ニューメディア時代における放送に関する懇談会(放送政策懇談会)報告について

VRDigest編集部
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放送は、これまで、代表的なマス・メディアとして、国民生活に不可欠な情報を提供すること等を通じて大きな社会・文化的役割を果たしてきたところであり、進展しつつある高度情報化社会においても、より一層重要な役割を果たしていくことが期待されている。

 一方、国民の放送ニーズの高度化・多様化、急速な科学技術の進歩に伴う各種ニューメディアの登場、さらには、国際化の進展、社会経済構造の変化等、近年、放遭および放送を取り巻く環境は大きく変化しつつある。

 このため、いわゆるニューメディア時代における放送の役割について長期展望を行うとともに、その成果を踏まえつつ、国民の多様化する要望にこたえうる放送の在り方について検討を行い、時代に即応した放送政策に資することを目的として、昭和60年5月に、「ニューメディア時代における放送に関する懇談会(放送政策懇談会)」を設置、各界の有識者(吉国一郎元内閣法制局長官をはじめ、田丸秀治(株)電通前社長、中川順 民放連会長、盛田昭夫ソニー(株)会長など15名で構成)メンバーにより、幅広く様々な角度から審議し、62年4月初めに郵政大臣に報告された。

 本報告では、① 現行放送法制及び放送の現状について分析し、② 今後における社会環境の変化の動向およびそうした中で放送に期待される役割を見通し、③ 以上を踏まえて、放送概念の在り方、放送体制の在り方、事業主体の在り方、免許制度の在り方、公共放送の在り方、放送番組の在り方等今後における放送政策の課題と方向性について幅広く提言を行っている。そこで本誌にその概要を抜すいし紹介することにした。

    

放送政策の課題と方向性

放送概念

 メディアの多様化、融合化が進んでいる状況において払放送メディアに対する規律根拠である、使用する電波の有限希少性および社会的、文化的影響力において、様々なバリエーションを有するメディアが、以前の典型的な放送分野の周辺に出現してきている。そしてそれらが、放送とは規律の態様を全く異にする一般電気通信分野との間に分布している。このような現状においては、各メディアの特性に応じ、高度な規律を課すべきメディアと緩やかな規律を課すべきメディアをきめ細かく整理することが新たな行政課題となっている。

放送体制

(1)新たな放送体制と各メディアの基本的在り方

  今後、次のような体制を整備していくことが適当である。

 ア 総合的な放送と各種専門的な放送が多元化された形で並行的に充実・発展していくことが可能な体制

 イ 利用の随時性・選択性・記録性等を備えた放送や高画質化高音質化された放送が実現される体制

 ウ 種々のレベルのエリア内およびエリア相互間での各種番組・情報の提供、享受が可能となり、情報の地域間格差の是正が図られる体制

 エ これらを実現するため、当面、次のとおり各メディアの普及を進める必要がある。

 (ア)テレビジョン放送およびFM放送については、視聴可能な放送の数における地域間格差をできる限り解消する方向で普及を進める。

 (イ)辺地難視聴および都市受信障害の解消を図る。

 (ウ)衛星放送およびCATVを普及・充実させ、全国レベルおよび地域コミュニティーレベルにおける情報提供機能を強化するとともに、専門放送のニーズに対応できるようにする。

 (エ)県域よりも小さい、例えば、市町村単位程度を放送対象地域とするFM等の導入の可能性について検討する。

 (オ)放送の新たな財源方式として有料方式の導入を図る。

 (カ)国際放送の拡充、国際番組交流の活性化等を進める。

 (キ)利用の随時性および選択性、情報の専門性等を有する多重放送を、地上系及び衛星系のメディアに導入する。

 (ク)衛星放送、CATV等により、ハイビジョン、PCM音声放送といった高音質、高画質の放送や静止画放送等の新しい放送サービスを可能とする。

 (ケ)テレビジョン放送のEDTV(高画質化テレビ)化、中波放送のステレオ化等の検討を進める。

(2)公共放送と民間放送との併存

  公共放送の存在意義としては、言論報道の多元性の確保、放送番組の質的水準の確保、その他民間放送では十分達成されない分野での放送を通じての公共の福祉の実現等が考えられる。

  他方、民間放送の存在意義としては、言論報道の多元性の確保、地域社会への貢献、適正な競争環境の確保、広告媒体機能の発揮等があると考えられる。

  これらの存在意義にかんがみ、今後とも公共放送と民間放送の両者を併存させ、それぞれの特性を発揮させていくことが必要である。

(3)チャンネルプランについて

チャンネルプランは、放送政策の内容を周波数の割当計画という形で、示したものであり、免許申請の審査の際の要件になる意味でも、重要な意義を持つものであるのでチャンネルプランの策定の根拠および基本理念を法定化すること、並びにその策定・変更を電波監理審議会の必要的諮問事項にすることが望ましい。

  また、周波数の割当ては、国民の将来の電波利用の可能性がより明らかになるよう計画的に行うべきである。

(4)放送の対象地域について

  チャンネルプラン上、放送の対象地域として、テレビについて、広域圏、県域および2県1地域が、また、FMについて、県域および2県1地域が、それぞれ明らかにされている。これらの放送対象地域の設定は、わが国の放送の発展において一定の役割を果たしてきたが、今後、テレビ、FMにおける受信格差を早期に是正する等のため、従来の放送対象地域についての考え方を見直すことも必要と考えられる。

事業主体の在り方

(1)事業主体のとらえ方

  現行放送法制では、放送の事業主体たる放送事業者は、「電波法の規定により放送局の免許を受けた者」と定義され、放送施設(ハード)の責任主体であるとともに、放送番組(ソフト)の責任主体とされている(ハードとソフトの-致)が、放送ないし放送周辺メディアが種々登場しつつあり、放送と電気通信の融合が指摘される現状において、ハードとソフトの分離という新たな考え方についても検討する余地がある。

  ハードとソフトの分離は、ニューメディアへの参入を容易化するものとして注目されるが、ソフト事業者に対する直接的規律の必要性を検討しなければならない等問題も多いことから、今後におけるニューメディアの実用化とその利用形態の検討、免許制度についての検討等とのかかわりの中で、十分慎重に検討していくべきものと考える。

(2)マス・メディアの集中排除原則について

 ア マス・メディア集中排除原則は、有限希少な電波をできるだけ多数の者に開放するとともに、それを用いて放送を行う一般放送事業者が、独立した言論報道機関としてできるだけ多数参入し、自由な言論報道市場が形成伸長されることを制度的に確保しようとするものである。

 イ こうした電波の公平な利用とそれによる自由な言論報道市場形成の要請は、放送メディアが有限希少な電波を用い、かつ世論形成等に無視することのできない社会的影響力を有するものである限り存在するものであり、今後ともマス・メディアの集中排除という理念を維持することが必要である。

 ウ しかしながら、現行のマス・メディアの集中排除原則は、放送メディアが、中波、短波およびテレビジョンの3種類のみであった時代に確立されたものであり、放送ないし放送周辺メディアを通じて情報提供手段が多様化し、大衆情報の独占供給状態が生じる可能性が相対的に減少している現状においては、その内容を見直し、メディア特性等を考慮した新たな原則を策定することが適当と考えられる。

 エ また、地域間の情報格差是正のための地上テレビジョン放送の多局化および民放FM放送の早期全国普及、並びにニューメディアの実用化および普及等の課題を解決するためには、事業主体の経営の安定が不可欠であるが、このこととマス・メディアの集中排除の要請との均衡、調和を図る必要が生じており、このような観点からも現行原則の内容を見直す必要がある。

(3)ネットワークについて

   わが国の放送制度においては、民間放送は地域社会に密着した役割を期待されているが、実体においてはネットワークがかなり根づいている。そこで、今後は、ネットワークを基本的に認知しつつも、ローカル局のキー局への主体性確保等を図ることとし、制度的手当を行うか否かは、さらに、検討していく必要がある。

免許制度

(1)免許の手続.基準

   民間放送の親局を新たに免許する場合の手続申、免許申請の受理期間の設定について法律に根拠規定を置き、あわせて、根本基準第10条で定められている競願処理の実施について、法律に格上げして規定するとともに、その手続の公正を図る等の措置をとることとすべきである。

   また、現行電波法における免許の審査基準は、他の一般無線局に係るものと共通であり、放送事業を行う無線局としての放送局の特殊性が十分反映されたものになっていない。その結果事業計画実施の確実性、法人設立の確実性等実質的に重要な事項が根本基準(省令)等の下位規範に委ねられている。

  したがって、これらを法律等現在より上位の規範に格上げして規定することとすべきである。

(2)免許の有効期間、再免許制度の在り方

   放送局の免許の有効期間については、放送事業の発展定着の状況、諸外国の動向等を勘案し、これを延長する方向で見直すべきである。また放送局の再免許の性格については、放送事業の継続的安定性に配慮し、新たな免許でなく、免許の更新という考え方をとることを検討する必要がある。

   さらに、免許の審査基準は、免許時だけでなく、免許後の事業活動においても維持されるべき要件であることを制度的に明確にする必要がある。

(3)事業免許制について

 現行のハード・ソフトー致の施設免許が、単なる施設についての技術的側面からのチェックのみでなく、当該施設を用いて事業を行うことを考慮したものとなっている状況において、これに加えて事業免許制を導入する必要性は現在のところ認められない。しかしながら、事業免許制としては現行の無線局への施設免許を吸収した形のものも考えられ・これについては、放送以外の分野における無線局概念を中心とした免許制皮との整合性等の検討を要するところである。

放送番組の在り方

(1)メディアの多様化と番組規律の在り方

   放送メディアが量的に増大するとともに質的にも多様化しつつある現状において・次のとおり、放送番組に関する規律についても従来の一律的な規律を見直すことが適当と考える。

 ア テレビジョン放送および中波放送を除き、番組間の調和規定の適用を除外することが適当である。

 イ 番組編集準則については、テレビ、ラジオにあっては現行の番組編集準則を維持し、また、文字放送等の多重放送にあってはメディア特性に応じて弾力的に考えていく方向でその在り方を引き続き検討すべきである。

 ウ 番組審議会については、メディア特性および社会的・文化的影響力が多様化してきている現状からみて、現行の番組審議会に関する規律をすべての放送メディアについて一律に適用することは改めるべきである。

   なお、番組審議会については、各放送事業者において、委員の氏名、活動状況の公表等その活性化のための一層の努力をしていく必要が認められる。

(2)放送番組の質的向上について

 ア 放送の持つ大きな社会的・文化的影響力からみて、放送番組の質いかんは国民の精神生活ひいては一国の文化水準を左右する極めて重要な問題であり、放送事業者は、番組審議会の活性化、社内考査機能の強化等の放送番組の質的向上のための施策に、様々な角度から取り組んでいくことが期待される。

 イ 放送メディアの量的拡大に対応して良質な放送番組が円滑に開発・供給されるために放送番組制作環境の整備、放送番組の文化財としての保存体制の確立(映像ライブラリー構想)等の体制の整備が必要である。

経営財源の在り方

(1)メディアの多様化に応じた経営財源の在り方

   今後、わが国の放送体制が、既に述べたような新たな体制へ円滑に移行していくためには、既存メディア、ニューメディアを含めたわが国の放送全体を支える経営基盤の拡大可能性を確保することが不可欠であり、民間放送の新たな経営財源として有料方式を導入することが必要となってくる。

(2)有料方式の導入について

 ア 有料方式による放送にあっては、放送事業者が、差別的取扱いや、不公正な契約条件の提示をすることがあってはならないものであり、公衆の権利保護の観点から、例えば、差別的取扱いの禁止(サービスの提供義務)、公正な料金水準の確保等のための契約約款の認可や届出あるいは改善命令等について法的手当をすることが適当である。

 イ 有料方式の導入分野としては、衛星放送やCATVが考えられるが、衛星放送を行う民放については、その普及の必要性から、当面、有料方式と広告料方式を併存させた財源方式とするのが適当である。

新たな放送体制実現のための具体的方策

(1)基幹的情報の地域間格差是正のための方策

 ア テレビジョン放送およびFM放送に関する全国的な受信格差の是正は、国民の情報ニーズがますます高度化・多様化してきている今日、重要な行政課題となっており、できるだけ早期に実現していく必要がある。そのためには次のように考える。

 (ア)既に周波数を割り当て、いまだに免許に至っていない地域については、それぞれの地域の経済力、周波数事情等を十分勘案の上、民間放送の在り方時関する従来の要件を満たす形で新局を開設することが可能と認められたものである。今後できるだけ早期に、新局が開設されることとなるよう努めるべきである。

 (イ)放送テレビ全国4液化および民放FM全国普及を実現するため、今後、新たな周波数の割当てを要する地域は、従来の考え方によるのみでは、放送事業存立の基盤となる経済力や周波数事情などの点で、新局開設の条件が整いにくく、早期に周波数割当てを実現することが困難な場合がある。このような場合には、新局設立についての新しい考え方として、事業主体、放送対象地域等に関する要件の緩和(支店方式、中継局方式、相互乗入れ方式、1社2波方式等の導入)を検討すべきである。

 イ アの新しい考え方を適用する必要が認められる場合においても、その内容いかんによっては、従来の放送秩序が大きく変革される可能性があり、その影響力も大きいことから、慎重に検討することを要し、特に当該地域におけるマス・メディアの集中が過度に進むことのないようにすること、全国的レベルにおけるキー局等の巨大化が過度に進むことのないようにすること等に十分配慮する必要がある。

 ウ 民放FMについては、放送内容のローカル性が比較的少ないこと等から、2波目以降の普及に当たっては、放送対象地域の広域化を積極的に検討すべきである。

(2)難視聴の解消等

テレビの辺地難視聴および都市受信障害の解消並びに中波放送の外国混信については、それぞれに対応した適切な措置を講じるべきである。

(3)多重放送の適正利用

多重放送を円滑に普及させていくためには、経営基盤の確保等の条件整備を図る必要があり、その利用方法および事業主体の在り方については、マス・メディア集中排除の理念が損なわれない範囲で、規制緩和を図る等により、きめ細かい行政対応を行うようにしていく必要がある。多重放送の具体的な利用形態については、当面、次のとおり対処することが適当と考える。

 ア テレビジョン音声多重放送については、中波単営社等への影響等にかんがみ、当面、災害に関する情報を除いて 補完番組の実施のみを可能としている現行の方針を維持し、音声メディア全体の動向等を見ながら、今後更に検討を続けていくことが適当である。

 イ 文字放送については、その社会的・文化的影響力がテレビ・ラジオに比べて少なく、その媒体力からみて事業化が必ずしも容易でないと認められること等から、マス・メディア集中排 除の観点から定めている現行の第三者の要件を緩和するとともに、放送対象地域の在り方についても見直すことが適当である。

 ウ FM多重放送については、その伝達し得る情報量等からみて、FM社の経営判断により、その責任において、自社利用と第三者利用のいずれかあるいは双方を同時に実施できるような制度を基本とすることにより、その円滑な普及発展を期するのが適当である。

(4)衛星放送の普及策

衛星放送は、今後におけるわが国の放送体制の-翼を担う重要なメディアとして普及・発展することが期待されているので、今後、衛星の信頼性確保のための技術開発・受信設備の低廉化・小型化、魅力ある番組の制作体制確立のための環境整備、ハイビジョン等衛星を利用した新たなサービスの早期実用化有料方式の円滑な導入のための環境整備等が必要である。

(5)CATVの普及策

CATVは、大量の伝送能力を有すること、地域オリエンティドなメディアであること等の特性を有しており、近年、各地において新たなCATVの事業計画が進められている。このような新たなCATVの展開は、地域社会の情報化を促進し、また高度化・多様化する国民の情報ニーズに応えうるものであり、CATV網の整備・充実、番組供給の円滑化、これらを促進するための金融税制上の支援措置の実施、各種ニューメディア実用化のための技術基準の早期確立等が求められている。

放送技術開発体制の整備

 技術開発の新たな展開の中で、大規模プロジェクト等に対応可能な技術開発体制の確立に努めるとともに、国民のニーズが多様化する中で技術開発の成果を早期に国民に還元するため、一定の範囲での規格の弾力化について検討することが必要である。

国際化への対応

(1)国際放送の充実

国際化の進展に伴い、国際放送の役割は、ますます大きくなってきており、その充実強化は、重要な政策課題となっている。そのため、関係者間において、国際放送の送信体制の強化、財源の確保等を中心に早急に対策を講じることが望ましい。

(2)映像メディアによる国際理解の促進等

国際化の進展の中で、今後、短波による国際放送に加え、映像を伴う放送番組等の発信機能、交流機能の充実による国際理解の促進を図っていく必要性が指摘されているところであり、今後関係者間で多角的に問題点の検討を進め、その体制作りを進めていくことが必要である。

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