朝ドラ100作到達 視聴率から振り返るNHK「連続テレビ小説」

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朝ドラ100作到達 視聴率から振り返るNHK「連続テレビ小説」

1961年にスタートした「連続テレビ小説」は、今年、4月1日スタートの「なつぞら」で第100作を迎えました。「連続テレビ小説」は、朝に放送されていることから、"朝ドラ"と呼ばれ、時代を超えて長く親しまれてきました。

NHKでは100作到達に感謝して「朝ドラ100作!全部見せますスペシャル〜歴代ヒロインがチコちゃんに叱られる!?〜」を放送。そこで、視聴者から募集した"あなたのイチオシ朝ドラ"が発表されました。皆さんの心に残った、朝ドラはランクインしていたでしょうか?
今回は、朝ドラを視聴率と共に振り返ってみましょう。

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新聞小説みたいなドラマ

NHKの特設サイト「朝ドラ100」によれば、1960年代初頭は、テレビの朝の視聴が少なく、ラジオドラマが人気を集めていたことから、新聞朝刊の連載小説を意識した「連続テレビ小説」の放送を始めたとのことです。
第1作は、1961年4月開始の「娘と私」で、NHK総合の月曜から金曜の朝8時40分からの20分間の放送だったそうです。翌年の「あしたの風」からは、月曜から土曜の8時15分から15分間に変り、2010年4月の「ゲゲゲの女房」からは、8時から15分間の放送となって、現在に至っています。

また、放送開始から1974年度までは1年1作品でしたが、1975年度からは前期・後期の2作品制となり、基本的に前期は東京制作、後期は大阪制作となっているのは皆さんご存知でしょうか。例外として、NHKテレビ放送開始30周年記念の「おしん」(1983年度)、連続テレビ小説30周年記念の「君の名は」(1991年度)、放送70周年記念の「春よ、来い」(1994年度後期〜1995年度前期)は、1年間の放送でした。

現在は、NHK総合8時からの本放送のほかに、NHK総合の12時45分、BSプレミアムの7時30分、23時30分、さらに土曜日の午前にはBSプレミアムで1週間分まとめての放送もあり、様ざまな時間帯で視聴できるようになっています。ですが、昔から続いているNHK総合の8時が本放送と捉えられているため、「連続テレビ小説」という名称よりは、"朝ドラ"という通称がよく使われています。

日本の朝の生活とともに...

では、朝ドラはどのように見られてきたのでしょうか。【図表1】の視聴率推移をみると、1980年代までは、シリーズ平均が30〜40%台で推移し、1983年度の「おしん」は52.6%という高視聴率を記録しました。1990年代以降は徐々に視聴率が低下しましたが、2010年度の放送時間変更後にやや持ち直し、現在は20%前後となっています。この背景には、テレビを見ている視聴者の変化があります。まず、朝ドラだけでなく、他のテレビ番組も30%以上の高視聴率を記録しにくくなっており、これは、視聴者の番組嗜好が多様化し、1つの番組に集中しなくなったことの表れだと考えています。

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それに加え、朝帯の視聴者の生活行動が変化してきたことも大きいでしょう。朝ドラが始まった頃、視聴者は家庭の主婦が中心でした。夫や子どもたちを会社や学校へ送り出した後の家事の合間に、主婦は朝ドラを視聴していたようです。NHKサイト「マンガで読むNHKヒストリー・テレビを見ない時間帯を変えた"朝ドラ"」によると、朝ドラ放送時間帯になると、洗い物をする主婦の手が止まり、水道水が出やすくなったという逸話もあるようです。

しかし、徐々に女性の晩婚化や働く主婦が増加し、女性にとって朝はより忙しい時間帯となり、ゆっくり朝ドラを楽しめる人が少なくなってきました。一方、高齢化の影響で、リタイア後に"朝ドラ"を楽しむ高齢男性は増えてきています。
30年前から現在までの平日朝のテレビ視聴をみると、30年前に比べ、現在は6時台のテレビ視聴が増え、8時台・9時台は低下しています【図表2】。朝ドラの放送時間帯だけでなく、働く女性の増加や生活パターンの多様化で、早くから起きる人が増えた一方、日中の在宅が減少している様子が窺えます。

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最高視聴率は1983年度の「おしん」

先に紹介した「おしん」は、最高視聴率62.9%(11/12)を記録しました。これは、視聴率調査開始以来、テレビドラマ歴代最高視聴率となっています。
「おしん」は、貧しい村の娘の一生を通して、明治から昭和を描いたドラマで、貧しい子ども時代や奉公先での辛い生活が話題となり『おしんドローム』という流行語も生まれました。「おしん」と同世代の明治から昭和の時代を知っている主婦たちが、「おしん」に共感しながら視聴していたことも人気の要因のひとつでした。「おしん」の人気は国内に留まらず、世界の73の国・地域でも放送されたそうです。
「連続テレビ小説」の高視聴率ドラマをみると、他には「繭子ひとり」「藍より青く」など1960年代から1980年代のドラマが多く並び、各朝ドラの最高視聴率は、いずれも50%を超えています【図表3】。

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女性の生き方を反映した朝ドラ

朝ドラは、100作中の90作以上において女性が主役となっています。朝ドラスタート時は、小説が原作だったこともあり、男性が主役の朝ドラもありましたが、その後、女性の一代記を描くことが多くなりました。朝ドラ初期は、視聴者に戦争を体験した人が多かったせいか、戦争を体験した女性の一代記となることが多かったように感じます。その後、現代劇も増え、社会進出をした女性を描くドラマや、男性を主役にしたドラマも登場しました。私自身の中では、朝ドラは戦前・戦中・戦後を描いているイメージがとても強かったのですが、この原稿執筆のために100作を振り返ってみると、現代劇も多いことがわかりました。小説などの原作があるものもあれば、脚本家のオリジナル作品もあります。実在の人物をドラマ化した作品も多くみられます。最近は、等身大の女性も多く描かれるようになってきました。
また、朝ドラは主役女性をオーディションで選ぶことが多く、現在も活躍中の大竹しのぶさん(1975年度「水色の時」)、松嶋菜々子さん(1996年度前期「ひまわり」)、石原さとみさん(2003年度後期「てるてる家族」)など、朝ドラ出演後にも活躍しています。

流行語大賞を生み出した「あまちゃん」

皆さんの記憶に新しい最近の朝ドラにも注目しましょう。放送時間が8時からになった2010年度以降の視聴率上位です【図表4】。最も高いのは、2015年度の「あさが来た」。朝ドラとしては初めて江戸末期からを描き、序盤はちょん髷・日本髪の時代劇スタイルでした。近年は、実在の人物をモデルにした朝ドラが多く、「あさが来た」(大同生命創業などに参画した女性実業家・広岡浅子)、「とと姉ちゃん」(暮らしの手帖創刊者・大橋鎭子)、「花子とアン」(翻訳者・村岡花子)、「まんぷく」(チキンラーメン開発者・安藤百福、仁子夫妻)など、多くのドラマが高視聴率となっています。
2013年度に放送された「あまちゃん」は、東日本大震災をベースにしながらも、ヒロインがアイドルを目指すというちょっと変わった設定と、宮藤官九郎のちょっとコミカルな脚本、"潮騒のメモリー"など様ざまな要素が話題となり、あまちゃんが驚いたときに発する"じぇじぇじぇ"という言葉が、同年の流行語大賞に選ばれるほどでした。「あまちゃん」をテーマにしたイラスト"あま絵"などで、SNSに投稿する人も増え、それ以降の朝ドラもSNSでよく話題となっています。

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視聴者イチオシは「あさが来た」

NHKでは、今年の2月から3月にかけて、"あなたのイチオシ朝ドラ"を募り、3月29日に放送された「朝ドラ100作!全部見せますスペシャル〜歴代ヒロインがチコちゃんに叱られる!??」や「朝ドラ100作ファン感謝祭」(3/30)で、その結果が発表されました。1位は「あさが来た」、2位は「あまちゃん」、3位「ひよっこ」と、高視聴率を記録した80年代以前の朝ドラではなく、比較的新しいドラマが上位に入りました。
視聴率とはやや傾向が異なりますね。若い人から高齢層まで、幅広い年代が応募したとみられますし、現在に近い方が記憶に残っているのかもしれません。自分が見た時代時代で、心に残った作品が応募された結果だといえそうです。ちなみに私自身は、「ハイカラさん」「はね駒」「チョッちゃん」など古いものから、「あまちゃん」「カーネーション」など最近のものまで、好きな朝ドラが多数あるので、"イチオシ"を絞れずに、投票を見送りました。

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朝ドラ"あるある"

朝ドラは、「戦中・戦後を生き抜くヒロインが多い」「日本各地を舞台にしているためヒロインが方言を話す」「シリーズ最初は子役でスタート」「ヒロインの相手役にはイケメン起用」など、朝ドラには様ざまな"あるある"があります。
現在放送中の100作目「なつぞら」も、北海道が舞台で、主役は広瀬すずが演じますが、スタート週は子役が演じています。また100作記念ということで、これまでに朝ドラのヒロインを務めた松嶋菜々子、山口智子(1988年度後期「純ちゃんの応援歌」)、小林綾子(1983年度「おしん」)などの出演が発表されています。今後も、朝ドラゆかりの人たちの出演が期待され、楽しみです。
日本では100作も続くドラマ枠は朝ドラのみです。今後も私たちの朝の生活とともに、様ざまな話題を提供しつづけてほしいと願っています。

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