クーポン・プロモーションの理論と実際 12―クーポン広告テストマーケットの結果(3)―

VRDigest編集部
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本記事は1988年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

クーポン広告の本質見極め ―その2

 前号で、クーポン広告が小売店に与える影響を、配荷、陳列効果の面からみた。確実に配荷率をアップ、つまりチャネルのフェイス拡大が図れることが実証された。本号ではクーポン広告が消費者に与える影響を、商品に対するマインド効果の面からみてみよう。

2.マインド効果

クーポン広告が与えると思われる消費者の受容度、マイシド効果を、「広告」の役割である①ブランド名を認知させる②ブランドイメージの確立③商品(サービス)の用途・特徴を理解させる、そして、最終的に④商品に対するマインドを獲得する、の4点からみた。

マインド効果の判定方法次の通り。

判定方法

 4項目について、テスト前とテスト後に全く同一内容の調査を行い、その差をみるものである。しかし、期間内のマインド効果はクーポン冊子の影響だけとは考えられないため、コントロール地域(テスト地域と同じく首都圏で冊子を配布しない地域)を設け、両地域の差の比較を行うことにより、冊子以外の広告活動の影響を排除、冊子の効果を摘出することにした。具体的な手順は、テスト地域における冊子配布前と配布後の各項目の数値のアップ率を測定し、コントロール地域のアップ率と比較。配布地域のアップ率が大きかったときに、配布地域における冊子非接触者の数値と配布前とのアップ率がコントロール地域のアップ率とほぼ同じであった場合、テスト地域とコントロール地域のアップ率の差は冊子の影響とみなす。つまり、テスト地域の冊子非接触者は、コントロール地域と同じ条件下に置かれているものとみなすものである

<ブランド名認知効果>

 分析対象商品の平均ブランド名再認率は図1の通り。

・テスト地域は12.1ポイントのアップ、コントロール地域は4.7ポイントのアップ。両地域のアップ差は7.4ポイント。

・テスト地域における冊子非接触者の再認率は冊子配布前とくらべ3.3ポイントのアップ。

 この数値はコントロール地域のアップ率(4.7ポイント)とほぼ同じ。したがって、両地域の再認率のアップ差は冊子の影響が大であると推測される。

・特に、3回接触者では高い再認率を得ている。

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<ブランドイメージ効果>

 分析対象商品の出稿広告のクリエーティブ内容から、ブランドイメージに影響を及ぼすと思われる訴求ポイントを摘出。その項目のイメージ変容の差から効果の測定を行った。

・テスト地域のアップ率は3.9ポイント、コントロール地域は4.1ポイントのアップ。両域のアップ率はほぼ同じで、冊子がブランドイメージに与えた効果はみられない。

・3回接触者では高いイメージを獲得しており、冊子1~2回接触者への効果が薄いものとみられる。

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<商品の用途、特徴理解効果>

 ブランドイメージ同様、出稿広告甲クリエーティブ内容から商品の用途、特徴で目立つコンセプトを摘出。その項目の理解度の差から効果の測定を行った。

・テスト地域は10.4ポイントのアッフ:コントロール地域は6.7ポイントのアップ。両地域のアップ差は3.7ポイント。

・テスト地域における冊子非接触者の理解率は事前とくらべ6.8ポイントのアップ、との数値はコントロール地域のアップ率とほぼ同じで、両地域の理解率のアップ差は冊子の 影響が大であると推測される。

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<マインドシェア効果>

 意識上(第1想起~第3想起)にあるブランド名をその商品に対するマインドと想定し、シェアの変化からマインド効果の測定を行った。

・図のように冊子の影響は明確に出ている。

・テスト地域は6.4ポイントのアップ。コントロール地域は3.8ポイントのアップ。両地域のシェアアップの差は2.6ポイント。

・テスト地域における冊子非接触者のマインドシェアは配布前にくらべ3.4ポイントのアップで、コントロール地域のアップ率とほぼ同じである。

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以上のように、冊子によるマインド効果はブランドイメージを除いて明確にあらわれている。効果の数値の大小については軽々に論じられないが、テスト期間中の半年間に、分析対象商品の多くは、TV広告を始め大量の広告出稿、プロモーション活動を行っており、その中で冊子3回配布による効果としてこれだけ明確にあらわれていることは、高く評価されよう。

なお、ブランドイメージ効果が顕著でなかったことについては、次のように推測される。

① イメージ変容を促すには他のメディアのほうが適している。

② 冊子のクリエーティブ内容に商品の用途、特徴訴求型が多い。

③ 広告にクーポンが付くことにより、イメージ受容型よりも内容精読型になる。

④ 既存商品の場合、固定イメージが形成されており、冊子によるイメージ変容は難しい。

などである。逆説的に云えば、クーポン広告の場合、通常の広告よりも直接的な「売り」が意識されているものであり、イメージ訴求型のクリエーティブ与りは商品の内容、特徴を明確に訴えるべきといえよう。

3.マーケットシェア効果

 クーポン広告は流通の配荷率を高め、消費者のマインドを高めることが判明した。つまり、マーケットシェアの拡大が図れる二つの大きな要素を得たことになる。果してテスト地域においてマーケットシェアに変動は起きているのであろうか。

 図5はテスト期間中のテスト地域及びコントロール地域のクーポン対象商品の月間購入率の動きである。残念なことにテスト前の両地域の購入率が把握できていないため単純には比較できないが、テスト地域はコントロール地域の約2倍の購入率を得、コントロール地域とくらべ、3月以降購入率を伸ばす傾向をみせている。次にテスト地域におけるマーケットシェアの動きをみると図6のようになる。テスト期間を通して除々に上昇傾向をみせ、3回目のテスト開始直後の4月に大幅なアップをみせている。

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 このように、今回のテスト期間を通してマーケットシェアの拡大が図られていることが確認された。今回のクーポン・プロモーションは、残念ながらクーポンの利用そのものは思うように伸びなかった。しかしクーポン広告が持つ特質により、それなりに効果はあったとみるべきであろう。

クーポンにはいろいろなテクニックがあるが(本誌'88年1月号参照)、単なる販売促進を目指すテクニックの場合、ともすれば値引きと同じく一時的な販売増にとどまる可能性が強い。しかし、コミュニケーション効果を持つクーポン広告の場合、流通の対応、そして消費者のマインドが得られることにより、長期的なマーケットシェアの底上げを図ることが可能になる。ここにクーポン広告の本質がある。最近、クーポン先進国米国では、ハイテクを活用したシステムを中心としていろいろなテクニックが開発されている。その背景には、リデンプションレートの低下や、よりターゲットに効率的且つダイレクトにクーポンを渡そうとする考えがあるが、私はこの方向性には否定的である。何故なら、これらのテクニックは、クーポンの本質である商品のマインドを得ることを目的としたものではなく、より値引きに近いプロモーションとなっているからである。

                                (クーポン企画室 大木眞煕)

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