CI時代の企業イメージを探る

- VRDigest編集部
※本記事は1987年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。
―新聞六社調査報告書より(上)―
1.調査の概要
新聞六社(北海道新聞、河北新報、中日新聞=東京新聞、神戸新聞、中国新聞、西日本新聞)が、86年10月に実施した調査結果がまとまりましたので、その一部をご紹介いたします。
本調査はわが国の拠点7大都市の消費市場の動向と各地域市場の特性を解明し、あわせて各地域における新聞媒体特性や新聞広告の機能を明らかにすることで、各位のマーケティング・広告活動に資すことを目的とするものです。
今回の調査では、これまでに実施してきた「商品の使用状況」からはなれ、ここ数年多くの企業で行なわれてきたCIに注目し、「消費者からみた各企業のイメージ」をとりあげて分析を試みております。また、この調査テーマ変更に伴い、従来家庭の主婦のみを対象としていたものを男性(世帯主)又は女性(主婦)という設計に変更しております。
■調査の内容
・企業のイメージ評価と広告接触・商品の使用
・商品の所有およびこの1年の購入・予定
・ブランド選択
・マスコミ接触状況
・7都市における地元企業のイメージ評価
■調査の地域
札幌・仙台・名古屋・神戸・広島・福岡の各市と東京都区部
■調査の対象
2人以上の普通世帯の世帯主又は主婦
■抽出方法
無作為2段抽出
イ)第1次抽出単位(調査地点)を昭和60年の国勢調査区の区域とし
ロ)各都市ごとの標本数に応じて1地点あたり15標本となるよう地点数を決定
ハ)地点抽出は系統抽出
ニ)対象世帯は住民票から系統抽出
■標本数
5,122サンプル
■有効回収数
4,058サンプル
■調査期日
昭和61年10月29日(水)~11月4日(火)
■調査方法
調査員による世帯主又は主婦に対しての直接面接法と留置法の併用。
■調査の企画と設計
新聞六社調査研究会と㈱ビデオ・リサーチ
■集計機関
㈱ビデオ・リサーチ
2.企業イメージ調査について
ここ数年、多数の企業がCIを行ないブームといった状況であったが、現在もかなりの企業でCIが進行中である。今後もこれらCIは継続的に行なわれるであろう。
今回、新聞六社調査研究会ではこれらの動向に合わせ、世帯主及び主婦に対して、任意に選出した139企業のイメージを調査、ここに結果をまとめることになった。
同研究会では七年前にも同様の調査を実施したが、その時は主婦のみを対象としていたためある程度の制約があった。
今回は、調査対象を世帯主(男性)まで拡げ一般性をもたせるよう設計し、かつ、広告接触・商品使用状況なども併せて調査し相互の関連から多角的に企業イメージをとらえられるようにしてある。
家計の維持者である世帯主と、主に日常の消費にたずさわる主婦の企業イメージを把えている点、また札幌・仙台・東京・名古屋・神戸・広島・福岡の7つの拠点都市での共同調査で、地域別の比較がある程度可能であることなどこの調査の特長は多いと思われる。
以下の報告は、今回のイメージ調査結果のうち、80企業に絞り込んで分析した結果を概括的に説明するにとどめる。
80企業に絞り込んだのは集計容量など物理的な理由にすぎず、選択も全く任意に行ったといってよい。
3.企業イメージ因子分析
企業に対するイメージ評価要素として11項目を選び各企業ごとにあてはまると思われるアイテムをいくつでも答えてもらった。アイテムは右の通り。
分析は、絞り込んだ80社に対する回答結果をインプットデータとして使用し、企業イメージ評価の基本因子を抽出すべく因子分析(セントロイド法)を行った。(尚、因子解釈のためにバリマックス回転も行っている。)
因子分析を行うには、評価アイテムが少なく、抽出された因子軸は常識的にならざるを得ないが、抽出された因子に関する各変数の因子負荷量は<表1>に示した通りである。この結果、抽出された企業イメージ評価を表わす基本評価軸(因子)は4つにまとめられ、それらに対して解釈を以下のように行った。
<第Ⅰ軸> 「広告・宣伝力」に関する企業イメージ因子
「積極的」「時流に乗った」「広告・宣伝が上手」といった現代風の"ノリ"に関する項目の因子負荷量が高い。
<第Ⅱ軸> 「企業力」に関する企業イメージ因子
「将来性」「技術・開発力」「一流」といったその企業の"パワー"を感じさせる項目の因子負荷量が高い。(マイナス方向)
<第Ⅱ軸> 「鮮(きずな)力」に関する企業イメージ因子
「顧客を大切にする」「地域や社会に貢献」といった消費者と企業の"絆"に関する項目の因子負荷量が高い。
<第Ⅳ軸> 「信頼力(度)」に関する企業イメージ因子
「製品やサービスに信額感がある」「好感がもてる」といった"安心感"に関する項目の因子負荷量が高い。(マイナス方向)
4.因子分析の主な結果
消費者の企業に対するイメージが4つの評価軸で位置づけられることがわかったが、それでは、各企業がどのようなイメージを持たれているのか、新聞六社調査地域(7地域)全体での各企業のイメージ評価をみることにする。
イメージ評価をみるためには、各企業が各軸(因子)でそれぞれどの程度の評価得点を得ているかをみればよい。
1)業種別・各軸(因子)における評価
まず、各企業それぞれの評価をみる前に表2のような4業種に分類し各業種全体として、どう評価されているのかを分析した。(尚、業種分類ほかなり独断的に行ってある)
各軸(因子)における各業種平均の因子負荷量の絶対値はそれほど大きくないが、傾向としては次のようなものである。
<広告力・宣伝力>
因子負荷量(+)の方向で評価が高い。
時代の先端技術を駆使するハードな業種ほど評価が高い。
<企 業 力>
因子負荷量(-)の方向で評価が高い。
ここでも、ハードな業種の評価が高く、特に「電機」業種に対する評価が注目される。
<絆 力>
因子負荷量(叫の方向で評価が高い。
「自動車」「電機」の評価が高い。特に自動車はエリアマーケティングの結果によるものか。
<信頼力(度)>
因子負荷量(-)の方向で評価が高い。
「食品・飲料・酒類」「薬品:日用品・化粧品」が生活への萄着皮・商品の性格上評価が高い。
5.各業種別・男女別イメージ評価
次に因子分析以外のデータで分析対象80社の業種別・男女別企業イメージ評価の平均をみておく。(データは7地区総合)
次の図1が各業種の企業イメージの単純平均であるが、
〔食品・飲料・酒類〕
広告宣伝、信頼感、伝統についての評価が高い。
〔薬品・日用品・化粧品〕
広告宣伝についての評価が高い。
〔電 機〕
一流、技術、将来性についての評価が高い。
〔自 動 車〕
電機と同傾向である。
次にそれぞれの業種を男女別にみていくと、「食品・飲料・酒類」「薬品・日用品・化粧品」では男女間で差はみられないものの、「電機」「自動車」では男性の評価が全般に高くなっている。しかしながら、これは男女のその業種に対する知名度の差と同程度のもので、結局性別による企業イメージ評価には差がないといえるだろう。(表3参照)ただし、この調査でとりあげられている企業は日本の代表的なものだけである点は考慮すべきである。
6.広告接触・商品使用程度別企業イメージ評価
その企業の広告接触・商品使用程度によって、イメージ評価がどう変化するのかを「食品・飲料・酒類」関連企業(35杜)を例にとり、簡単な分析を試みた。
i)広告接触程度別イメージ評価
広告接触程度のアイテムは、次の3つである。
1.その企業の広告をよく見かける
2. 〝 をときどき見かける
3.その企業の広告は見たことがない
この1~3の接触程度別に企業イメージの平均(35社のイメージの単純平均)をみたのが図2であるが、図のとおり広告接触が多いほどイメージ評価は高くなっており、特に「広告・宣伝が上手」「製品やサービスに信頼感がある」「将来性がある」の3項目で差が大きい。従って、広告による刺激は、企業イメージを大きく左右するといえそうである。
ii)商品使用程度別イメージ評価
商品使用程度のアイテムは、次の3つである。
1.その企業の商品をよく使っている
2. 〝 をときどき使っている
3. 〝 は使っていない
この1~3の使用程度別に見ても(図a)、広告接触同様の傾向がみられるが、各アイテム間の差は広告のそれよりも大きい。
(市場調査第一部 野原 久男)