US Media Hot News ~ネット犯罪の急増~

VRDigest編集部
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※本記事は2000年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

ネット社会の抱える危うさ

 先日、2月の初めに米ポータル大手の「ヤフー」やオークション大手「イーベイ」などの大手サイトを狙って一度に大量のデータを送り込み、"サービス拒否のDOS"(Denial Of Service)と呼ばれる機能麻捧を引き起こした犯人が逮挿されました。「マフィアボーイ」と名乗るモントリオールに住む15歳の少年で、以前から目をつけられていた悪質なハッカー(侵入者)です。カナダの警察隊は逮描の理由を"2度にわたるCNN攻撃"としており、CNN以外への犯行や少年以外の犯人がいたかについては渡査中ですが、いずれにしても破壊目当てのいたずらだったようです。

 今回の事件はメディアで大々的に騒がれた割にダメージが小さく、被害は書籍の販売やニュース配信が一時停止された程度で済みました。しかし今日、商業、医療、教育、政治とあらゆる場面にインターネットの利用が浸透しており、今後インターネットがわれわれの生命線となった日に受ける打撃の大きさは計り知れず、ネットに依存した社会の抱える危うさを今回の事件は提示してくれました。

1999年に米国で起きたネット犯罪による損害は、約100億ドル(約1兆円)に膨らみました。同年に米企業がネット上の安全保障に費やした金額は40億ドルを超え、2003年には83債ドルとほぼ倍増する見込みです。「ハッキング」と呼ばれるサイトへの違法な侵入行為は、ヤフーのような商業サイトをはじめ、米国家安全保障局や米航空宇宙局(NASA)など国家機密を預かる政府サイトにまで及んでいます。また、ネット上で詐欺行為を働く犯罪も多発し、'99年に裁判所に持ち込まれた訴訟の数は61件と大きな社会問題に発展しています。

 ネット犯罪の攻撃ツールには、今回の"サービス拒否のDOS"の他に、ハードウエアやソフトウエアの弱点を探って悪事に利用する"スキャン"やユーザーが知らないうちに破壊プログラムをソフトに組み込む"トロイの木馬"、偽のEメール・アドレスやウェブサイトを設けてユーザーのクレジットカード情報などを盗む"スプーフィング'などがあります。中には、会社の従業員から世間話を装って社用コンピューターのパスワードを聞き出すなどネットワークを利用しない方法もあり、ハッカーの手練

手管もさるものです。

 ハッカーの種類も、単なるお遊びの「悪質ハッカー」から金銭目当ての「クラッカー」、ネット依存への警鐘を鳴らす「ネット原理テロ」や国家機密を盗もうとする「外国人スパイ」までと多種多様です。

 インターネットはオープンなネットワークだけに利用が自由自在で、ネット犯罪はいまや一大産業と呼べるほどまでに増えています。規模も急速なスピードで拡大しており、2月のDOS攻撃の大きさに驚いた声も少なくありません。犯罪ツールを無料で提供するサイトさえ出現し、最近では「Tribal」や「Tribal Flood Network」というDOSツールが発見されました。'98年に騒ぎを起こした「スマーフ」よりも被壊力が強く、遠隔操作が簡単で、素人でも容易にインターネットからダウンロードできるようです。ネット犯罪は悪意の無いユーザーのコンピューターまで取り込んで、益々増殖する兆しです。

 ハッカーサイドの技術進歩に加え、皮肉なことにインターネットのインフラの改善もネット攻撃の間口を広げています。現在、米国では高速ケーブルモデムを利用する家庭は135万世帯ありますが、2003年には900万世帯に増える見込みです。また、デジタル回線(DSL)の利用者数も同じく900万世帯まで増えると予想されており、常時回線をつないでおける環境が整います。この状態では、これまでインターネットへ接続するのに電話回線を毎回ダイヤルすることで防げていたハッカーの一部を素通りさせてしまうことになります。もちろん、外部からの侵入を阻止する「ファイア・ウォール」を築けばいいのですが、100%導入しなければすき間だらけです。インターネット電話やウェブTVの到来はすぐそこまで来ており、これからは回線を常時接続しておく生活が主流になると思われます。

 来たるべきネット時代に備えて、個人、企業、政府が協力し合って犯罪に立ち向かうことが重要です。個人で対処出来ることは、常に最新版のウイルス防止ソフトを使用したり、パスワードを頻繁に変えることなどです。政府レベルでは、ネット犯罪を取り締まる規制や違反した場合の罰則の制定が急がれています。米政府の取り組みは真剣で、今回のDOS騒ぎでは米連邦捜査局(FBI)のトップ捜査官が動き出したほどでした。米連邦取引委員会はネット犯罪を撲滅するための予算拡大を提案し、対応策を強化するところです。

 ネット経済の大黒柱となる企業は一層の協力が必要です。米国では、ネット攻撃を受けた企業の約6割が、攻撃の事実を隠しているとの推定があります。隠す理由としては、受けた被害の大きさより、自社の企業イメージの低下や信頼の喪失を恐れているからであると言われています。しかし、こうした対処法では犯罪集団を増長させるだけでしょう。また、センセーショナルな報道もハッカーの自尊心をくすぐる結果になるかも知れず、メディア各社の報道の仕方にも難しい問題が残されています。

「未完の大器」と称されるインターネットは、社会の仕組みや構造すら変える無限の可能性を秘める一方で、そこで働かれる犯罪も限りなく生み出しています。犯罪を完全に封じこめることはできないものの、被害を未然に防いだり、ダメージを最小限に食い止めるために、個人・企業・政府が一体となってセキュリティを強化していく必要がありそうです。

Video Research USA, Inc.

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