クーポン・プロモーションの理論と実際 5

VRDigest編集部
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※本記事は1988年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

この稿の第1号('88、1月号)で、クーポンが生まれた背景は、プリントメディアをより強力なメディアにするためのテクニックとして開発されたことを紹介した。即ち、広告にクーポンが付くことにより、消費者は広告に注意して、興味を持って読むであろうということである。正にクーポンの本質はここにある。広告効果を語る際、よくAIDMA理論が引用されるが、インパクトを強め、商品の特徴を理解させ、買うという動機付けを与える、AIDMAをより強くチューンナップしたものがクーポン広告の真骨頂といえる。

◆店頭を中心としたクーポン・プロモーションについて

 日本のクーポンは、新聞、雑誌のマスメディアがクーポン広告を禁じていたため、店頭を中心としたプロモーションが主流となってきた。その代表例が「なるはど!ザ・クーポン」であろう。このシステム名の由来はフジテレビの高視聴率番組「なるはど!ザ・ワールド」から来ていることは周知であろう。このシステムを運営しているのがサンケイグループの企業であり、このシステムをよく利用している企業が同番組の主要スポンサーとなっている。TVメディアとの合体を図ったシステムである。しかし、「なるはど!ザ・クーポン」の展開はマスを対象に展開を図らず、単独店の来店客という「点」を対象とした。

このシステムの概略を説明すると次のようになる。

 〇「なるほど!ザ・クーポン」というクーポン券発行端末機を店に貸し与える。

 〇利用希望店は月12万円のリース料で導入する。

 〇利用希望店の近くには一定範囲内で他店に同システムの導入を図らない。

 〇利用希望客は端末機より希望の商品のクーポン券を発行、同商品を買いレジに提出するとクーポンの額面が値引かれる。

(利用公方客が端末の操作を行うことが原則であるが、実際は店の人が端末を利用し発券し、発行したクーポン券を商品の所においてあるのが実情)

 〇クリアリング・フィーは20円、そのうち7円を店に取り扱い手数料として支払う。

 〇メーカーの同システム参加費の基準は不明

 大体、以上であるが、注意すべきは店側がリース料を支払い導入している点で、店の集客策用になっている点である。また、それ故導入店の近くには同システムが導入でき得ないことである。自店で導入すれば競合店では導入できない。自店で導入しないと競合店で導入する可能性があるという勧誘は、スタンプ方式に似ていよう。そのことは別にして、このクーポン・プロモーションの場合、メーカー側に立ってみた時、幾つかの問題点が指摘されている。最大の問題点は、導入店だけのプロモーションでマスのプロモーションと成り得ない点であるが、そのはかに次のようなことがあげられる。

 ① 利用客自身が端末から発券しない。

 ② プロモーション展開に積極的な店と消極的な店とがはっきりしている。

 ⑨ 利用枚数が次第に増え予算が膨む。

 ④ 店によってはリベートをメーカーに要求することによってクーポン商品として扱っている。一方、経費が膨むためクーポンから降りようとすると店頭から商品の締め出しを通告される場合がある(システム提供社の意図から離れ、システム自体が-人歩きをしているケースといえる)。

などである。②は月12万円のリース料を払って集客策用として導入していることに対する店長のコスト意識の強弱から出ているもので、④はその意識の強さが更に強烈になって出てきたものである。積極的になることは店の協調プロモーションが積極的になる可能性があり、歓迎すべきものであるが、④になると、メーカー・クーポンの本質から逸脱した行為で残念なことである。③は本来なら利用枚数が増えるということは喜ばしいことであるが問題はその中味である。利用客自身がクーポンを意識して利用したのであれば問題はない。また、その商品がその店で確実にシェアアップをしていればやはり問題はない。しかし、後者の場合、販売量は同じでクーポンの利用枚数だけが増えているのであれば問題で、あまりにも販売量に対するクーポンの利用枚数が増えてきた場合は、これはクーポン・プロモーションではなく、値引き行為と同じといえる。

 筆者はクーポンの本質を考えた時、①のことも含め、特に前者を問題にしたい。そもそもこのシステムの本質はどこにあったのか。消費者が「なるほど!ザ・クーポン」の端末機に向い、そのメニューの中から希望商品を選択し、自身で発券するその過程、行為に本質があった筈で、その過程、行為から生まれてくるクーポン商品に対するマインドこそクーポン・プロモーションそのものの本質なのである。

 筆者はクーポンの場合、店頭クーポンには否定的である。その一例として「なるほど!ザ・クーポン」の問題点を取り上げたが、クーポンの本質を考えた時、店頭クーポンにもう一つ問題がある。それは、クーポンを目にする、或は手にする状況設定がマス・クーポンとは大きく違う点である。クーポンは、その商品に対するマインドが得られる余裕を与えなければならない。もち論店頭クーポンが全て悪いというものではない。例えばマネキンなど店内で他のプロモーションと協調させることによりマインドを与えることは可能である。

クーポンというと、即クーポンによりどれだけ売れるかということを問題にする人がいる。この人々は、安いコストでクーポンを発行し、買いたいと思っている人に無制限に渡すことのできる店頭クーポンに傾きがちである。失礼な言い方にはなるがクーポンで売れたという満足、実績を得たいためであろう。しかし、問題はクーポンで買った人の中味である。単なる値引きハンターが利用したのであれば、クーポンで買わせる必要はない。その場合、むしろ多く売りたいのであれば、全員が享受できる値引き政策のほうが妥当といえる。

クーポンと値引き、その違いを整理し、数多くあるクーポンテクニックの中から、戟略に最も合致したテクニックを採用することが肝要である。

                                (クーポン企画室 大木眞熙)

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