ラジオのはなし デジタル概論編(第1回)

VRDigest編集部
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※本記事は2000年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 前号まで、しばらく測定機の話題が続きました。この連載の締めくくりとして、ここ最近頻繁に使われるデジタルという言葉について、身近な例を挙げながら、その本質にせまってみましょう。

【アナログとは?デジタルとは?】

 Aさんの体重を測定することにしましょう。

【図1】がAさんの1週間の体重変化の真値だとします。Aさんには6時間おきに、体重を計っていただき1kg単位の調査表に記録するものとします【表1】。

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 実は【図1】こそアナログの実体であり、また【表1】がデジタルです。つまりデジタルとはアナログをサンプリングし数値化したものです。

【デジタルは本当に美しいのか】

 ここでは「どれほど美しい」とは、真値にどれだけ近いかということになります。【図1】のデジタルデータをアナログデータに戻して比較してみましょう。サンプリングですから、ある時点の瞬間における測定値だけが存在する事になります【図2】。アナログを別名で「連続」。デジタルのことを「飛び飛び」とも呼びます。これは両者の違いを説明する時によく用いられる言葉ですが、実はこういう意味です。

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プロット点の間を推定曲線で埋めてみましょう【図3】。

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 実際のデジタル製品の電子回路の中でも、デジタルをアナログに戻す際にはLPF(ロー・パス・フィルター)と呼ばれる丸め回路を通し、全く同じことを行います。丸めないとアナログ(連続)にはならないものがデジタル(飛び飛び)なのです。

 さて【図3】の斜線の部分が真値との誤差です。デジタルとアナログどちらが美しいかは、あえて語るまでもないでしょう。アナログこそ真備で、デジタルは近似値なのです。

【きれいなデジタル、きたないデジタル】

 さて調査表を0.5kg刻みにすれば、どうでしょうか。もちろんこれは正しい考え方です【図4】。あるいは記入のインターバルを3時間おきにする方法もあります【図5】。

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 つまりデジタルにはきれいなデジタルときたないデジタルが存在します。盲目的に「デジタル=美しい」と解釈するのは誤りです。昔のアナログ携帯電話と今のデジタル携帯電話の音の差を思い出して下さい。

【きれいなデジタルはでかい】

 もうひとつ、【図4】・【図5】のデータ量が、表1に比べて大きなサイズになったことにも着目して下さい。あたりまえのことですがこれもデジタルを語る上で、非常に重要なポイントなのです。サンプリングポイントを2倍にすれば、確実にデータ量は2倍になります。これはお金だけでなく、伝送路容量など、いろんな意味でのコストがよけいに掛かることを意味しています。これさえなければ、世の中すべて「きれいなデジタル」を使うでしょう。

【なぜわざわざデジタル化なのか】

 音声信号にデジタルを適用する流れをみてみましょう。

 電話などで誰かと会話する場合、「口→昔声(アナログ)→デジタル化→音声(アナログ)→耳」という工程をたどります。始めと最後はアナログである点は、当たり前で忘れがちな点なので注意が必要です。人間の耳や目はアナログしか知覚できないからです。このように、多くの場合では、デジタル化とは、(入口・出口はアナログで)途中部分だけを-時的にデジタルに置き換えることを意味しています。アナログのまま扱えば済む事をわざわざそうします。にもかかわらずアナログが真値ですから、デジタル化で真値を超越することは絶対にないのです。真値こそ真値なのですから。

「デジタルは美しい」。よく耳にする言葉ですが、ではこれは嘘なのでしょうか?

 次号をお楽しみに。

技術開発局 技術開発部 田中 博

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