US Media Hot News AOLとタイムワーナーの"世紀の結婚''が成立!

VRDigest編集部
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※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 昨年1月に世間をあっと驚かせた『AOLとタイムワーナーの合併』発表から約1年。両社の株主や欧州委員会などから許可を取り付け、11ヶ月に及ぶ審議の末にようやく最大の難関とされていた米連邦取引委員会(FTC)から、昨年12月未にゴーサインが出ました。あとは米連邦通信委員会(FCC)のハードルが残っていましたが、1月11日についに"世紀の結婚"が実現しました。合併後の社名は「AOL・タイムワーナー」。メディア界の大御所とインターネット業界のトップを組み合わせた巨大企業が誕生しました。

 合併承認の引き換えとしてFTCが新生AOL・タイムワーナーへ課した条件は、急成長するインターネット接続業者(ISP)全体を統制する上で大きなインパクトを与えそうです。その条件とは、1)AOLより先に少なくとも1社の有力ISPにタイムワーナーのケーブル網を開放する、2)AOLのサービス開始後から90日以内に、さらに2社のISPにケーブル網を開放する、3)タイムワーナーのサービス地域内でAOLのDSL(デジタル回線)サービスを展開し、そのサービスの内容や料金体系を地域外と等しくすることなどで5年間有効です。

 FTCが懸念していた事態は、合併によって家庭向けのネット接続や双方向テレビといったブロードバンド(広域帯)サービス市場での自由競争が奪われ、ケーブル回線に代わる通信手段であるDSLなどの成長が阻害されることでした。それが今回の取り決めにより、「オープンで自由、かつ多様性を備えた企業の誕生を保証できた」(FTC)といい、AOL・タイムワーナーは一介のISPとして、市場を独占するどころか健全な成長の牽引役になるかもしれません。

 ところで、新会社は一体どんな顔を持つのでしょうか。そもそもAOLは1985年に設立されたパソコン通信サービス会社です。S・ケース会長の指揮のもとで順調に事業を拡大してライバルがインターネットの波に呑まれて消えるのを横目に急成長。会員数は現在約2600万人で、1999年の売り上げは約48億ドルでした。

 対するタイムワーナーは1922年に書籍のタイム社から出発し、媒体を増やして巨大メディアに成長しました。各事業は粒ぞろいで、音楽のワーナー・ミュージック・グループは、マドンナやシェールといった大スターを抱えて15%近いシェアを獲得しており、映画・テレビ番組制作のワーナー・ブラザーズは、ヒット映画「ユー・ガット・メール」や超人気テレビ番組「ER-緊急救命室」などの生みの親です。

 出版事業のタイム社は、「タイム」、「ピープル」など32種類の雑誌を発行し、読者数は1億2000万人にのぼります。ほかにもニュース番組局の「CNN」、映画番組局の「HBO」といったケーブル放送事業を展開し、どれも単体でやっていけるほどの実力です。しかも、AT&Tに次いで全米2位というケーブル網を所有。光ファイバーを利用した回線は、電話回線より情報の伝達量もスピードも遥かに優れています。1999年の売上高は約268億ドルで米国が誇る優良企業のひとつです。

 しかし、この優良企業もネット事業は誤算続きでG・レビン会長は頭を痛めていました。かねてから時代を変えるテクノロジーに敏感なレビン会長です。AOLとの合併という絶好のチャンスを見逃すことなく突き進みました。AOLよりも規模や売上高で格段に大きいタイムワーナーですが、ネット界ではベテランのAOLに道を譲り、新会社の会長職はS・ケース氏、自分は最高経営責任者(CEO)に収まって経営を指揮することで合意したのです。

 新生AOL・タイムワーナーは「かつて存在しないユニークな企業になる」と評判です。高速のケーブル網を通じた様々なサービスが出現し、雑誌の販売方法からテレビの見方まで、我々の生活スタイルを一変しそうです。事実、両社は合併後すぐに双方向テレビの実験を開始して、視聴者がカメラの角度を自由に変えたり画面上の人物が着ている洋服を即座に注文できるような技術を試す計画です。

 AOL・タイムワーナーは今のところ、向かうところ敵無しです。全米ネットのABCブロードキャスティングを抱えるウォルト・ディズニーやゼネラル・エレクトリック(GE)、マイクロソフトでさえも

AOL・タイムワーナーに真っ向から対立するのは困難でしょう。

 ただし、多大な期待と背中合わせにリスクも当然持っています。AOLがタイムワーナーを選んだのは、メディア資産に加えてインフラ資産が目当てですが、そもそもケーブル回線が次世代通信を担うとは限りません。最近、携帯電話やハンドヘルドPCなど無線通信が目覚しい普及を遂げています。衛星放送も徐々に契約者を増やしており、有力プレーヤーになる望みを残しています。DSLも電話会社の後押しを得て成長する兆しです。

 また、企業文化の違いも大きな心配事です。タイムワーナーは長期計画型の企業ですが、一方AOLは一般ビジネスの1年が7年に相当すると言われる"インターネット・イヤー"で生き残ってきた会社です。合併による相乗効果が企業文化の衝突の前に消えるリスクは大きく、事業提携にとどまった方が良かったとの見方もあります。不協和音はすでに生じているとも言われ、先行きを懸念する声もあります。

 21世紀の幕開けにふさわしい巨大メディア企業が誕生しますが、結果は吉と出るか凶と出るか。ケース&レビンの舵取りに業界の注目が集まっています。

Video Research USA, Inc.

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