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マーケット
2017年05月27日

調査データの分析から見た、人びとの幸福に重要なこと 幸福を考える

渡辺 庸人
マーケティング 事業推進局分析部
渡辺 庸人

※本記事は2016年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

ここでは、生活者の「幸福」を調査データから検討した研究成果を紹介します。

なお本研究は、法政大学大学院イノベーション ・ マネジメント研究科・木戸茂先生を相談役とした当社の若手社員による勉強会メンバーが実施しました。

生活者の「幸福」をもっと考える時代に

みなさん、幸福ですか?

人間は幸福になるために生きている。このようなやや大げさな言い方をしても、多くの方は納得されると思います。世の中の発展は、人びとが今よりももっと幸福になろうとする、そういう気持ちが原動力のひとつになってきたと言えるでしょう。またその中でも、特に経済的発展は、生活の向上や、さらには『幸福度』の向上に強く結びついてきたと言えます。

しかし近年、日本を含めた先進諸国では、経済発展(GDPの増大、所得上昇)だけでは、『幸福度』を高めるのには限界が来ていることが指摘されています。例えば、「幸福の国」として話題にもなったブータン王国ですが、国の発展の度合いを測るのにGDPではなく、GNH(Gross National Happiness/国民総幸福量)を使用しています。

また、フランスでは、政府諮問の委員会が、GDPのような経済的な指標から、人びとの『幸福度』の計測に重点を移すべきという結論を出しています。

さらに、昨年のノーベル経済学賞を受賞したアンガス・ディートンらも、一定の年収以上になると心理的な『幸福度』が上がらなくなるという研究を発表しています(Kahneman & Deaton, 2010)。

このような幸福を取り巻く社会状況の中では、「幸福」について考えることが、生活者の理 解のために今後重要になってくるのではないかと考えています。そこで、ビデオリサーチの若手社員勉強会による『幸福度』についての調査・研究結果についてご紹介したいと思います。

調査および分析を行う上で、2つの仮説を立てました。

まず、当社、ひと研究所の「VRわかものラボ」が注目した『将来への見通し』を、広く生活者全般に対しても適用。『将来への見通し』が明るいほど『幸福度』が高まるのではないかと仮説を立てました。

次に、社会学や経済学などで注目されている『ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)』が『幸福度』の向上につながるのではないかと考えました。『ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)』とは、簡単に言うと、生活者各々が持っている「社会や地域での人間関係の結びつき」のことを指します。端的に言えば、社会や地域での人間関係が豊かなほど、幸福になるのではないか、と考えました。

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分析結果

共分散構造分析を用いて、実際に質問した"観測変数"から、それらの背後にある"潜在変数"同士の関係性をモデリングし、"幸福の因果モデル"を作成しました【図1】。

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『幸福度』『将来への見通し』はそれぞれの対応する質問項目から構成しました。『ソーシャル・キャピタル』は、『人的ネットワーク量』『地域互酬性』『一般的信頼』の3つの概念に分割してそれぞれ潜在変数としました。また、仮説には無かった『ストレスフリー生活度』という潜在変数も組み込みました。

このモデルから言える結果を要約すると次のようになります。

『将来への見通し』が高まると、『幸福度』は高まる。

『ストレスフリー生活度』が高まると『幸福度』は高まる。 また、同時に『将来への見通し』も高まる。

『ソーシャル・キャピタル』が増加すると、『ストレスフリー生活度』が高まる。 つまり、間接的に『幸福度』を高める。

人びとが幸福になるためにはこのように、人びとがより幸福になるためには、将来への見通しを明るくし、ストレスフリーな生活を送ることが重要ということが、調査データの分析から示されました。また、人付き合いが豊かなこともストレスを軽減させ、間接的に幸福度を高めるようです。

この結果について、感覚的にはみなさんも納得いく点が多いと思います。今回、この感覚的な部分が、調査データの分析から示された意義は大きいと考えています。今後も、生活者と幸福の関係について検討していきたいと思います。

是非、みなさんもこのモデルの示唆を、ご自分にあてはめて、「幸福」についてあれこれ考えてみてく ださい。

『幸福度』への影響要因の研究

調査概要

調査手法 インターネット調査 調査対象 全国の男女15歳~74歳(有効:1356 サンプル)

調査日時 2014年11月28日(金)~11月30日(日)

調査項目

『幸福度』は、「現在の幸福の程度」を"幸せ"から"不幸"、「生活満足度」を"満足"から"不満"のそれぞれを11段階で質問。

『将来への見通し』は、「経済状況」「健康」「生活全般」への将来への見通しを"明るい"から"暗い"の7段階で質問。

『ソーシャル・キャピタル』は、一般的信頼(世の中一般の人を信頼できるかどうか等)や地域での人付き合いなどについて5段階で質問。また、「1週間での会話人数」「友人グループ数」「携帯電話の電話帳登録件数」などの個人的な人的ネットワーク量も質問。その他に、回答者の属性や、「ストレスが多い生活をしている」などの、生活に関する意識項目を 5 段階で質問。

[参考文献] Stiglitz, J. E., Sen, A., and Fitoussi,J(.2010)Mismeasuring Our Lives: Why GDPDoesn't Add Up(福島清彦 訳)(2012)暮らしの質を測る 経済成長率を超える幸福度指標の提案 スティグリッツ委員会の報告書,一般社団法人金 融財政事情研究会.)

Kahneman, D., and Deaton, A. (2010). "High income improves evaluation of life but not emotional well-being". Proceedings of the National Academy of Sciences, Vol. 107. No.38.

勉強会メンバー

マーケティング事業推進局 分析部

森本 栄一、渡辺 庸人、宮田 正晃、

熊木 友香子、沖田 耕宗、松本 歩、山田 尚樹

※本稿は、日本社会心理学会第 56 回大会(2015 年 10 月)にて発表された「幸福の因果モデルについての実証研究

<ソーシャル・キャピタル>と<将来への見通し>の影響力の検討」を元に執筆されました。

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