US Media Hot News 「米ナッブスター裁判の行方」

VRDigest編集部
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※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 2月下旬、インターネット上の楽曲無料交換サービスを巡る"米ナップスター対全米レコード協会(RIAA)"の裁判で、ナッブスターは10億ドルを支払ってRIAAとの和解にこぎつけました。

 ナップスターは、営業停止をすんでのところで免れ、「やれ、一件落着。」と報じられたのも束の間、その後、両社は再び相手の態度を不服として裁判所に訴えており、現在、差し戻し審が行なわれています。

 双方の歩調が崩れた原因は、楽曲を選定する「フィルタリング」という作業に対する見解の相違です。3月に北カリフォルニア連邦地裁が下した仮処分で、ナップスターは、RIAAをはじめとする音楽業界側が提示した楽曲をファイル交換サービスから削除するように言い渡されました。もちろん、業界側が著作権を保有する楽曲に限り、著作権保護を受けないフリー曲目は対象外ですが、RIAAが提示した分だけでも3月上旬の時点で13万5000曲に上ります。

 ナップスターが不服としているのは、この楽曲の中には、仮処分が下る遥か前の時代のものも含まれることや、楽曲の名称が不正確であることなどです。ナッブスターはすでに15万ドルという大金と270

0時間に及ぶ労力を費やしており、これ以上の支出を食い止めたいと願っています。

 一方、RIAAが不満を抱くのは、ナップスターのフィルタリング技術と対応の悪さです。勧告を受けた楽曲をいったんファイルから削除しても、ナップスターの検索システムでは、スペルミスや文字列順序の多少の違いをクリアできるように設定されているため、楽曲ファイルの違法ダウンロードを完全に遮断することができません。さらにRIAAは、仮処分で決められた「勧告から3営業日のうちにファイルを削除する」という期限を、ナップスターは遵守していないと主張しています。

 そもそも両社の争いは、ナップスターの無料サービスが、違法か合法かという点から始まりました。99年の「RIAA対米ダイアモンド・マルチメディア社」の訴訟で、MP3プレーヤーを利用した楽曲ダウンロードが合法と最終的に判断されたことや、80年代の「映画業界対ソニー」の訴訟で、VTRは映画のコピーを作り出すほかに他の利用法もあるとして違憲判決を免れた例を引き合いに、ナップスターは強気の姿勢を貫いていました。

 ところが、ナップスターの人気が沸騰するにつれ、海賊行為の氾濫を懸念する声も高まり、ナップスターの形勢はだんだんと不利になってきました。そして、今年2月に「違法」の判定が下り、著作権で保護された100万ファイルにのぼる楽曲全ての交換サービスを「全面停止」という厳しい命令まで下りました。その後、全面停止命令については「厳しすぎる」として修正が加えられましたが、違法のレッテルは消えず、今後も勝訴の見込みが薄いと見たナップスターは、「フィルター導入」という自主規制に乗り出したわけです。この大きな譲歩によって両社の争いは"第2ラウンド"に突入し、現在に至っています。

 ナップスターは音楽業界側の対応に不満をこぼしながらも、歩み寄りの姿勢は見せており、フィルタリング技術の改善やサービスの有料化に向けて手を尽くしています。フィルタリングについては、CDデータベース企業の"米グレースノート"と提携を結びました。同社が開発した「楽曲認識サービス(MRS)」を利用すると、MRSに組み込まれた文字列照合技術によりフィルターの層がぐんと厚くなり、ナップスターの検索サービスでは遮断しきれない楽曲も漏らさず保護できるようになります。

 有料サービスについては、2000年末に提携した独ベルテルスマンの子会社、"デジタル・ワールド・サービス"と協力して、今年7月あたりから月5.95ドル~9.95ドルという料金設定でスタートしたいと計画しています。先ごろでは、新たに音楽ベンチャー"米ギガビート"との提携を発表しました。新曲リリースの評価や楽曲の紹介を掲載する同社のサービスは、ナップスターの有料サービスに付加価

値をもたらすと期待されています。

 あの手この手で音楽業界側を満足させようとしているナップスターですが、まだまだ前途は多難です。最近では、ナップスター相手の訴訟が相次ぎ起きています。3月6日には音楽の最高峰と言われる"米グラミー賞の組織委員会"が訴訟に踏み切り、その翌日には米ネット音楽配信の"Eミュージック"が提訴しました。また、今後も音楽家や流通業者までが便乗する可能性もあると言われています。

 連邦裁判所が4月10日に予定している公聴会の内容次第では、集団訴訟に発展する恐れもあり、ナップスターにとっては戦々恐々の事態になっています。

 新しい訴訟の波で焦点となるのは「意図的な著作権侵害行為」ですが、「意図的」との判断が下った場合は、賠償金が楽曲1曲につき最高15万ドル、「意図的でない」との場合でも500ドル前後になる見込みで、訴訟が増えれば増えるほどナッブスターの経営状態が悪化するという状況になっています。

 しかし、いくらナッブスターを徹底的に叩いたところで、音楽業界側は時代の流れに対する勝利からはほど遠いところにいます。ナッブスターは第一人者ということで、夫面に立たされている訳ですが、"スカウア・ネット"などの後続企業が続々と登場しています。「ピア・トゥー・ピア(P2P)」と呼ばれる個人ユーザー同士のファイル交換を促す「ヌーテラ」や「フリーネット」といったサービスも増えており、こちらはホスト・サーバーや企業形態といった実体がないため、提訴するにも個人ユーザーを相手取るしかありません。

 ナップスター1社に時間を費やし一喜一憂している間にも、無料で楽曲をダウンロードできるサービスは増殖しており、インターネットを利用した楽曲無料交換サービスは広がりつつあります。

 この訴訟の行方は、音楽業界だけではなく、ナップスター・ユーザーにとっても、目が離せない状況になっています。

                                   (2001年4月2日記)

Video Research USA, lnc.

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