「イクメンは出世しない」は本当か

VRDigest編集部
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※当記事は2015年9月7日にVR LOUNGEに掲載されたものです。

「イクメンは出世しない」と某人気漫画の著者(注1)が発言して物議をかもしたことをご存知の方はいらっしゃるだろうか。数ヶ月ほど前のネット上のいわゆる"炎上ネタ"のひとつである。「仕事より子供の行事を優先する部下は云々」といった発言の趣旨から、イクメンだけにかかる話ではないのでは?...と個人的に引っかかってしまった。気になる方は各自検索いただくとして、これってやっぱり正しいのでしょうかね。話題の旬はとっくに過ぎてしまったが、子育てしながら働く会社員の1人として(出世欲は乏しいのですが^^;)この機会に喉に刺さった小骨を、データを検証して取り除いてみることにした。

 弊社の生活者総合調査データ(ACR/ex)を使い、イクメンを意識レベルと行動レベルで2タイプ定義して、それぞれ役職と個人年収を比較するとちょっとおもしろい結果がわかった。まずはそれぞれの定義からご説明。

<比較1【意識レベル】イクメンVS非イクメン>

35-49才で子供と同居する男性のうち、意識調査で「ワークライフバランスを大事にしている」と「家族とのコミュニケーションを大事にしている」と答えた男性をイクメンとし、どちらも答えていない男性を非イクメンとした。これは平たく意識差からミドルエイジのパパ達の違いを比較することが目的。

<比較2【行動レベル】イクメンVS非イクメン>

6才未満の子供と同居する男性のうち、一日平均の家事と育児を合わせた時間が75分以上(注2)の男性をイクメンとし、75分以下の男性を非イクメンとした。これは手のかかる低年齢児のパパに限定して、"自称"や"なんちゃって"を除き、実際に日常的な役割を担っていると思われる本物のイクメンたちはどうか、という理由から。

イクメンは稼いでいる!

 すると驚きの結果に。個人年収でいえば比較1の意識レベルでは、イクメンは平均602万円で非イクメンの517万を85万円以上、率でいえば15%以上と大幅上回る結果に。比較2の行動レベルでも同様にイクメンのほうが10万円高い結果となった。年収の多寡を社会的成功=出世とするならばイクメンのほうが出世している。「イクメン」足るに、制度や労働環境含め大手企業のほうが整っていることが多いこともあるかもしれないが、どうもそれだけではなさそうだ。

イクメンご安心あれ。管理職までなら出世は早い?!

 現在の職場での役職を比較すると、「課長以上~本部長クラスまで」は、比較1の意識レベルイクメンのほうが非イクメンより該当者が多かった。特に部長クラスではイクメンは4.1%、922人中36人程度いるが、非イクメンは45人中0人。比較2の行動レベルでは差はみられなかった。つまり、管理職レベルまでなら「イクメンは出世しない」ということはなく、むしろ有利とみるむきもできる。 これはきっとかつてより多様な人材がいる職場では、バランス感覚がありコミュニケーションを大事にする人の方がマネージメントに長けているからだろう。しかし「役員クラス」でみると意識レベルも行動レベルも非イクメンのほうが多く、経営層を目指すとなれば壁があるらしい。定義したような年齢で役員レベルとなると、日本企業では相当な出世頭となるが、かの著者が「出世」を役員クラスで指したのであれば、「イクメンは出世しない」は正しかった...。

グラフ

データ出典:ビデオリサーチ生活者総合調査(ACR/ex 2014年1-6月度調査 全国7地区計)より

イクメンよ、大志を抱け

 そもそも意識レベルではイクメン該当者は95%で圧倒的多数だ。だが、行動レベルになるとイクメンと非イクメンは逆転して2:8の関係になる。そうありたい思いがあっても、環境が許さないのだろう。だがこれからは育児に限らず、親の介護と直面する人は確実に増える。男性であっても家庭と仕事のバランスにギャップを感じる人はますます増える時代になり、働き方を変えていくことは働く人共通の課題になりつつある。さらに日本をとりまく課題を考えれば、超少子高齢社会、人口減少社会、産業界のイノベーション不足、グローバリゼーション、、、と難題は山積。過去の負の遺産ともいえるこれら課題に参与せず誰が大局を観られようか。きっとこれから「リーダーに求められる資質」の意識は変わっていく。

 先日ランチで隣の席の男性二人が熱心に保育園から家へのルートをいかに「最適化するか」について語り合っていた。また別な日に乗り合わせた地下鉄では、先輩男性が後輩男性に「洗濯物をタンスにしまうまでが洗濯である」という話を「ラストワンマイル」という言葉で指南していた。そろそろ世の男性も仕事以外に本気を出してきている。世の中が変わる日は近い!

注1:かつて課長から会長まで駆け上がるサラリーマン出世道を描き一世を風靡した漫画の著者である。
注2:75分という時間は総務省社会生活基本調査(H23)の6才未満時のいる世帯の男性平均が67分のためそれを上回る時間とした。

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