USA発 ミレニアル世代に起こっているコンテンツの"消費"

Video Research USA
谷口悦一
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※本記事は2017年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。著者の所属部署は当時。

2016年リオデジェネイロオリンピックは日本の反対側で繰り広げられたため、皆さんこそ寝不足になった方も多かったのではないでしょうか。私のいるアメリカではほとんど時差は無くオリンピック競技を見ることが出来ました。それもテレビ以外の様々なプラットフォームで...。このことは2020年を控えた私たちにとって、とても気になることです。

そこで、Video Research USAは、全米でオリンピックの放送権を持ち、様々なプラットフォームを用いてリオオリンピックを放送・配信したNBCユニバーサル社の調査&メディア開発部門の責任者のアラン・ワーツェル氏にインタビューを行いました。

今回は、アラン氏の話を中心にアメリカにおけるオリンピックの見られ方を紹介します。

なお文中の資料はアラン氏がセミナーで発表したものを掲載しています。

リオはソーシャルメディアがつないだオリンピック

【図表1】はアメリカでの2004年のアテネオリンピックから2016年のリオオリンピック各々のメディア消費時間を表したグラフです。アテネでは消費時間のすべてがテレビ視聴に費やされていましたが、北京ではソーシャルメディアなどデジタル関連による消費に兆しが見えています。ロンドンになると3割近くになり、リオで3割を超え、この8年でデジタルのシェアが急激に伸びていることがわかります。

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NBCユニバーサル社は「オリンピックは世界最大規模のイベントであり、非常に多くのプラットフォームを経由し、17日間に渡り様々なコンテンツが配信されるため、今後のトレンドを予期したり、また理解するのに非常に大切なイベント」と位置付けています。そのため、同社は"The Billion Dollar Lab(10億ドルの研究室)"と呼ばれる調査において、「消費者がどのような形でオリンピックの番組あるいはコンテンツに接触しているか」というテーマを中心に調査を行いました。

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アラン氏はこの調査の仮説について、以下のように説明してくれました。

「NBCユニバーサル社は二つのことを仮説として考えていた。ひとつ目は今回のオリンピックがソーシャルメディアのオリンピックとして認知されるであろうということ。ソーシャルメディアはすでに我々の生活の大きな要素でありインパクトがあるであろう。

二つ目はマルチスクリーンが視聴において活用されるであろうということである。」

調査結果から想像以上にソーシャルメディアは活用され、9億以上のエンゲージが様々なソーシャルメディアで行われていた事が判明したとのことです。

ロンドンオリンピックがメディア消費変化の潮目

また、マルチスクリーンにおいては、以下のように語っています。

「2010年冬季バンクーバーオリンピックでは、基幹となるNBC局はプライタイム放送枠の編成を死守することが絶対であった。つまり、主なコンテンツはプライムタイム枠以外のところでは放送しないという神聖なルールがあった。しかし、2012年のロンドンでこの考え方にはもう限界があるということが認識された。視聴者は別のプラットフォームをも活用するようになっていたからである。

そのためリオでは全ての競技をテレビはもちろんのこと、様々な形態でライブ配信を行った。その結果、視聴者は編集されていない生の形で競技を視聴する事が出来るようになった。NBC局のプライムタイムでは米国で人気のある体操競技等の収録・編成されたものが放送されたが、同時間帯にNBCユニバーサル系列のあらゆるプラットフォーム※1には7つ以上の競技が放送されていた日もある。それらの中にはフェイスブック、インスタグラム、スナップチャットのようなソーシャルメディア経由でハイライトやビッグシーンも配信されていた。結果、リオでは前回のロンドン以上にテレビ視聴行動変化が多様化、さらにはオリンピックコンテンツに対する意識の変化も促進された。」

"視聴"というより "消費"の仕方

併せて、アラン氏はミレニアル世代とオリンピックについて以下のように語っています。

「オリンピックというイベント自体が若いミレニアル層にとって年配者ほど人気のある番組なのかどうかということも懸念したが、実は"ミレニアル世代においてもオリンピックは人気のあるイベント"ではある。しかし、それは"コンサートや他のエンターテイメントと変わらないのでは?"ということも考慮しなくてはならなかった。」

そして、特徴的なことは、ミレニアル世代のオリンピックへの接触の仕方だと分析します。

「様々なプラットフォームで様々なパッケージでコンテンツを配信した結果、ミレニアル世代はオリンピックに興味が無いわけではないが、"視聴"というよりコンテンツの"消費"の仕方が異なることがわかった。例えば彼らはオンラインで頻繫にオンデマンド等を見る。または誰かから"聞いて"、3分間の動画クリップを"見て"、友達とソーシャルメディアで"語りあう"ような行動をしていた。」

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ミレニアル世代とメディアとのエンゲージを象徴した事例と言えるのではないでしょうか?

メディア接触の全体像を理解することが大事

最後にアラン氏は日本市場へのアドバイスとして、下記のように語ってくれました。

「オリンピックだけに着目するのではなく、メディア接触の全体像を理解することが大切。通常の番組に対して起きていることと同じようなことが、オリンピック視聴にも起きていることだろう。つまり通常の視聴行動がオリンピック視聴時間にも影響しているのだ。変化は非常に早く訪れている。だから2020年に向けて日本のミレニアル世代の把握は大切だ。」

今回インタビューを行い、オリンピックを含め、現在アメリカの若者を中心としたテレビ・コンテンツ視聴動向の変化から2つのことに留意しなければならないと考えました。

まず、アラン氏の話の中では「コンテンツの消費」という言葉が頻繁に出てきました。テレビと言うメディアは依然「王様」であり、広告の効果、またリーチという意味でも、今なお主流である事は間違いが無いようです。

しかし、従来の視聴者はプライムタイム放送時間の数時間において、その日のイベントのハイライトを"視聴"していました。ところが、今回のオリンピックではロンドン時に増して、ミレニアル世代を中心に全てのデモグラフィック層において、ソーシャルメディア間でのシェアやインタラクティブ活動が浸透しつつあります。NBCやオフィシャルスポンサーの公式サイトにとどまらず、個人が投稿するオリンピック関連の動画、記事、オリンピック関連グッズの購買やコメントが様々なプラットフォームにおいて接触され、行動されているのです。この状況下では"テレビの視聴"という概念よりは、テレビを中心としながらも様々な形で"コンテンツが消費"されていると考え方を変えなければならないのでしょう。

さらに、アラン氏のアドバイスにもありましたが、2020年の東京五輪に向けてさらに環境が急速に変わっていく中で、「ミレニアル世代またはそれより若い世代という今後主流となる世代の動向」はきわめて重要です。したがって、彼らの「コンテンツの消費」について、本稿の読者の皆様とともに向き合い、常に補足・分析・共有・行動することで、コミュニケーション業界の発展に寄与する環境を整える事が大きな課題であると考えています。

※1 NBCユニバーサル社のケーブルネットワーク、インターネット配信、モバイル&コネクティッドデバイスアプリ、SNSプラットフォーム等

アラン氏 プロフィール

Alan Wurtzel

President,Research and Media

Development NBC UNIVERSAL

VR FORUM2012の特別講演に登壇いただきました。

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