ラジオのはなし デジタル概論編(第2回)

VRDigest編集部
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※本記事は2000年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 

デジタルとアナログの話の第二回です。

【デジタルよりアナログがきれい】

 あるビデオカメラのCMで、「光学式ズームだからきれい」と、デジタルズームと光学ズームの絵を比較していました。

 そういえば数年前「デジタルズーム」という言葉にひかれてカメラを買ったが、全然きれいではない。"ズームアップするとモザイク状みたいになるだけだ"という相談を受けたことがあります。

 デジタルズームというのは、例えば1週間×年4回の調査結果から365日データを推定値で作ることです。一方、光学式ズームは望遠レンズで画像を拡大しますから、実際に365日調査を実施する場合に相当します。

【デジタルは近似値】

 デジタルとはサンプリングデータのことです。刻一刻と変化している真実の事象(アナログ)をコマ落しのように、あるタイミングで数値化したものです。

 タクシーの料金メータはデジタルの概念にとても似ています。ある一定距離で金額が更新されます。これがデジタル理論のサンプリング間隔です。下車する寸前にカチャツとメータがあがるのは誰しも気分の良いものではありません。そこでよりフェアーにと、この更新距離を短くしたとします。500mだったものを10mにしても、まだ不正確だとおっしゃる方がいるかもしれません。1cmにし、1ミクロンにし...。そして最終的に「完全なる連続」になったものがアナログなのです。

 また数値目盛りの細かさもデジタルの重要なパラメータです。メータが100円刻みであがるのはアンフェアーだという主張があったとします。10円刻み、1円刻みでは、1銭なら...どんどん刻みを短くしていき、やはり最終的に「完全なる連続」になったものがアナログです。

 先月号でデジタルにも「きれいなデジタル」や「きたないデジタル」があると書きました。今月号の言葉で表現すれば100Kmに1回100万円ずつ課金されるタクシーメータが「きたないデジタル」でしょうか。しかしいくらアナログが公正な真値であるといっても、小数点以下無限大の料金を請求されても払いようがありませんね。

【デジタルは記録できる】

 さて今月の本題に入ります。デジタルの利点。言い換えればアナログの欠点とは何なのでしょうか。実はその真値のままでは非常に扱いづらいことにあります。もし何かの変化の様子を記録しようとすると、ある時刻の瞬間での値を、小数点以下を切り捨てるとか四捨五入して丸めないと、ノートには書けないのです。【図1】

【図1】デジタルの記録

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 デジタルは、時の経過とともに次々過去へ消えていく真値を丸めて数字化し記録したものです。いつでもどこでも必要な時に再現できます。そのため、継ぎはぎや再編集には最適です。アナログは刻一刻と変化する様子そのものです。どうしてもその様子を記録しようとすれば地震計のペン式記録紙のように時刻軸方向に紙を進めながらその様子をそのままに保存するしかないのです。【図2】

【図2】アナログの記録

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 テープレコーダ・VTR・レコード全て時の流れに合わせて、記録媒体を動かします。再生する時は、記録する時と完全に同じ速度で動かせた場合のみ真値が再現できます。速度ムラがあればそのまま誤差になります。アナログは本来的に記録には不向きで、極めて劣化しやすい生ものです。

【デジタルはノイズに強い】

 デジタルを「1と0の世界」などと説明する書物を目にされた方も多いでしょう。デジタルとアナログの本質的な違いは「連続」と「飛び飛び」にあります。ですからあえて「1,0」の話には触れませんでした。「1,0」は信号を遠くに送ったり、ノイズの多い環境下を通過しても信号が劣化しないという「伝送」上でのメリットだからです。「伝送」しないでアナログとデジタルをリアルタイムに、その場で勝負させればアナログの方が美しいでしょう。所詮デジタルは近似値なのですから。しかし何かに記録して再生したり(アンプからレコードに伝送して、再びレコードからアンプに伝送)、放送のように電波や電線で遠くに送ろうとすると、近似値でしかないデジタル以下のクオリティになることがあります。

 デジタルは上(1)か下(0)だけに振る手旗信号で、情報を伝えます。米粒ぐらいにしか見えない旗手でも、旗が揚がったか下がったかだけを見分ければよいのです。たとえば上に2回、下に1回なら「あ」などと約束事を決めておくのです。しかしアナログは旗で空に文字を書くようなものです。族の動きを注意深く見守らないといけません。また風で旗がパタパタすると、読み手が誤読するかもしれません。

 こういった記録・保存・再生・編集などに対する利便性と、外部からの攻撃(ノイズなど)に対して堅牢なことがデジタルのメリットです。ただし一方的にデジタルがアナログより優秀ではなく「風が強い日には」という前提条件が付くことを忘れてはならないでしょう。

                              技術開発局 技術開発部 田中 博

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