『インタラクティブ・テレビの胎動』

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※本記事は2000年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 米国では、一昨年(1998年)10月に地上波のデジタル放送が始まり、1年以上が経過しましたが、ソフト(デジタル番組)の不足、ハード(テレビ受像機)の高値感等の理由で、ほとんど一般家庭には普及していません。また、普及しないもう一つの理由としては、ケーブル・システムのデジタル対応化が遅れている点が挙げられます。米国では、約7割以上の世帯がケーブル経由でテレビ視聴を行って

おり、たとえ高価なハイビジョン・テレビを購入しても、その世帯が現在加入しているケーブル会社がデジタル対応をしていない限り、高画質のハイビジョン放送を楽しむことができません。米国のデジタル放送の真のインフラは、ケーブル会社が鍵を握っていると言っても過言ではないようです。

 地上波放送のデジタル化が進む中、昨年の米国ケーブル業界(MSO)では、吸収・合併が盛んに行われました。特に大きな話題としては、長距離電話会社のAT&Tが次々に大手ケーブル会社を買収し、業界最大手のタイム・ワーナーを追い抜き、契約者数でトップに立ったことです。近い将来、テレビ、PC(パソコン)、電話がケーブル回線に統合接続される"放送と通信の融合時代"に備え、AT&Tは昨年、業界第2位のTCIを480億ドル(約4兆8000億円)で買収、その後すぐに業界第3位のメディア・ワンを580億ドル(約5兆8000億円)で買収しました。その結果、AT&Tが一躍ケーブル業界のトップに踊り出た訳です。この吸収・合併劇には、デジタル・インタラクティブの設備投資は巨額な費用がかかり、既存のケーブル会社の個々の資金力では賄えないという背景があるようです。

 デジタル化の特長としては、高画質の番組サービスと双方向機能を活かした各種情報サービスがありますが、このところ、双方向サービスに重きを置いた開発やインフラが急ピッチで進んでいます。今年の中盤頃より、廉価で多機能型のデジタル・セットトップ・ボックスが登場し始めるようです。4年前のケーブル・セットトップ・ボックスは、1台当たり約7000ドルでしたが、今日では350ドル前後まで下がってきたと言われています。デジタル・ケーブル・モデムを搭載し、既存のテレビ画面で、EメールやEコマースを従来のものよりも速く行えるセットトップ・ボックスや、大容量のハード・ディスクを搭載し、番組録画や巻き戻し、一時停止操作などが簡単に行えるセットトップ・ボックスの発売が予定されています。このセットトップ・ボックスを使えば、番組の予約録画やライブ番組の一時停止操作が簡単に行え、繰り返し視聴やタイムシフト視聴が楽しめるようになります。

 それでは、最近発表となったデジタル・セットトップ・ボックスや、双方向サービスの取り組み等について紹介します。

 ヨーロッパの大手衛星放送受信機メーカーのPaco Micro Technologyは、他社に先駆け、ビデオテープを使用しない録画機能付のデジタルセットトップ・ボックスを開発しました。これは、PTS(Personal Television Services)と呼ばれる"リプレイTV''や"ティーボ''の録画システムと同様のもので、大容量のハードディスクを搭載し、番組をデジタル圧縮して保存する仕組のものです。

 また、米国の衛星放送会社"エコー・スター"とインターネット・サービスの"ウェブTV"は、衛星放送チューナーとウェブ機能を合体させ、さらにデジタル・レコーディング機能を内蔵したデジタル・セットトップ・ボックスを作ることを発表しました。このように、次世代のセットトップ・ボックスは、多機能型のものに発展してきています。

 また、メーカーとケーブル会社が手を組み、共同で次世代のケーブル・サービスの準備を進めるという動きも出てきました。ソニーの米国法人であるSony Corporation of Americaは、米国北東部のCATV会社"Cablevision"と一緒に次世代のケーブル・サービスを行う為に、10億ドル(約1000億円)規模の契約を行いました。この契約の内容は、CablevisionがCATV回線を提供し、ソニーがデジタル・セットトップ・ボックスのシステム設計やソフトウェア開発を行い、両社共同でデジタル・エンターテイメント・サービスを提供していくというものです。この契約の中に、ソニーが300万台のデジタル・セットトップ・ボックスを製造することが言匡われており、今年の夏頃から契約者に提供していく予定になっています。現在両者が予定しているサービスは、①ビデオ・オン・ディマンド・サービス/②インターネット・テレビ・サービス/③多チャンネル・サービス/④ゲーム・サービス/⑤番組ガイド・サービス/⑥品質(画質&音質)の向上サービスの6点を挙げています。ソニーは、ソニー・ミュージックやコロンビア・トライスターなどをグループ傘下に持っている為、音楽や映画などのソフト(コ

ンテンツ)を多数所有しています。その為、今回のCablevisionとの提携により、ソニーはハード(セットトップ・ボックス)とソフト(コンテンツ)をリンクさせたビジネス・ディベロプメントが可能になったとしています。また、ソニーの将来ビジョンである『Networked Home』(家庭内ネットワーク)を実現させる為の足掛りもできたと言われています。

 一足先にデジタル放送がスタートした米国では、ハイビジョン型デジタルTVの普及よりも、既存のテレビを使ったインタラクティブ・サービスの普及甲方が早く進みそうな状況になってきました。現在、かたちになりつつある次世代のセットトップ・ボックスの特徴は、高速回線(DSL/ケーブル)によるインターネット接続機能、大容量ハード・ディスク内蔵の長時間録画機能、双方向型のEPG(電子番組ガイド)機能等が搭載されているとてもインタラクティブ性の高いものです。各企業とも、今年からのサービス展開を予定しており、今年の米国テレビ業界は、"インタラクティブ・テレビ幕開けの年"になりそうです。

Video Research USA, Inc.

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