合計GDP創出額が全国1位である富裕な地域で、省内の地級都市が21、地級ローカルテレビ局が60チャンネルもあるにぎやかな大家族のような視聴環境となっています。地級ローカル局は小規模でありながらも力が増しており、よりディープなローカル色を出しています。

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以上、代表的な3地区を例に、中国のテレビ局の勢力分布を簡単に紹介しました。中国国家新聞出版広電総局(放送・出版事業社を統轄する政府機関)の方針で、近年ローカルメディア局の統廃合が進められています。分散していた資金と人材を統合することによってローカルテレビ局の実力が増し、その結果CCTVの勢力が弱まっています。これから、【図表1】の地図上の紫色が増え、各地域の特徴がどんどん発揮されて、より多彩で生き生きとしたテレビ環境に変わっていくものと期待しています。

データ出典:CSM 社の全国視聴世帯基礎調査、視聴率調査

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