いまを生きるミドル女性の心を紐解く ―ミドル女性の心の「モヤモヤ」、わかっていますか

村田 玲子
ソリューション局 ひと研究所 f2ラボリーダー
村田 玲子
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※本記事は2017年に発刊したVR Digest に掲載されたものです。

f2ラボは、今期発足して約1年にわたり、ミドル女性の今を捉える活動を行ってきました。
 多様化がすすみ、とらえにくくなったといわれて久しいミドル女性ですが、さまざまなデータに触れ、女性たちに会い、会話をする中で、多様な彼女たちに共通するのは、「悩み多き日常であること」に気づかされました。
 悩みのない人間はいないとはいえ、ミドル女性たちのモヤモヤした気持ちを丁寧に理解することは、心を紐解くことになる。
f2ラボの活動がみなさまの課題解決の一助となるように、そしてミドル女性のライフスタイルがより良い方向に変わっていけるように。そのふたつを繋げられるような活動を目指します。

ミドル女性の日常は"モヤモヤフルネス"

 現在のミドル女性といえば、働くか働かないか、どう働くか、結婚するかしないか、子供はどうするかといった人生の選択のまっ只中。一人の女性の日常とすると、生活が変化したり、選択することが多く、戸惑いや葛藤の多い時期といえるでしょう。 何度かこのダイジェストの記事等を通じて紹介していますが、日本女性は男性と比べると、1.2倍ほど悩みやストレスが多く、特に、30-40代というミドル年代の女性が、最も悩みやストレスを強く感じて生活しているということがわかっています。(※1)

 その背景は、このようなミドル女性の置かれた環境の影響が大きく、本人も社会も過渡期にあることが一因と考えています。  f2ラボは、この「悩み多き日常=モヤモヤフルネス」を掘り下げ、気持ちや行動にどのような影響があるのかを理解することは、今のミドル女性を捉えるための新しい切り口になると考えています。

 今回は調査データや有識者にお話を伺ってきたことから明らかになったことを一部ご紹介いたします。

"大人の階段"を昇った、ミドル女性

 ミドル年代の特徴のひとつは、社会的な役割が増えることにあります。一般的に家族関係では、「娘」という立場から「妻」「母」「嫁」「親族」「地域」といった役割に広がり、職場では責任ある立場になる人もいるでしょう。調査データでも、F1(20-34歳)からF2(35-49歳)になると、役割の数が1つ増えることがわかりました。まさに"大人の階段昇る"です。

 気持ちの上でも、F1からF2になると「娘」以外の役割を求められていると感じる人がぐっと増しています【図表1】。

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 役割の違いをみると、役割や年代で受け止め方が違っています。F2でみると、「母」や「家事担当者」としての意識は高い一方、「妻」や「嫁」は弱めです。また同じ「母」でもF1とF2は、F3より意識が高いことがわかります。子供に手がかかる時期ということもありますが、その役割を引き受け、それなりに対応できるようになったかどうかといった「経験」や「慣れ」の問題も含まれそうです。つまり、ミドル女性のモヤモヤは、役割が増えたなかで、気持ちの上では役割を引き受け切れていないことにあるかもしれません。ちなみに、「娘」はF3が格段に意識が高くなっています。女性はひとつの役割が終わっても、次の役割バトンが回ってくるということがわかります【図表2】。

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「求められている」けれど 「うまくやれない」?!

 さて、F2に絞ってみると「求められている度」と「うまくやれている感」にギャップがあることがみえてきました。「妻」「母」「娘」は、どの役割も求められている度合いより、うまくやれている度合いが低く、特に「母」においてギャップが大きくなっています。さらに、「家事担当」や「母」にあたる人たちのうちの実に5割以上が、その役割を負担に感じていることも明らかになりました。改めて「家事が重い」「母が重い」と感じているが人が少なくないことがわかります【図表3】。

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 ミドル女性が抱くありたい自分像にも同様に意識のギャップが見え隠れしています。今回の調査では、女性の年齢問わず「穏やか」で「思いやりのある」女性が好ましく思われていますが、ギャップの大きさに着目すると「自信がある」「何でもこなせる」「前向きな」といったワードが上位にあがります。分析途中ではありますが、「穏やか」で「思いやりのある」女性=ある種普遍的なサポート役の女性像と自立した女性像の両方を理想と感じるために、女性たち自身の中にダブルスタンダードが生まれている可能性があるのではないか。ここにもモヤモヤ源が潜んでいそうです。

「体の変化が大きくなる時期」でも、 「自分は後回し」、本当にこのままで良いの?

 今回の調査を通じて、ミドル女性特有の悩みをデータ化しようとしていますが、とりわけ「加齢による身体の変化に戸惑いを感じる」と答えたF2女性が多いことがわかりました。美的な変化もありますが、体力の低下や体調の不調に関わることが多そうです。フィジカルの面でも過渡期にあることがミドル女性たちのモヤモヤ源になっている。一方で「自分のことはいつも後回しになっている」人も少なくないのです。

 新たに役割を引き受け、負担を感じながらも、求められることに応えようとするが、あまりうまくやれていると思えない。自分の体の変化には追いつけないまま、無理を重ねている。そんな状態でも自分自身を優先できない、しない。それでも自分は「穏やかで」「思いやりがある」女性でいたいし、そのうえ「自信があって」「なんでもこなせる」女性にもなりたい。

 いかがでしょうか。ミドル女性のモヤモヤフルネスの正体が少し見えてきた気がしませんか。多かれ少なかれ今のミドル女性に共通したこの状況は女性をめぐる根深い課題ともいえます。そろそろこういったことに一石を投じることはできないものでしょうか。どうすればこの状況を変えられるのか、このような状況におかれた彼女たちをサポートできないのか。モヤモヤフルネスの彼女たちをより深く理解し寄り添うことで、マーケティング的なアプローチから少しでも暮らしに変化を起こすことはできないか。F2ラボは今、このことを皆様と一緒に考えていくことができる方法を模索しています。

ライフスタイルに内側から働きかける

 一例として、マーケティングでの「コーピング(※2)の価値」を検討しています。モヤモヤを抱えた気分を少しでも和らげたり変えられるということは、心理的な負担を減らすということに繋がります。身近な例ではここ数年静かなブームになっている「大人の塗り絵」は、塗る作業が女性たちのモヤモヤを一時でも鎮めているといわれています。あるいは、行動の捉え方を変えることは継続的な行動であればあるほど効果は大きいでしょう。例えば、市場を拡大している「食材キット」は、手間がかからない時短メリットもありますが、今日の献立は何にしよう、あれ買ったかな、といったように頭を悩まさなくても済む気持ちの上での負担感の軽減や、料理が苦手な夫にも食事作りを任せられるといった、役割の上での負担感の軽減も評価されているといわれています。また、近年急速に市場を拡大したフレグランス洗剤は、単に嫌な匂いを消すだけでなく、家事そのものを行う気分に働きかけたということが影響しているかもしれません。機能は同じだとしても、「汚れがよく落ちる」だけでなく「洗う行為自体が少しでも心地よいものになること」は、モヤモヤフルネスなミドル女性にとっては、大きな価値になっている可能性があります。

 このような積み重ねで暮らしの中に良い変化を与えていける可能性をもっと考えていけたら。企業視点で考えれば、仮に機能は同じでも、ミドル女性にとっての日々の心の軽さに繋がるような"情緒価値"がきちんと届けば、商品選択のうえで差別化に繋がるかもしれません。昨年末大きな話題となったドラマ「逃げ恥」は、主題のひとつが今の女性のおかれている葛藤にありました。キャスティングや脚本、ダンスといった話題づくりの仕掛けもさることながら、なによりも女性たちが日々感じているモヤモヤをしっかりと描くテーマであり、一つひとつのセリフが共感されたからこそ、あれだけ大きくミドル女性たちの支持が得られた好例だと思われます。f2ラボはこのようなコミュニケーション全般の「捉え方」と「届け方」の理解を深めていくことで、お客様の課題を解決する一助となれたらと考え、引き続き多角的な視点で研究を進めていきたいと思います。

※1 データ出典 厚生労働省 国民生活基礎調査(2013年)

※2 「コーピング」とは、ストレス要因やそれがもたらす感情に働きかけてストレスを除去したり緩和すること (コトバンクより)

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