TVウーマン

制作会社の若手ジョシに熱く語ってもらう人気のコーナー「TVウーマン」テレビ局の方だけでなく、制作会社やテレビ業界に興味を持っている、就職活動中の学生の皆さんも是非お読みください!今回のTVウーマンは、テレパックでAD/APをしている雫石 瑞穂さんです。

004 MIZUHO SHIZUKUISHI 雫石 瑞穂

プロフィール

1991年生まれ、福島県出身。高校時代からドラマづくりを始め、明治大学法学部卒業後にテレパック入社。『花嫁のれん3』『いつか陽のあたる場所でスペシャル』などでAD、『シンデレラデート』『花嫁のれん4』でAPを務め、ドラマ作品を主戦場に活躍。14 年8月に『すもうねこ』で初のディレクターを経験。同年11 月には、同作で全日本テレビ番組製作社連盟が主催する第31回ATP賞の新人賞を獲得した。

QUESTION&ANSWER

QUESTION&ANSEWR内容

INTERVIEW

「“奇跡”に導かれて運だけでやってきた」

Pを担当しているドラマ『花嫁のれん4』の撮影を抜けて、雫石瑞穂さんはインタビュー現場に現れた。14年11月、初めて監督を務めた作品『すもうねこ』で第31回ATP賞の新人賞を受賞。大学卒業後、入社2年目の受賞という快挙を成し遂げた若手TVウーマンである。 「授賞式では、ほかの新人賞受賞者が5、6年目の方で、とても緊張しました。私、強運なんですよ。人生に何度か奇跡が起きていて、この賞は第3の奇跡。そもそも、局に出した自分の企画が通るなんて100回に1回くらいといいますし、2年目で企画書が通ってディレクターとして作品を手がけたのは、弊社では最速なんです。運だけで、ここまで来たと思っています」
 こう語る彼女が初めてドラマに強く魅了されたのは、福島の片田舎で過ごしていた中学時代。
「中学2年生の時に大流行した『ごくせん2』がきっかけで、ドラマが自分にとって特別なものに。『○曜日の○時はあれが放送される』と思いながら毎日過ごすようになったんです。『がんばっていきまっしょい』『1リットルの涙』も大好きで。高校進学時には、大学に入ったら上京して卒業後はドラマをつくる人になると思っていました」
 高校時代には、放送部でドラマの制作に打ち込んだ。そこで起きたのが、第1の奇跡だ。
「高校3年生の時につくったドラマが、NHK杯全国高等学校放送コンテストで準優勝したんです。そこで調子に乗ったんですね! 大学時代もサークルでドラマを制作していて、就職活動では地上波のテレビ局、映画会社をすべて受けました。全部落ちましたが(苦笑)」
 次は制作会社だ、と就職情報サイトで見つけたのが、『男女七人夏物語』などドラマ制作で有名なテレパックだった。「結果的に、ドラマにいちばん近い会社に入れたことが、第2の奇跡」と雫石さんは笑う。だがもちろん、奇跡を手繰り寄せたのは彼女の日々の努力があってのことだろう。

自分が抱いたワクワクを与えられる監督に。

レパックに入社した雫石さんが最初に経験した連続ドラマは、『花嫁のれん3』だった。
「昼ドラは撮影期間が長いので、撮影と準備の期間が重ならざるをえないハードな現場なんです。『花嫁のれん3』も8月1日〜翌年1月の撮影期間のうち、お正月を除いてほとんど休みがなかった。クランクインまでの1カ月半でさえ、右も左も分からない私はバタバタと毎日の仕事に追われていました。その時、リハーサル中に羽田美智子さんが『雫ちゃん、昼ドラが連ドラのなかでいちばんしんどいけど、乗り越えたら何でもできるようになっちゃうから頑張ろうね』って、声をかけてくださったんです。思わず泣きそうになって、頑張ろうと気持ちをあらたにしたのは忘れられませんね」
 日々、気を付けているのは疲れた顔、辛い顔を人に見せないこと。忙しさを口にしないこと。上司の「人は、余裕のない人間に仕事を頼もうとは思わない。忙しさは相手に関係のない自分の問題なんだから」という言葉がきっかけだ。
「実際、野際陽子さんに『今日疲れてるね』と心配されたことがあり、演者さんに気を遣わせるなんてプロ失格だとハッとしました。疲れた顔を見せず元気よく声を出すことは、現場を支えるためにも不可欠なんだと」
 その後、数本のドラマでAD、『すもうねこ』で初監督、『シンデレラデート』で初のAPを経験。現在は『花嫁のれん4』でAPを務めている。あっという間の2年間だった。そのあいだ、仕事を辞めたい気持ちになったことはほとんどない。もちろん、体力的には想像をはるかに超える大変さだった。ただ、それを上回る楽しさがあったのだ。
「プロデューサーやAPはキャスティングや脚本づくり、スタッフ集めなど企画の外側をつくる仕事。監督やADは脚本をもとに現場で企画の中身をつくる仕事ですが、私は特に後者としてドラマに関わるのが好きです。本番中に生で役者さんたちの動きを見られるのは、やっぱり楽しい。BGMがなくても泣けるシーンは泣けるし、コミカルなシーンは笑いをこらえるほど。制作現場の生きた空気が好きなんだと思います。関わった作品の役者さんがみなさん尊敬できる方々なのも、辞められない理由のひとつですね」
 将来はドラマや映画の監督が目標だと語るが、2年間の経験でドラマが現在抱える問題にも気付いている。視聴者、特に若年層のドラマ離れだ。雫石さんは静かに考えを口にした。
「最近流行った『半沢直樹』や『あまちゃん』を見ると、もちろん素晴らしい役者さんが出演されていましたが、ヒットしたのは内容の面白さあってのことで、キャスティングにすべてをかけてはいけない時代なのかなと感じます。また、多くのドラマで、1話ずつの完成度が高すぎて、連ドラなのに連続して見なくても満足できるものになってしまっているのかもしれません。1話のなかで起承転結をつけるのはセオリーですが、もっと全体の物語を大切に各回を展開する作品があってもいいと思うんです。是枝裕和さんが監督を務めた『ゴーイング マイホーム』のように。……でも、いちばんの問題はドラマのつくり手自身が、あまりドラマの今を悲観していない前向きなところかもしれませんね。私を含め、ドラマは面白いと思っている人たちばかりですから」
 最後に、今後どんなドラマをつくりたいか聞いてみた。
「かつて学生時代から感じていた毎週のワクワク感を抱いてもらえるようなもの。具体的には、脚本家の木皿泉さんが描くような、日常感があって、自然な会話が面白い作品というか。非現実的な設定であっても、視聴者が一人ひとりの現実に置き換えて夢を見たり、見落としがちな日常の輝きに目を向けられたりできればいいですね」