US Media Hot News レストランガイド「ザガット」誌の飛躍 ~iモードでの成功で弾み~

VRDigest編集部
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※本記事は2000年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 レストラン・ガイドと言えば日本ではフランスの「ミシュラン」が有名ですが、米国では「ザガット」が一番人気です。

 限られた数の食評論家の意見ではなく、多数の一般消費者が採点したアンケート調査で成り立っているこのガイドブックは、その公正な評価方法が受けて、1979年の創刊以来、ファン層の根強い支持を得ています。発行部数はニューヨーク版だけで毎年65万部を超えており、まさしくベストセラー・ガイドブックです。グルメでなくとも、たいてい会社に一冊、あるいは家庭に一冊置いてあるという必携本です。

 最近では東京版が発売され、NTTドコモの「iモード」でサービスを提供するなどしており、日本でもじわじわ知名度が高まっているのではないでしょうか。

 このザガットが最近事業拡大を急ピッチで進めており話題を呼んでいます。今まで本以外の媒体への進出を固辞していたザガットですが、インターネット上にウェブサイトを開設。運転資金も、これまで個人のポケットマネーに頼っていたのを今年2月に初めて外部から調達し、3100万ドルを集めました。11月には、これも初めて外部から最高経営責任者(CEO)を招碑。40人そこそこだった社員数も半年余りで約130人に増えました。

 新生ザガットが目指しているのは、グローバルな規模でレジャー全般のガイド誌を作成することです。具体的な目標として、向こう2年間に、海外も含めて新しく100都市のガイドブックを創刊する計画です。多様メディアでの事業展開も視野に入れており、すでに始めたウェブのほか、テレビやラジオにも進出したいと意欲的です。レストラン情報だけでなく、ホテル、リゾート、娯楽をまとめたガイドブックも出す計画で、試しに今年発売した「ニューヨーク・ナイトライフ」は好評を得ています。

 ザガットはもともとその名の通り、ザガット夫妻の趣味としてスタートしました。お互いにイエール大学出身の弁護士というインテリ・カップルのもう一つの大きな共通点は「食べることが大好き」なこと。夫人のニーナさんは「味にこだわる食通(グルメ)」で、夫君のティムは「味と量にこだわる食通(グルマン)」と自ら称する通り、ふたりとも美味しいものを求めて出歩くのが大好き。高級フレンチからソウルフードまでと、星の数ほどのレストランがひしめくニューヨークに住み、毎晩のようにレストラン探訪を繰り返していました。そのふたりの食通ぶりは、恰幅の良い体格に表れています。

 そんな夫妻がある日、レストラン評論家が薦めるお店で食事をした際に、評判との違いにひどく落胆しました。そこで「本当に信頼できるレストラン情報誌を作りたい」と思い立ち、グルメ仲間に呼びかけて食事をしたことのある店を採点してまとめたのがザガット誌のはじまりです。

 採点内容は「料理」、「店内インテリア」、「サービス」の3項目で満点は各30点。レストランの名前、住所、電話番号はもちろん、営業時間や使用できるクレジット・カードの種類、平均的なディナー価格に飲み物1杯分加えた料金を目安の価格帯として紹介しています。これに回答者の感想をそのまま加えているため、「公正な情報が得られる」として受け入れられ、ザガット誌は一躍グルメ界のバイブルとなりました。今では世界各国に10万人以上のモニターが散らばり、45都市にある2万軒以上のレストランを案内しています。

 初めは片手間でガイドブック作りに取り組んでいた夫妻ですが、夫君のティムは87年から、夫人のニーナさんも90年からガイド制作を本業に切り換えました。今年からは息子のティム2世も参加。新しく迎えたCEOは米金融大手のアメリカン・エクスプレスや通信大手のベライゾン・コミュニケーションズでマーケティング畑を渡り歩いてきたベテランで、ザガットの人的戦力は最高潮に達しています。

 正直なところ、ここまでザガットを大きくすることは夫妻の青写真にありませんでした。人気のガイドブックとして世に知られるようになってから、ひっきりなしに事業拡張の誘いはありましたが、「自分たちの趣味の範囲で充分」と誘いを固辞し続けてきました。その考えが変わったのは日本のNTTドコモによる「iモード」サービスの成功がきっかけです。ザガットの東京版ガイドブックを作成する機に、ドコモの呼びかけでiモードでレストラン情報を流す試みをしたところ大ヒット。あまりの反響に驚いた夫妻は、「これは事業として想像以上にいける!」と自信を得たと言います。その後の躍進は前述の通りで、今後の事業展開が期待されるザガットです。

 しかし、この躍進ぶりに警鐘を鳴らす見方もあります。多様メディアでサービスを展開した場合、お互いのシェアを奪うのではないかというのがそのひとつです。特に心配されているのは、ブックの売り上げとウェブサービスの相殺です。今後2年間で100都市を加えるというゴールが壮大すぎるという意見もあります。ザガットは地元のレストラン通の声をまとめた調査本です。充分な数の信頼できるモニターを短期間に集められるかが疑問視されています。

 ガイドの内容をレストランからレジャー一般に広げることで、競合相手が増えることも心配の種です。レストテンというニッチ市場に絞ってきたからこそ、調査方法や評価の公正さが受け入れられて大きくなったザガットです。「食」は生活の基本であり、万人が気軽に楽しめる娯楽ですが、ホテルやリゾート、ナイトスポットとなると話は別です。ガイドを必要とする人は限られてきますし、無料で手に入る観光ガイドで十分という声もあります。

 今後注目すべき点は、"レストラン・ガイドのザガット"がどこまでその殻を打ち破り、"新生ザガット"をブランディングできるかどうかということではないでしょうか。

Video Research USA, lnc.

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