「連続ドラマ」の現在

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※本記事は2000年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

-"ドラマ離れ"の実態は-

 最近、民放各局の「連続ドラマ」について、人気が低下、視聴者のドラマ離れ、といった話題を新聞や雑誌で目にする事が多くなりました。そういった指摘は昨年7~9月期頃から徐々にみられましたが、続く10~12月期においても、オンエア前から非常に注目を集めていた作品が多かったにもかかわらず、平均20%を超える番組が1番組もないという結果に終わった事が、そうした論調に更に拍車をかけている様です。

 そこで、今回は前クール(10~12月期)を中心に、1998~99年の民放各局の連続ドラマの視聴状況について見てみたいと思います。

尚、データは注釈がない限り、関東地区データを基にしています。(今回対象とする「連続ドラマ」とは、民放各局制作で、20~23時の間に1クール以上放送され、基本的にストーリーや出演者が連続するドラマとしました。また、時代劇・海外ドラマは除いてあります。)

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連続ドラマの世帯視聴率の動向

 まず、実際に連続ドラマの視聴率は、どのように変化しているのでしょうか。'99年各クールの全連続ドラマの平均視聴率を前年同期と比較してみると(グラフ1)、1~3月期、4~6月期ではほぼ同レベルの視聴率をマークしています。しかし、7~9月は前年を大きく下回っており、更に直近の'99年10~12月でも再び前年レベルを割る状況となっているなど、確かに昨年後半から視聴率が低下傾向にある状況が認められます。

 次に、各ドラマの平均視聴率をランク分けし、それぞれの本数を見てみると(表1)、まず、'99年10~12月期に20%を超えるドラマが1本もない点が目につきます。また、7~9月期も1本と'98年の2本から減少しており、やはり'99年後半からの低下傾向が窺えます。しかしその一方で、'99年上期の1~3月、4~6月期に関しては共に20%以上が3本ずつと、前年同期を上回る本数になっています。

 そこで、更に具体的に'99年、'98年で平均20%を超えるドラマを挙げてみると(蓑2)、'99年は「橋田寿賀子ドラマ・渡る世間は鬼ばかり」(TBS)や「古畑任三郎」(フジテレビ)などのいわばシリーズ化されたドラマが目立ち、全く新しく登場した作品のヒットは少なくなっています。それに対し、'98年は、30%に迫る「GTO」(フジテレビ)をはじめ、「金曜ドラマ・聖者の行進」(TBS)、「ショムニ」、「神様、もう少しだけ」「木曜劇場・眠れる森」(すべてフジテレビ)など、社会的にも大きな話題を呼んだ、新登場の作品が並んでいます。

 このように見てくると、"連続ドラマの人気が低下"といわれるのは、実際にドラマ全体の視聴率がやや低下傾向にあることもさることながら、'99年にはマスコミで大きく取り上げられる様な、いわゆる「大ヒットドラマ」が殆ど出現しなかったというところにも大きな原因がありそうです。

 確かに世帯視聴率でみると、最近のドラマには視聴率的に突出した作品は見当たらず、ドラマ全体での視聴率もやや低下傾向にある点は否めない事実のようです。それでは、具体的にドラマの見られ方はどのように変わったのでしょうか。非常に気になるところです。

 そこで、次からは個人視聴率や基本的な視聴率分析データを用いて、ターゲット毎に連続ドラマの視聴構造がどのように変化しているかを探って行きたいと思います。

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個人視聴率の傾向

 まず、'99年10~12月期の視聴率を'98年同期と比較してみたところ(グラフ2)、連続ドラマ視聴者のコア層といえる、女性20~34才、35~49才では、'98年を上回っているのに対し、男女13~19才では逆に下回っています。

 また、各クールの中で、世帯視聴率が前年に比べ、最も大きく落ち込んでいだ99年7~9月期を同様に比較すると、女性20~34才での低下傾向がみられますが、やはり男女13~19才での大幅なダウン傾向が非常に目立つ結果となっています。

 そこで、女性層に次ぐ連続ドラマのコア層ともいえる、男女13~19才に紋って、'98年1~3月からクール毎の視聴率の推移をみてみた

ところ(グラフ3)、'98年は8~10%台で増減を繰り返していましたが、'99年1~3月に9.1%をマークして以降は、低下傾向を示しています。また、世帯視聴率の推移と合わせてみると、比較的連動した傾向となっている事も注目されます。

 以上の様に、ターゲット別にみた結果では、コアターゲットの女性20~34才、35~49才においては大きな変化が見られないのに対し、男女13~19才での視聴率の低下傾向は如実に現れていると言えます。

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連ドラ視聴者の拡がりと深さは

 次に、一週間におけるドラマ視聴者層全体のパイの大きさ(拡がり)と、またその層における視聴本数(深さ)が、'99年と'98年でどのように変化しているのかを調べる為に、世帯全体と、連続ドラマのコア視聴者層である、女性20~34才、35~49才と男女13~19才に対してR&F(リーチ&フリークエンシー)分析を施してみました(グラフ4)。尚、分析対象期間は'99年と'98年の11月期(4週平均)とし、視聴判定は放送分数の1/3以上としました。また、両時期の放送本数は、'98年が19本、'99年が18本と、'99年が1本少なくなっています。

 まず、1週間におけるドラマ視聴者層全体のリーチをみると、世帯全体では'98年の77.4%に比べ'99年は73.5%と4ポイント近く低下しています。ターゲット別でも、女性35~49才では変化がないものの、女性20~34才と男女13~19才の層では、それぞれ'98年に比べ、'99年は3~5ポイントスコアを下げています。

 この11月期での結果を見ると、1週間におけるドラマ視聴者層全体のパイは、女性20~34才、男女13~19才といった比較的若い層でやや縮小している傾向が窺えます。

 次に、1週間におけるドラマ視聴者層全体の平均視聴本数をみると、世帯全体では'98年の3.3本から'99年は3.1本と若干減少しています。一方、ターゲット別にみると、女性20~34才、35~49才では微増しているのに対し、男女13~19才では2.7本から2.2本と大きく減少しているなど、対照的な状況となっています。

 以上の様に、11月データを基に分析した結果としては、'99年10~12月期の連続ドラマは、女性35~49才の層では、1週間当たりの本数は1本減少したにもかかわらず、拡がりの面では前年と同レベルである上に、深さの面では前年に比べ良化しているなど、全く低下傾向は見られないのに対し、女性20~34才では拡がりの面で、また男女13~19才では拡がり、深さ共にそれぞれ低下傾向となっています。

 このクールは、人気俳優や実績のある脚本家を起用した話題性の高い作品が多かった反面、ストーリー的にはミステリー、サスペンスタッチといったジャンルにやや集中する傾向が見られ、若い世代の視聴者の拡がりにやや欠け、特定のターゲットにのみ深く見られる結果となっていたと言えるのかも知れません。

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他地区の傾向は...

 さて、ここまでは関東地区の視聴率データを基にした連続ドラマの視聴状況を分析してきましたが、他の各地区の状況はどうなっているのでしょうか。関東地区と同じ本数が放送されている、関西、名古屋、北部九州、札幌の各地区を見てみたいと思います。

 各地区の全連続ドラマの平均視聴率をクール毎の推移でみると(グラフ5)、各地区ともに季節変動に伴うアップダウンはあるものの、やはり関東地区同様にピークは'98年前半に集中し、'99年7~9月以降の落ち込みが目立つ状況にあり、関西・札幌は'99年10~12月、名古屋・北部九州では'99年7~9月が、それぞれ期間中で最も平均視聴率が低いクールとなっています。(名古屋と北部九州で7~9月が低いのは、プロ野球中継の影響があるのでしょうか...?)特に関西地区は'98年4~6月には14.9%と、5地区の中でも突出した高い視聴率をマークしていたものの、直近のクールの'99年10~12月では11.5%と、ピーク時に比べ、3.4ポイントもの大幅なダウンとなっています。

 以上見てきましたように、巷で言われている"連続ドラマの人気低下"という傾向は、関東地区のみならず、他の各地区でも同様にみられ、個人データ(関東地区)でみると、視聴層の構造的な大きな要因として、女性20~34才、35~49才に次ぐ連続ドラマのコアターゲットである男女13~19才における視聴の低下があるのではないか、ということが分かりました。

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連続ドラマに対する「期待感」は?

 さて、少し視点を変えてみたいと思います。連続ドラマの最終的な「人気度」は、放送期間内の平均視聴率で計られるべきものかも知れません。その平均視聴率をみる限り、昨年後半から、確かに人気が低下している連続ドラマですが、果たしてそれは一時的な現象なのでしょうか、非常に気になるところです。一部の記事では、視聴者は生活習慣的に、連続してドラマをみる事が面倒になっている、またドラマ自体に飽きて離れてしまったなど、各クールの作品のラインナップや質ではなく、連続ドラマ自体に対する期待感といったものの減退を人気低下の原因とする様な論調も見受けられます。ここでは視聴者の生活行動的な面は計りかねますが、ドラマに対する「期待感」という意味では、「放送初回の視聴率」がその一つの指標となるのではないでしょうか。そこで、初回視聴率だけに絞った、全連続ドラマ平均視聴率のクール毎の推移をみてみました(グラフ6)。

 まず、世帯全体では、'98年1~3月、4~6月が16%台と高かったものの、その後はやや低下傾向となっています。次に連続ドラマのコア層である各ターゲット毎にみると、女性35~49才は比較的横ばいの安定した推移であるのに対し、女性20~34才では'98年7~9月までの12%台の推移から、その後は10%前後での低調な推移に転じ、全体として低下傾向にあります。また男女13~19才では、'99年7~9月からの大きな落ち込みが目立っています。

 以上のデータをみる限り、女性20~34才と男女13~19才の低下傾向は、視聴者の連続ドラマに対する「期待感」がやや薄らいでいる、という状況の一面を顕わしているように見えます。勿論、「期待感」というのは、視聴者の意識的な面であり、それを視聴率データのみから探ろうとするのは、若干無理があるかも知れません。が、前出のデータから共通する男女13~19才の低下傾向には、留意する必要があると思われます。

作品としてのレベルの評価は高かったものの、あまり万人受けするとは言い難いサスペンスドラマが多かった前クールの'99年10~12月期から一転して、今期はラブストーリーものを中心に、バラエティなラインナップであるのに加えて、出演者の顔ぶれも前クールに劣らず賑やかとなっています。従来の発想なら、連続ドラマの人気回復の必要条件は十分クリアしているだけに、今期は連続ドラマの今後を占う意味で、前クール以上に注目すべきクールであると言っても過言ではないでしょう。さて、視聴者の連続ドラマ回帰のきっかけとなる様な高視聴率の好作品は登場するのでしょうか。

関西支社 営業部 穂積 俊樹

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