US Media Hot News 米国で話題!マイカーをすっぽり包んだラップド・アド

VRDigest編集部
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※本記事は2000年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 高層ビルの壁面全体やバナナについた小さなシールなど、あらゆるものを広告媒体に変えてしまう米国で、今度は個人の乗用車を広告ですっぽり包む手法が登場しました。その名も「オートラップ広告」。

宣伝カーよろしくヤフーやエキサイト・アットホームなどロゴですっぽり覆われた"走る広告塔"は米国西海岸を中心に広がり始め、全米で話題を集めています。

オートラップ広告を手掛けるのはサンフランシスコに拠点を置く"マイフリーカー・ドットコム"や"オートラップス・ドットコム"など。奇抜な広告に期待するスポンサー企業と広告掲載料に惹かれて集まるマイカー所有者を取りまとめます。

"フリーカー・ドットコム"や"ドライブアド・ドットコム"といったベンチャー企業も市場に参入し、ラップド・カー(ラップで包まれた車)はますます増えそうです。

オートラップス社の場合、マイカー所有者は18歳以上で基本的に本人がドライブし、過去1年間に違法庭草などで車を牽引されたことがないなどを選定の前提にしています。その上でスポンサー企業のターゲットに見合う走行距離、走行エリア、時間帯といった条件を満たす車を選び、いったん選ばれるとオーナーは月に最低2回の洗車や常時戸外に駐車することなどを義務付けられます。

 自動車を提供する代わりにオーナーが受け取る料金は月々350ドルから500ドル前後。広告契約を前提に新車を購入したり、ラップ済みの自動車をタダで借り受けることも可能です。契約期間は広告主のキャンペーン期間に合わせて1ケ月もあれば2年もありと様々ですが、広告主とオーナーの双方で合意すれば、期間の短縮や延長ができます。

スポンサー企業が支払う金額は、ラップ作業にかかる約3000ドルに加えて月々2000ドル前後と決して安くはありませんが、主要な高速道路にビルボードを立てた場合に支払う毎月10万ドル相当のコストよりはずっとお徳です。しかも、宣伝カーですから移動して多くの人目に触れることができ、街角に止めてサンプルを配布することもできます。

 大胆な発想で人目を引いているラップド・カーですが、実は最初に登場したのが1970年代後半で真新しい手法ではありません。ただし、当時は自動車のボディに直接ペンキで広告を描いたため、多大な人手と時間を要し、回転の早い食品産業やファッション産業には向きませんでした。それがデジタル画像をビニルシートに焼き付ける印刷技術の登場で制作時間が一気に短縮され、複製も容易になりました。シートは粘着性のある特殊フイルムで雨風に強い全天候型。印刷の粒子を粗くしたおかげで内側から外が見える「シースルー」加工が施され、自動車の窓まですっぽり包んでも運転に差し支えありません。シートの貼りつけに要する時間はたった8時間で装着中は自動車の表面を保護でき、はがす時にも傷をつけません。

 車の位置を確認できるグローバル・ポジショニング・システム(GPS)の開発もオートラップ広告の普及に一役買いました。GPSは無線を利用した探索システムで、地上を走っている車の速度、時間、場所を24時間追いかけることができます。オートラップス社では4分ごとに情報を集めて広告主に1ケ月分のデータをまとめて報告し、広告主は契約した車の走行状況を把握できます。

 オートラップス社を起業したダニエル・シフリン氏は交通渋滞に巻き込まれた時にこのビジネスを思い付きました。西海岸では通勤・通学ラッシュで高速道路上に車が長い行列を作るのは茶飯事です。その間ドライバーはカーラジオを聴いたり数珠つなぎの車を眺めるのがせいぜいです。そこで、車を広告に変身させたら効果があるのではと着想しました。

 おりしも米国は屋外広告が花盛りで、今や50億ドル産業です。年間の成長率は10%前後で、新聞やテレビの成長スピードをはるかに上回っています。好景気を追い風に企業は広告費用を拡大しており、これからも成長が期待できる分野です。従来はビルボードが一般的だった屋外広告ですが種類も豊富になり、歩行者の多いニューヨーク市にはビルの壁面にスナック会社が宣伝する巨大なピーナッツ缶の動く模型が登場したり、飛行機を模った航空会社の立体広告が出来ました。都市部では屋外広告のスペースが不足しはじめ、これを知ったシフリン氏が「車こそ最後に残された屋外広告スペースだ」と思い立って早速、ビジネスに乗り出したわけです。

サンフランシスコを拠点に始めた事業は今ではニューヨークなど10都市に広がり、今年に入って100万ドル以上の契約がまとまりました。広告塔"予備軍"として名前を連ねる自動車オーナーも2万3千人を越え、スポンサーが付くのを待っている状態です。すでに街角を駆け回るラップド・カーの評判も上々で、間近に見たくて近寄ってくる人や写真に収める人などもいるそうです。

 しかし、こうした広告の氾濫に反対する声もあります。広告に覆われた車を家の前に停めるのは、看板を家の前に立てるのと同じことで「美観を損ねる」という声や運転中のドライバーが広告自動車に気を取られると「事故につながり危険」といった懸念などです。あたり一面の全てが広告塔に変えられた姿を見まわして、「広告に食傷気味」という声もあります。

今は奇抜なアイデアにスポンサーも自動車オーナーも消費者も飛びついていますが、ラップドカーが町に溢れるようになってしまえば、ただの車同然です。どこまで新鮮さを保ちながら最大の効果を引き出すか―――今後の広告展開が気になるところです。

Video Research USA, lnc.

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