視聴率分析手法のご紹介(3)マーケティングに活かせる!新分析アプローチ『サンプル抽出』〜"視聴特性"という切り口〜

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テレビ
#CM #マーケティング #視聴率

※本記事は2003年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

現在視聴率集計でご提供している"特性別集計"には、世帯視聴率における「世帯特性別=例えば『未就学児のいる世帯』など」、個人視聴率における「性・年代別=例えば『女性20〜34才』など」「職業別=例えば『給料事務』など」がありますが、今月はそれらとは趣を異にする「視聴特性」という切り口をご紹介いたします。例えば「A番組ヘビー視聴者」であったり「B社CM接触者」であったりするものです(図1)。そして、その「視聴特性」を用いて行う新しい分析アプローチ『サンプル抽出』も併せてご覧いただき、今までにない視点での視聴率分析手法もご紹介いたします。

【図1】視聴率の"特性別集計"

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◆視聴特性=実際のテレビ視聴傾向によるサンプルの分類

視聴率調査は、調査エリアによって異なりますが例えば関東地区では24時間365日年中無休で1分ごとに個人レベルでその視聴データを記録しています。見方を変えれば、これは誰が何の番組を何分見たかを毎日克明に記録しているのと同じことを意味します。したがって、その視聴データをみればその人はどの様な番組を好みどの程度見ているのかを判別することが可能となります。事前のアンケートでその人のテレビ視聴傾向や番組の嗜好性を問うのではなく、実際の視聴データからそれらを判定してみようという試みです。これが他でもない「視聴特性」です。

そして、この「視聴特性」によって視聴者(サンプル)を分類(抽出)して視聴率分析を行うアプローチを『サンプル抽出』と呼んでいます(図2)。

【図2】新分析アプローチ『サンプル抽出』の概念

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◆具体的な課題に対するアプローチ例

では、その『サンプル抽出』アプローチを用いた分析事例をいくつかご紹介いたします。

先ほど「視聴特性」とはテレビ視聴頃向や番組の嗜好性と述べましたが、実際に分析を行う際には「A番組をどれくらい見たのか」あるいは「B社のCMにどれくらい接触したのか」といった具体的な視聴傾向として表されます。

はじめに、番組の視聴状況を分析する場合の事例を2つご紹介いたします。

①"視聴特性"そのものを描く

番組の視聴者を明らかにする場合、従来は「視聴者構成割合」を用いで性・年代別に視聴者の分布を探るのみでしたが、『サンプル抽出』を用いれば番組の視聴分数や視聴頻度(つまり視聴特性)から視聴者をグループ分けすることが可能となり、「ヘビー視聴者あるいはライト視聴者はどれくらい存存するのか」いったことが分かります(図3)

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→この場合は「Ⅰ」が真のヘビー視聴者、「Ⅳ」がライト視聴者。「Ⅱ」は裏局視聴が多い?

「Ⅲ」は家にいればその番組を見る?

→各グループの性・年齢別構成、他局視聴状況などもわかります。

②当該番組視聴者の裏番組視聴状況を知りたい

この課題に関しては、実はVideo Research Digest 2003.3「視聴率に与える裏番組の影響度を探る」で既に『サンプル抽出』を用いて分析を行っております。詳細はそちらをご覧いただくとして、ここでは簡単な分析事例をご紹介いたします。

単純に裏番組との競合度合いを知りたい場合、当該番組視聴者をサンプル抽出し、彼らを対象に裏番組の視聴分数分布を集計します。そうすることにより、裏番組との視聴の重複度合いが分かり、競合している番組が明らかになります(図4)。

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→この例では、「裏番組AJが最も競合しているものの「裏番組D」にちょっと気をとられている視聴者も多いという結果を表しています。

→当該番組視聴者を、ヘビー視聴者/ライト視聴者などに分けるとさらに競合状況が明確になります。

次に、CMの到達効率に関する分析事例を2つご紹介いたします。

③リーチ拡大のために提供枠を増やしたいが、最も効果的な番組は?

視聴特性として「現提供枠での非到達者」をサンプル抽出し、彼らを対象に増やしたい番組でリーチMax集計を行えば、瞬時に最適な提供追加番組を選定することが可能です(図5)。

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→この例では「ドラマA」の追加が最適となっています。

→非到達者に着目しているので、1回の集計で確実にリーチ拡大につながる番組を把握できます。

④もっと多くの人にCMを接触させたいが、最も効果的な出稿パターンは?

当該CM接触者/非接触者をサンプル抽出し、彼らを対象に曜日・時間帯別に時間区分視聴率を集計します。非接触者の視聴率が高い時間帯にCMを出稿すれば「リーチ拡大」、接触者の視聴率が高い時間帯にCMを出稿すれば「フリークエンシー拡大」につながります(図6)。

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→この例では「逆L型」が最適で、また土曜の深夜も有効です。

→当該CMの接触者を、ヘビー接触者/ライト接触者などに分けるとダイレクトに課題をクリアできます。

◆まとめ

機械式個人視聴率調査(PM)が開始され、視聴率は単なる視聴者の量を測るだけではなくマーケテイングデータとしてその存在価値が高まっています。ここでご紹介した「視聴特性」を用いた新しい分析アプローチ『サンプル抽出』は、まさに視聴率データをそのようなマーケティングデータとして扱おうとする試みです。いままでとは視点の違う新しいアプローチ方法ですので、分析事例も4つ掲載いたしましたが、この他にも様々な切り口が考えられます。今後も研究を重ね、皆さまのお役に立てる結果を導けるよう努力して参りたいと思います。

(最後になりましたが、システムの都合上実際に集計・分析可能なのは「関東PM地区のみ」「集計当日より遡って26ヶ月分のデータのみ」となっております。ご了承下さい。)

(メディアリサーチ事業局テレビ調査部 長島英樹)

■Video Research Digest他の関連記事

◆徹底検証

①視聴率に与える裏番組の影響度を探る 2003.3No.417

◆視聴率分析手法のご紹介

<1>視聴の拡がり&視聴の深さ 2000.3No.381

<2>視聴判定について("見た"の基準) 2003.4No.418

<3>新分析アプローチ『サンプル抽出』〜"視聴特性"という切り口〜 2003.5No.419

<4>流入流出 今後掲載予定

◆その他ご紹介

「番組カルテプロフィール分析」のご秦内 〜視聴者の顔を措く試み〜 2000.8No.386

「番組カルテ提供効果分析」のご案内 〜番組提供のメリットは?〜 今後掲載予定

◆テレビ視聴動向

「連続ドラマ」の現在〜"ドラマ離れ"の実態は〜 2000.1No.379

「国会中継」のテレビ視聴状況 2001.7No.391

日本代表善戦!!高視聴率も記録!〜サッカー2002FIFAワールドカップ〜 2002.8No.410

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