デジタルメディア教室(4)~デジタル放送時代の視聴率~

VRDigest編集部
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※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

■はじめに...

 昨年12月に始まったBSデジタル放送。今年末から来春にかけて予定されている東経110度CS。2003年以降の地上波デジタル放送。デジタル化は着々と進行しつつあるようです。一方、通信の世界ではブロードバンド化が進んでいますム

また、家電のデジタノ叫ヒやモバイルの出現は、今後生じるであろう変化に拍車をかけることになりそうです。

 このような時代においては、メディアビジネスそのものが形態を変えていくことになるかもしれません。その意味では、今後「視聴率」も示す内容刊吏われ方が変わってくるかもしれないでしょう。これは当社にとっても、非常に重要な問題です。

 ここではそうした課題認識を踏まえ「デジタノ叫ヒ」という技術的な変化が、現行の視聴率にどのような影響を与え、その変化にはどのように対応していくことが考えられるのか?ということについて触れてみたいと思います。

■デジタル放送時代の変化とは?

 放送のデジタル化について語られる時、そのキーワードには「多チャンネル化」「高画質化・高音質化」「高機能化」の3つがあがってきます。これに前述した通信や家電などの変化を加味すると、デジタル放送時代のテレビの特徴は大きく変わっていくことが予見できます。それは、これまでのテレビが「不特定多数に」「同じ情報を」「一度に」「一方向で」送り放っていたのに対し、デジタル放送時代のテレビでは従来の特徴に加えて「特定個人に」「異なった情報を」「各々が知りたい時に」「双方向で」やりとりできるようにもなることだと考えられます。

 当社の現行の視聴率定義は「自宅内視聴」「据え置き型テレビ」「リアルタイム視聴」「テレビ放送のみを測定」となっています。これはすなわち「これまで自宅外視聴は視聴率に含んでいなかった」「測定対象のテレビ種類が限定されていた」「録画再生視聴は視聴率に含んでいなかった」「双方向などの新陳能は測定対象としていなかった」ということを示しています。

 この4つに、デジタル時代のキーワードをあてはめると、現行の視聴率は順番に「モバイル」「マルチメディア」「タイムシフト」「インタラクティブ」という変化に対応できていないことが指摘できます。 もちろん、こうした変化が今後、視聴者全体の中のどの程度のボリュームに支持されるのか?ということは冷静に見極めていかなければならないでしょう。しかし、今後テレビ媒体がこのような変化の中にあることは恐らく否定しがたいことだと思いますムだとするのならば、ビデオリサーチとしてもその準備を今からしていかなければならないことも言うまでもないことでしょう。

■デジタル放送時代の視聴率のポイントは?

 では、具体的にはどのように対応していくことが考えられるのでしょうか?ここでは「デジタル放送時代の視聴率」について5つのポイントをあげてみました。

 まず第-に、デジタル放送時代は「マルチメディア時代」でもあるということが指摘できます。その意味におきましては、今後は調査対食とする「テレビ受像機の種類」を限定すること自体にいずれ意味はなくなるかもしれません。

 次に、そうした変化の中では調査の枠組みを「受像機単位の測定から、人間単位の測定に」切り替えていくことも考えられるのではないでしょうか?現行の視聴率調査では、自宅内の据え置き型テレビのみを調査対象としていますが、それ以外の受信機における視聴時間が相当量になった場合、「どの受像機がどれだけ視聴されたか?」ということよりも「受像機は問わず、どれだけ視聴されたか?」ということの方がより意味を持つものと考えられます。また、このように「人間単位の測定」を行った場合、テレビ視聴条件(いつ・どこで・どんな受像機で等)とコンテンツの関係も変わつてくるかもしれません。

 第三に、「タイムシフト」による蓄積型視聴が相当量行われた場合、これまでの「リアルタイム視聴のみを視聴率とする」考え方も変えていかなければならないことになるでしょう。例えば、これまで「フジテレビの月9ドラマの視聴率を算出するとすれば、21時00分から21時54分までの毎分視聴率を54個足し上げて、その合計を54で割ったものが番組平均視聴率」ということになっていましたが、タイムシフト視聴が多くなった段階では、「時間軸による接触・集計」ではなく、「(ある条件内で)時間は問わず、とにかくコンテンツに接触したか?」を基準に集計を行うことも考えられると思われます。

 第四に、テレビのコンテンツがこれまでのように一方向だけで送られてくるものでなくなるとするのならば、すなわち、「インタラクティブ機能によって、視聴者から放送事業者側へも情報がのぼるようになる」とするのならば、その「のぼり情報」の測定も課題としてあがってくることが考えられます。 これは広告効果論からみると、これまでの視聴率が「到達レベル」の効果確認しかできなかったことに対し、「行動レベル」までも確認できるという意味があることになります。この時テレビメディアは、「SPメディア」としての機能付加も果たしたことになるとも考えられます。視聴率もこれに応じた考え方を導入していくことが求められてくるのではないでしょうか?

 最後に、このような段階においては「視聴率自体を進化させる」ということだけではなく、「多メディア化・高機能化に対応して測定された膨大なデータを、より効率的に集計・処理できるアプリケーションも求められてくる」ことになるかと思われますム当社としても現在「オプティマイザー」や「データマイニング」の研究を行っているところであります。

■おわりに...

 ここまで「デジタル放送時代の視聴率」について、基本的な考え方を述べてきました。但し、ここで示したことはあくまでも「現行のビジネスモデルの延長線上の範囲」を想定した上でのことでした。今後はこれまでとは根本的に異なったビジネスが現れることも予見できます。この時「そのビジネスにとっての視聴率とは何か?」ということにも、当社は目を向けていかなければならないと考えています。

 その一方で、改めて思うのは、今後こうしたメディアの変化が世の中の視聴者のどのくらいのボリュームにいつ頃から受け入れられるのか?ということです。技術的な変化があったとしても、それが視聴者にどのように普及・利用されていくのか?ということによって、その意味は大きく変わってくるものと思われるからです。

わたしたちビデオリサーチとしては、今後のメディアの変化予測する際に、熱い思いと同時に、クールな目をもつことが重要であると考えています。

メディアマーケティング局 デジタルメディア部  尾関 光司

                         (E-mail:v005647@videor.co.jp)

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