VRホームスキャン・データ分析事例(16)世帯ベースのプロモーション効果モデルの研究―(その2)

VRDigest編集部
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本記事は1989年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 前号では、1.研究の枠組、2.モデルの定式化、3.使用データ、4.パラメ一夕推定とモデルの検証-4-1.ブランド選択モデル、までを紹介した。この号では4-2.購買決定モデル、5.今回の研究の成果、6.今後の研究の方向性、という順に話を進めて行きたい。

4.パラメータ推定とモデルの検証

4-2購買決定モデル

 前号でも述べたが、ここでもう一度モデルの構造を簡単に説明する。ある消費世帯のある期の商品購買行動は、その世帯の商品在庫量とその商品種類のその時期の魅力度で決定される。商品種類の魅力度は、その世帯のチョイスセット(選択集合)に含まれるブランドのうち最も吸引力の大きいブランドのその値。ブランドの吸引力は、今回の研究ではその消費世帯がふだん利用することの多い店舗(複数)での価格とインストアブロモーションの実施嘩況に左右される。

 さて、モデルのパラメータ推定であるが、ブランド選択モデルの適用ケースと同じように何らかの基準で"同質''であると判断される消費世帯ごとにモデルを適用する方が望ましいと考えられる。何故なら、購買性向が在庫と魅力度のいずれか-方に敏感な世帯が存在する可能性や、またその感度のバランスも問題になる。ここでは、そのようなサンプル世帯のセグメンテーションからくる新たな問題を避ける為に、消費世帯ごとに52週間のデータを使ってパラメータ推定・モデルの適用例を紹介する。

 図6は、3つの消費世帯の過別購買(生起)確率と実際の購買時点を示す図である。この図は、折線の山が高ければ高い程購買生起確率が高いことを示す。この3世帯の推定購買生起確率と実際の購買時点をみると、いずれの世帯も購買確率のピークを示した過はほぼ必ず購買時点と合致していて、例外はまれである。逆に、購買時点での購買確率はすべてあるレベル以上に高いとは言えない。これはモデルで定義されたルール以外の行動であり、モデルの側から言えば予期せぬ非合理的な行動である。

 このモデルのパラメータ推定でも、ブランド選択のケースのブランドダミー変数の場合と同じく統計的に有意でなかったパラメータを除いた再計算は行っていない。このケースでは、サンプルNo.29の世帯の「魅力度」に対するパラメータは統計的に有意とは言えず、この世帯は「在庫量」にのみ敏感な世帯であるらしい。また、サンプルNo.22の世帯の30週以降の購買確率の値が低いことに若干の疑問が残るが、t一同質"な消費世帯をグルーピングして更に良いパラメータを求めることで解決できる種類の問題であろう。

vol249_11.jpg

5.今回の研究の成果

今回は、消費世帯単位の調査データを使ってそのブランド選択行動と商品種類での購買行動を推定する研究を行った。研究に使われたデータは、消費世帯ごとの商品購買データと消費世帯が利用している店舗(複数)のプロモーション状況データ(価格とインストアブロモーションの実施有無)である。説明データとしてはかなり少ないものではあったがロジット型モデルを使ったこの研究によって次の様なことが言えそうである。

 ①商品種頬内商品の購買行動(購買決定行動)は、推定された世帯内在庫量及び価格とインストアブロモーション状況からある程度推定可能である。

 ②ある期間内の購買行動の生起確率をマーケット全体のものとして推定する(購入世帯比率の推定)場合は、購買行動性向の似た世帯グループごとにモデル適用をする必要がある。(例えば、世帯内在庫量に敏感なセグメント、マーケット魅力度に敏感なセグメント、在庫・魅力度の双方に敏感なセグメントなど)

 ③商品種類に含まれるいずれかの商品を購入したことが分っている場合のブランド選択行動は、今回の説明データだけでもかなりの精度で推定・予測することが可能である。この場合、モデル適用は消費世帯を予めブランド選択性向に沿っていくつかのセグメントに分類したものごとに行うとかなりよい成果が得られる。

6.今後の研究の方向性

 今回の紹介は、前号の冒頭でも述べた通り昨年秋の日本マーケティング・サイエンス学会に研究発表されたものである。現在、その研究成果を踏まえたいくつかの改良や拡張研究が進行中である。今後の研究の方向性としては、およそ次のような事が考えられている。

①サンプルセグメンテーションに関して

 今回の購買決定モデルの運用場面でも、購買行動のよく似たサンプルをグルーピングする必要性に触れる箇所があったが、ブランド選択モデルの為のセグメンテーションと両方に通用するセグメンテーション手法の研究。或いは、セグメンテーションルールの2重化。

②購買決定モデルに関して

 今回のマーケット魅力度は、選択集合に含まれるブランド中最大の吸引力を充てているが、これを過去の経験に照らしてどれ位魅力的かを示す値に代える。

③ブランド選択モデルに関して

選択集合規定子θ(k) jをθ(k) jtとし、マーケティング変数や新製品登場などで変化するものに改良する。吸引力を定義する変数にテレビCM接触回数を加える。

④その他

 マーケティング変数データの拡充。

 研究事例の蓄積。

 以上のような改良・拡張研究を通じて、このモデルがマーケティングマネージメントの実務に役立つ消費世帯レスポンスモデルとして育てて行きたいと考えている。

                            (消費者分析部 八木 滋)

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