データでみる、シニアの「若返り」現象

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生活者データ
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※本記事は2016年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

現代シニアについては、本誌でもいく度となく取り上げ、現代のシニアは昔のような「高齢者ではない」ということをお伝えしてきました。

最近、日本老年学会が高齢者の身体状況について昔に比べて5〜10歳若返っている、という見解を発表したのを機に、私たちエイジング・ラボも、シニアの意識や行動が昔と比べてどう変わってきたのかを改めて量的データを元に検証してみました。

1.専門家の見解:身体的には、高齢者は5〜10歳若返っている

2015年6月、日本老年学会は「現在の高齢者は10〜20年前に比べて、5〜10歳は若返っていると想定される」と発表しました。

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高齢者に患者が多い心筋梗塞、脳卒中などの疾患で治療を受けた人の割合が低下、身体状況を示す指標のひとつである歩行速度(老化が進み弱くなると遅くなる)が10年前より11歳若くなっている、知的能力の検査では10年前の10歳若い人のスコアとほぼ同じ...などなど、身体的にはあらゆる面で若返っていることが確認されたのです。

身体が若返っているならば、意識や行動の若返りもデータで確認できるものがあるはず。今までは、定性的な情報でお伝えしてきたことが多かったのですが、改めて量的データで検証してみました。

2.ジーンズをはくシニア、20年前の2.5倍

20年前、60代のジーンズ所有率は3割弱に過ぎませんでした。今や60代の7割以上がジーンズを持っています。比較として20代のジーンズ所有率も掲載しましたが、若者はむしろここ2〜3年やや下降気味になってきているのに対し、ぐんぐんと右肩上がり、伸び方が顕著なことが分かります。

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ジーンズが日本でブームになったのは、1960年代後半から1970年代初め。ちょうど団塊の世代(1947〜49年生まれ・現在66〜68歳)が20歳前後の若者だった頃です。それ以降、しばらくの間ジーンズは「若者を代表するファッション」とされていました。ですので、30代40代になるとこの代の人たちは一旦はジーンズから離れました。ただ、若いときにブームを作り、もともとジーンズに抵抗がない人々です。この人たちのジーンズ所有率が高いのは、こういった過去の経験がベースにある中で、某国民的低価格アパレルブランドに 代表される、ジーンズを購入することが少なくなった年代に購入機会をつくる流通・小売業が登場したこと、それに伴い、どの年代が着用してもおかしくない定番ファッション化したことも影響しているものと思われます。

ちなみに、2015年の70代前半のジーンズ所有率は61%(Senior+/ex2015年調査)。団塊世代より1世代だけ上の彼らも、若い頃のブームに乗った人が多かったものと考えられます。

3.趣味はインドアからアウトドアへ。女性のみならず男性も気軽にお出かけ

20年前と現代の60代の趣味・レジャーを比較してみました。20年前の男性は、スポーツらしいものはゴルフのみ。そのほか、「読書」「日曜大工」「カラオケ」「釣り」「囲碁・将棋」、女性の20年前は、「洋裁」「書道」「読書」「音楽鑑賞」がランクイン。男女とも、比較的家や建物の中で行う趣味がランクインしているのが特徴です。

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一方、現代は男女とも「散歩」「ウォーキング」「街歩き」など、出歩く趣味がランクイン。女性のほうが男性に比べフットワークが軽くお出かけ好きと言われていますが、こうしてみると、男性もわりと気軽に家の外に出る人が増えてきているのかもしれません。また、男性でも「買い物・ショッピング」が趣味レジャーの7位に入っています。

そして、男女とも「ペット飼育」が入っているのが現代の特徴。さらに、20年前は旅行は「1泊以上の国内旅行」だったものが、「日帰り旅行」に変わっています。ウォーキングや散歩、街歩きなどで気軽に出かけ慣れているので、旅行も気軽な日帰りのほうがより選ばれるようになっているのかもしれません。

4.テレビ番組の嗜好も、より気軽なものへ

シニアと親和性の高いテレビですが、その番組への嗜好性にも変化が見えるところがありました。グラフは男性の60代の、テレビ番組ジャンルの「好き」率を時系列で追ったものです。「ニュース番組」に関する嗜好性は調査年によって上がり下がりがあるものの、平均するとほぼ一定といえます。一方、ダウントレンドが見えるのは「報道解説」。 特に2008年以降、下がり基調が顕著になっています。その反面、「情報バラエティ」はじわじわ上がっており、直近の調査時点では「報道解説」と並ぶスコアになっています。

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また、娯楽系番組では、「お笑い番組」と「娯楽バラエティ」はアップトレンド、「寄席・演芸」はダウントレンドになっています。

「報道解説」のような硬派な番組や、伝統芸能的な番組より、気軽に見られる番組の方が嗜好されやすい傾向にあるのは、実は60代だけではありません。一世代下の50代ではもっと顕著に表れてきています。

今のシニアだけでなく、今後シニアになっていく人たちに見えているこういった傾向は、数年後のテレビ番組作りの方向性に与える影響は少なくないでしょう。

この点については、私たちエイジング・ラボでも変化に注視していきたいと考えます。

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