【後半】ニールセン×VRI対談 10年後、この提携が生んだ「DAR」は、 当たり前の指標になる

VRDigest編集部
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【後半】は、実際に「DAR」の提供に携わる、ビデオリサーチインタラクティブ、ニールセンデジタルに、よりリアルな現状と両社の提携で目指すことをお話いただきました。

【前半】DARはデジタル広告の何を語るのか。 はこちら

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グローバルな視点を、日本の市場に

Question 01
業務提携前のそれぞれの会社の印象は?

宮本:ビデオリサーチグループ(以下VRグループ)は、テレビの視聴率を国内で唯一提供している会社です。海外でテレビの視聴率を大きな柱としている当社にとって、親しみを持ちながらも、調査会社としては競合であるという両面の印象がありました。

池田:ニールセンデジタル(以下ND)は想像以上にグローバルで影響力を持った会社だと認識し直しました。海外の大きなプラットフォームに対する取り組みなど、グローバルを見据えた上で考えていると感じました。

Question 02
2016年12月に業務提携しましたが、 どのようなお考えがありましたか?

宮本:デジタル化がグローバルで進展する中で、色々な垣根がなくなってきたことを背景に、以前は内製主義が強かったニールセンも、ここ近年はそれぞれの分野で強いパートナーと一緒にビジネスをすることで、より可能性を広げていく考え方に変わってきています。その中で、業界の皆さまに広く使っていただくためには、VRグループとパートナーシップを組むことが、よりよい選択肢だと考えました。

池田:今回は外に向かった提携であり、改めて手を組めたことで、グローバルスタンダードを意識したインターネットの指標づくりができると考えています。これは、日本のインターネット市場を睨んだ上で、かなり大きな前進であり、世界の潮流を確認しながら、日本のインターネットの進捗を確認できるようになります。VRグループ側から考えると、グローバルな視点を取り入れた提携戦略だったと思います。

Question 03
提携したことで、お互い生かしたい強みは?

宮本:それは、両社の住み分けにもそのまま直結する部分です。当社の場合、グローバルスタンダードの製品提供とグローバルなプラットフォーマーとのパートナーシップに尽きます。あえてもうひとつ言うなら、広告主に対する訴求力です。

池田:VRグループの場合は、約50年培ってきた、テレビの視聴率を初めとする国内における代表的なメディアメジャメントのリーディングカンパニーということだと思います。

Question 04
提携したことへの反響はいかがですか?

宮本:ニールセングローバルの中での期待は高まっていると感じます。ただ、グローバルな企業にとって、日本のマーケットはまったくのブラックボックス。VRIとの取り組みを拡大していく中で、日本のことが海外に伝わるようにしていけたらと思っています。

池田:VRグループとしては、今までの歴史の中で、大きな提携は一度もありませんでした。しかも、歴史的には競合とも言えるNDとの提携ですので、インパクトはかなり大きい。事情通の方は「メジャメントの真ん中をとるため、ついに他社の力を借りた。かなりの大英断だった」と思われたようです。実際、「頑張りましたね」「そこへ行くとは思っていませんでした」という声を耳にします。今後は、NDのグローバルな視点が反映されることで、より客観性に磨きがかかったデータを提供できるようになります。まさに、NDと当社でないと出せない数字になるはず。お客さまには徐々に「今までとは一味違う」という印象も持たれるのではないでしょうか。

Question 05
タッグを組むことで具体的に実現したいことは?

宮本:まずは一緒に、デジタルの視聴率という指標を、マーケットの中で標準化していきたいです。

池田:この提携によって客観的なデータからグローバルスタンダードに準じている数字を出せます。インターネットの世界においても、重要なマーケティングデータを出せるきっかけが生まれたと言えます。放送局からは、以前はNDのサービスに対して、日本語化やローカライズを求められている雰囲気がありました。でも最近は、「両社のタッグでしか出せないデータ、指標を考えてほしい」といった前向きな提案が求められています。

Question 06
具体的にはどのような取り組みを?

宮本:標準指標化していくために、まずは広告主におけるデジタル広告視聴率の利用価値をきちんと訴求・浸透させ、利活用の定常化を目指しています。これが、販売面でのND側のミッションです。

池田:提携を生かした相互販売代理にも力を入れたいですね。当社の強い営業先と、NDの強い営業先とが噛み合うことで、今後うまく浸透させていく事もできます。

Question 07
現在、進捗状況はどうでしょう?

宮本:当初は、機能訴求的な販売方法をとっていましたが、既存指標と比較できないと難しく、価値の違いをなかなか理解いただけませんでした。そこで、体験訴求的なアプローチに切り替えました。実際に体験をしていただくと、非常にわかりやすくベネフィットが伝わりました。理解も深まって加速度的に導入企業が増えており、本格活用いただくステージに入りました。今後、アーリーアダプターからマジョリティーの領域に入っていくときには、その先のアプローチや戦略を考える必要があります。

Question 08
点から線や面にしていく戦略ということですね?

宮本:今は点の戦略で、広告主とワン・トゥー・ワンでお取引を拡げています。そこを線なり面なりで展開していくときに期待しているのが、VRグループであり、広告会社です。特に広告会社を通じて、広く複数の方々にサービスを提供していくことは、次の線や面につなげていくために非常に大事だと感じています。

池田:新商品の共同開発も着々と進んでいます。NDには、モバイルの接触データを提供する「Mobile NetView(モバイル・ネットビュー)」というサービスがあります。こちらは、日本唯一のサービスです。そのサービスをもとに、リーチマックス機能を実現する「Mobile Reach MAX(モバイル・リーチ・マックス)」というサービスを両社で共同開発し、今年すでにリリースしました。また、NDが提供する「DAR」も進化しています。元々はオンターゲット率やリーチを詳らかにするサービスです。この夏にはVRIが持っている「AD Value Panel(アド・バリュー・パネル)」とデータ統合することで、接触者・非接触者を割り出し、リフトアップしたかを調査できるサービス「Brand Lift Plus(ブランド・リフト・プラス)」をリリースしました。

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ユニーク・リーチをリアルタイム計測できる「DAR」

Question 09
現場で感じるデジタル広告市場の課題は?

宮本:ブランディング広告としての一番の課題は、昨年P&G様がIAB(※1)のカンファレンスで話されたような、デジタル広告の透明性でしょう。それをきちんと示していくため、重要なコンポーネントのひとつとなるのが、共通指標だと思います。

池田:その役割を果たすのが「DAR」ではないでしょうか。インターネットのデジタル広告には、細かいターゲティングや、無駄のない出稿が求められます。そのためには、偏りのない大規模なパネルにより、トランスペアレンシー(透過性)を出さないといけません。そのような意味では、「DAR」がグローバルプラットフォームとの提携で備えている機能や、インターネット特有の即時性は非常に有用です。

Question 10
提携により、今後「DAR」はどのような進化を?

宮本:次のステージは、デジタル広告の標準指標としてリーチがひとつの物差しになるでしょう。消費者はどんどん便利な方へと変わっていきますから、テレビだけ、デジタルだけというコミュニケーションが成り立たない状況が加速しています。その消費者の変化に対応するために、広告主はテレビとデジタルをひとつに考えて、一番適切なコミュニケーションの方法を考えることが当たり前になっています。そして、クロスプラットフォームでデータを出せたり、パソコンもモバイルもまたいで、且つテレビと同じ指標でデータが出せたり、ということが求められるようになっていると思います。そのニーズに「DAR」を標準指標として活用いただきたいですね。

池田:「DAR」で算出するリーチを標準指標として使っていただけるようになれば、まだまだ障壁はありますが、次のステップとしてはプランニングデータに昇華すると思います。今のアナログデータからデジタル広告に即したメディアプランニングの重要なパーツを担う指標に進化すると思います。

Question 11
「DAR」が、標準指標になりうる理由は?

宮本:デジタルのメディア、及びプラットフォームを一気通貫で計測できることや、PCとモバイルでユニークな人ベースのリーチを測ることは、今のところ「DAR」以外では難しいのではないでしょうか。日本のインターネット市場には、グローバルなメディアやプラットフォームが当たり前のように根付いています。そのグローバル企業に、日本国内だけの計測を承諾してもらうこと、しかも国内のドメスティックな企業がアプローチすることは、なかなか至難の業でしょう。その点、私たちはグローバルに事業を展開しており、海外の大手プラットフォーマーも計測可能という優位性が、唯一無二の共通指標となりうる理由の一つです。また加えて、近々「DAR」に自社開発のビューアビリティ機能を搭載する予定で、標準指標としてお使いいただくために、MRC(※2)認定基準の厳格化に対応する機能拡張となります。

池田:「DAR」はグローバルスタンダードです。「人」「デバイス」「媒体」「グローバル」「同じ基準」で測定できるものは今「市場」には「DAR」以外ありません。

Question 12
「DAR」は、すでにアメリカで本格活用されているそうですね。

宮本:アメリカは、デジタル広告への取り組みが、日本より2~3年進んでいると言われます。いわゆる広告の売り手側が、「DAR」のデータを使って、「ターゲットリーチ保証」というメニューを出しています。デジタル広告の場合、プログラマティックに広告を配信することができます。そこで媒体社は、自社広告枠での広告掲出を全部計測し、ターゲット含有率やターゲティングメニューを精査することで、ターゲティングのアルゴリズムをチューンナップし、精度を上げていく取り組みがなされています。

Question 13
広告主、広告会社のほうは、どうでしょう?

宮本:買い手側の方は、デジタル広告の運用改善のために「DAR」をご利用いただいています。従来、多くのキャンペーンは、終了後でないと広告効果を検証できませんでした。それでは、反省材料にしかなりません。「DAR」の場合、日次ベースで効果を確認できるため、広告出稿途中に最適化が可能です。具体的には、日次データを見て、目標のターゲットリーチに届いていない媒体から、効果が高い媒体に広告出稿を振り向けていく、といった具合です。また、広告主が媒体社と協業してキャンペーンを実施するときにも、広告主が「DAR」のデータを提示して媒体社へストレートに改善要求を出したり、両社で同じデータを見ながら改善したりというように役立てられています。一面としてですが、アメリカではプログラマティック広告によるブランディングが増えていて、そこに「DAR」が役立てられているとも言えます。

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2018年は「DAR」のインターネット指標元年

Question 14
「DAR」導入の際に、 お客さまが懸念されることは?

池田:よく聞かれるのが、「DAR」がGDPR(EU一般データ保護規則)に抵触しないか、ということですね。

宮本:それは問題ありません。GDPR対策については、グローバルで常に情報をアップデートしています。データパートナーやグローバルのプラットフォーマーとも、問題がないか常にチェックしている状況です。そもそも、GDPRでも問題になっているのは、個人を特定したターゲティングにデータが使われることで、私たちは一対一の紐づけの結果を返してもらっていません。つまり、個人レベルを特定できるものを何も受け取っていないのです。

Question 15
提携して1年半経過しましたが、 今後の展望など。

宮本:今回の提携は外部の皆さまから好意的に受け止めていただいていますが、提供しているサービスや価値を、きちんと市場で浸透させられているかという意味でいうと道半ばです。私たちが、日本の市場において、デジタルの指標の標準化を目的に一緒に前進している印象を、もっともっと明確に持ってもらえるようになりたいと思います。

池田:サービスの内容からも、宮本さんが仰られていたグローバル化の流れからも、「DAR」の持つポテンシャルが、2018年にもっと伝わっていくと思います。たとえば、リーチでインターネット広告を買うことや、オンターゲット率がわかることなどが、浸透していくでしょう。オンターゲット率は、今まで触れられたことのない、ある種"パンドラの箱"、それが開いてしまう状況にはなりますが、広告主にとってすごくメリットがあります。広告会社にとっても、DMA(指定マーケット地域)をどう活用するかという話につながっていきます。「DAR」の普及に伴って、インターネットの広告取引や、指標の考え方が大きく変わるはずです。そうなれば、「VRIとNDとの提携は、かなり踏み込んだものだった」ということも伝わっていくのではないでしょうか。

宮本:個人的には、デジタル広告の領域で、リーチという標準の物差しをつくるという爪痕を残したいと思っています。10年後、振り返った時に、「今は当たり前だけど、あのとき『リーチ』とずっと言い続けて、定着させたのは、VRグループとNDだよね」と言ってもらえるようになっていたいですね。

池田:私は、2018年が、「DAR」のインターネット指標元年になると信じています。

【前半】DARはデジタル広告の何を語るのか。 はこちら

※本記事は2018年に発刊したVR Digest 8-9月号(vol.565)に掲載されたものです。

※1 ニューヨークに本部を置く、Interactive Advertising Bureauの略称。デジタル広告の法的整備や各種標準化の動きを進めながら、デジタルメディア、デジタルマーケティングの発展を支援する団体

※2 ニューヨークに本部を置く、Media Rating Councilの略称。メディアメジャメント企業の監査やメジャメントサービスの認定審査を行うアメリカの業界団体

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