US Media Hot News ネットサービス有料化の動き

VRDigest編集部
VRDigest編集部
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!

※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

 最近米国で、インターネット・サービスを有料化する動きが相次いでいます。昨年春あたりから、株式市場ではいわゆる"ドットコム離れ"が進んで投資家が資金を引き揚げ、広告市場では従来型企業がネット広告費を大きく減らし始めました。あおりを受けたネット関連会社が次々と倒産する中で、「明日はわが身」と言わんばかりに各社ともサービスの多角化や広告依存からの脱却など、生き残りをかけて必死の模索を続けています。

 実は、過去にもネットサービス有料化の動きがありました。2、3年前のことですが、米マイクロソフトが発行するオンライン雑誌「スレート」の購読サービスはその一例です。はじめは無料でスタートしましたが、業界内の有料化の流れに便乗して課金制を導入しました。しかし、読者数が伸びないため、1年もたたないうちにフリーサービスに戻すという失敗に終わりました。

 同じ頃、米メディア大手サンノゼ・マーキュリーもオンライン新聞を有料で始めましたが、敢え無く敗退。収益よりもユーザー数が重視された時代で、読者のつかない有料サービスは敬遠されました。

ところが、ここ1年でネットサービスを取り巻く環境はガラリと変わりました。投資家や広告主の目は厳しくなり、収入に結びつかないユーザーへのサービス提供に批判の目が向けられるようになりました。資金引き揚げや広告費削減を余儀なくされ、倒産に追い込まれたネット企業の数は、2000年1月以降でざっと350社。そのうち約半数は、今年に入ってからだと聞きます。

 こうした事態を重く見て、業界は再び有料化へと動いています。ネット株バブルを象徴するかのように浮き沈みする米ヤフーは典型例で、収入の8割以上を占めてきた広告の落ち込みを補うために、有料プレミアム・サービスを続々と打ち出しています。オークションや求人情報、イエローページや写真などのサービスで、これに最近、金融情報が加わりました。ほかにも、百科事典の米ブリタニカがオンライン版を全面有料に切り替えたり、金融情報サイトの米フリー・エドガーが一部サービスに料金制を導入しました。

 今回の流れが業界に根付くかどうか分かりませんが、各社の成功のカギは①ブランド力、②付加価値、③タイムリーサービスの3つだと言われています。その点で高く評価されているのは米有力系氏「ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)」と米ビジネス誌「コンシューマー・リポート」のオンライン版で、この2つのサイトのようにユーザーのターゲットを絞ることも成功を招くと見られています。しかし、オンライン版WSJでさえも未だに黒字転換しておらず、サービス収入から十分な利益を上げるのは難しいのが現実です。

サービスのジャンル別で見た場合に有料化が定着しそうなのは、音楽や映画の娯楽コンテンツ配信、業界アナリストの分析レポート、ユーザー個々のニーズを汲んだショッピング・情報提供サービスなどだと予想されています。逆に、無料でなければ成り立たないのが、一般大衆に向けたマス情報の配信などで、ユーザー個人がどれだけ利益を得られるかという付加価値の大小が決め手になりそうです。

今回の有料化の動きを投資家や広告主はおおむね歓迎していますが、ユーザー間の反応はまちまちです。ある調査では、消費者の約49%が画像や電子書籍、情報などデジタル・コンテンツのダウンロードに料金を支払うことに抵抗感を示しています。別の調査でも、有料に抵抗がある(69%)という結果でした。

 ユーザーが拒否反応を示すのはもっともです。これまで無料で好き放題に利用できたサービスに急にお金を払えと言われたら、誰だって損をした気分になります。よほど特別な内容でない限り、代わりに類似サービスを無料で提供しているサイトを探すにちがいありません。

 しかし、有料化によってユーザーが得るプラス面もあります。当ての無いネットサーファーが排除されて、本当にサービスを必要としているユーザーのアクセス・スピードが速まることでしょう。広告に頼らないサイトができることで、むやみに個人データの流出が抑えられ、プライバシーを保護できる利点もあります。サイト運営側が安定収入を得るようになって資金を再投資すれば、当然のことながらサービス内容の改善も期待できます。

もちろん、マイナス面もあります。ネット企業にとって有益だったユーザーまで他の類似サイトに流れ、みすみす排除してしまうリスクがひとつです。無料サービスという最良のトライアル・チャンスを提供できないことで、潜在ユーザーを門前払いしてしまう可能性もあります。投資家や広告主の顔色を窺うあまり、実体に基づかない高い料金設定をして失敗を招くかもしれません。

それでもネット企業の約78%は、2003年までに有料モデルの導入を計画しています。ただし、そもそも広告依存の体質から脱却するための一策です。2、3年前と違って状況は切羽詰っており、有料化がうまくいかない場合を考慮して各社は他の収入源も確保しようと躍起になっています。今のところ見られる動きとしては、他社へのサービス・コンテンツ配信、マイクロペイメント(少額決済)制の導入、複数のサービスを束ねて提供するパッケージ化、モバイル機器へのサービス配信などがあります。いずれも最近の試みで、どれが最良モデルかといったことは分かりません。ただ言えるのは、サービスの有料化を含めたが各モデル選択肢のひとつに過ぎず、「安定収入」という本当の狙いを達成できれば、手段は構わないということです。

 これまで人気に乗じて資本家や広告主からの資金を湯水のように使ってきたネット企業が、独立独歩への転換を迫られており、今後どう立ち振る舞うのかが注目されます。

Video Research USA, Inc.

この記事をシェアする
  • facebook
  • facebook
  • Twitter
  • HatenaB!