ネットリサーチ自主化への取り組み ~Web版CM評価調査・動画興味反応曲線調査から~

VRDigest編集部
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※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

1998年頃からのインターネットの急速な普及で、インターネットを挿り用した調査が注目され始めました。米国では比較的早く1995年頃から実用化されてきましたが、日本ではインターネットの利用者に偏りがあることなどで、使い方が限定されていました。1999年に入り、インターネットの個人(家庭)での普及が急嘩に増加し、インターネットを利用した調査もマーケティングリサーチの効果的手段として定着しつつあります。

そこで、自主調査のネットリサーチ化を目指し我々が取り組んできたWeb版CM評価調査・Web版動画興味反応曲線調査の実験結果を基に分析事例を交えながら今後のネットリサーチ(以降Web調査と記す)への展開・方向性について述べたいと思います。

■第1回Web版CM評価実験調査から

第1回実験調査は、当社が毎月実施している自主調査「CMカルテ」と同時期に、同設問項目で調査素材を20素材抜粋して実施しました。「CMカルテ」とWeb調査の実験結果を比較したところWeb調査の傾向として以下のことがわかりました。

 ◆認知率は平均10%高い

 ◆認知率以外の評価項目は平均0.5~6%高い

 ◆クリエイティブ・イメーゾ評価の平均回答個数が「CMカルテ」の約1.5倍

 ◆約4割の人が30分以内で回答終了

 ◆調査開始から4日間で約8割の方から回答を収集

 ◆回答時間帯は平日夜・深夜に集中

Web調査の方が、項目毎の評価は高くなる傾向を示しています。それがCMをカラー表示した効果なのか、調査素材数の差によるものなのか、又は、インターネットユーザ特性によるものなのかは、今後追求すべき課題と捉らえています。全項目とも全体的に数字が底上げされていますが項目間の相関はかなり高いことが分かりました。このことからWeb版CM評価調査は、妥当性があり使えるのではと判断しました。

<第1回Web版CM評価実験調査 調査概要>

調査地域    :東京30㎞圏

調査対象者 :満13~59才の男女個人

調査方法 :ビデオリサーチ所有の定性モニターより抽出

調査標本 :有効回答者数577サンプル

調査期間 :'00/09/20~'00/09/26

調査対象CM数 :20CM

<CMカルテ 調査概要>

調査地域   :東京30kn圏

調査対象者  :満13~59才の男女個人

サンプリング方法 :無作為二段抽出法

調査方陰   :留置調査法

調査標本   :800サンプル指令

       (有効回収率は約80%)

調査期間   :'00/09/20~'00/09/26

■Web版CM評価調査の方向性と位置付け

第1回実験調査結果からネットリサーチによるTVCM評価調査の方向性として次のようなことが考えられます。

◆調査ボリューム(一度に10素材程度が限界、回答時間は30分程度を目途)に限界がある

◆一般的に自由回答の記入率が高いことから自由回答を豊富に盛り込んだ定性調査に近い内容が実施できる

◆画像(動画)呈示が容易

◆インタ「ネットユーザのマーケット代表性の問題から、特性を限定(20~40代、サラリーマン、主婦、学生)した調査に向いている

以上のことから、CMカルテが定型の質問項目を過去の事例(ノーム値)と比較することによって自社素材の成績を把握するCMの「通信簿」的なものと考えると、ネットリサーチによるTVCM評価調査の位置付けは、定量的な評価以外にフォーカスして、「このCMのどの要素を改良するべきか?」「どうすればより良いCMになるのか?」といった従来の「CMカルテ」だけでは得ることのできなかった質的な側面を補完し「CMカルテ」の処方箋となる調査として位置付けられるのではと考えられます。

そこで、第2回CM評価実験調査では、CMの印象度、理解内容、よかった点・悪かった点などCMカルテでは分からなかった内容を補完する項目と自由回答を豊富に盛り込んだ調査を行いました。

■第2回Web版CM評価実験調査から

この調査では、インターネットユーザの大半を占める男女20~49才の中で「最近3ヶ月以内、にビールを飲料した方」を対象にビール素材(7CM)について実施しました。更に、*JavaAppletを使って静止画を表示することで単純に画像を右クリックするだけでは保存できない仕組みによる画面コピー対策をとり入れたもので実施しました。第1回実験調査と合わせて今回の実験結果から更に以下のことがわかりました。

 ◆認知率は平均10%高い(平均10%高い)      ( )は第1回実験調査結果

 ◆認知率以外の評価項目は平均2%高い(平均0.5~6%高い)

 ◆イメーゾ評価の平均回答個数が「CMカルテ」の約1.7倍(約1.5倍)

 ◆約5割の人が30分以内で回答終了(約4割30分以内)

 ◆調査開始から4日間で約9割の方から回答を収集(4日間で約8割回収)

 ◆回答時間帯は平日夜・深夜に集中(同じ)

 ◆自由回答率好意・購入喚起の理由について9割以上の方が回答(自由回答項目なし)

 このように、選択式の評価項目に関しては第1回実験結果とほぼ同じ結果が得られましたが、第2回実験調査の主眼である質的情報(自由回答)については、テキスト(文章)に含まれる内容(意味)を抽出する技術として注目されている「テキストマイニング」という手法を用いた分析を実施しました。次に事例をご紹介します。

*Java言語はSunMicrosystemsが独自に開発した、オブジェクト指向型のプログラミング言語で、特にWeb上で利用されるJava言語で記述したプログラムをJavaAppletと呼びます。

<第2回Web版CM評価実験調査 調査概要>

調査地域 :東京30㎞圏

調査対象者 :満20~49才の男女個人

調査方法    :ビデオリサーチ所有のOnline-Access(ネットリサーチモニター)より抽出

調査標本 :有効回答者数652サンプル

調査期間 :'01/03/16~'01/03/20

調査対象CM数 :7CM(CMカルテvol.136からビールCM)

調査対象CM内容:カラー、6コマ表示

■第2回Web版CM評価実験調査から「テキストマイニング」による分析事例

調査を行った7素材の中から1素材について、次にあげる質問の回答を、テキストマイニングと呼ばれる手法を用いて分析してみました。

◆あなたが「よい」とされた点について、どうしてそうお感じになったのか教えてください

◆あなたが「よくない」とされた点について、どうしてそうお感じになったのか教えてください

まず、自由回答に答えた人の割合を調べてみました。いずれも通常の質問紙による調査よりも多いといえます。次に、一人当たりどれくらい回答しているかを調べました。これには、[回答量】という尺度を用いました。[回答量】は、名詞、動詞、形容詞など、単独で意味のある単語を数え上げ、それを回答者数で割ったものです。結果、「よくない」点の方が、多くの人に回答され、その回答語数も多いことがわかります。

vol396_04.jpg

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しかし、[回答量]が多くても、皆が同じことを答えている場合も考えられます。そのため、[回答の質]という尺度を用いて、回答の広がり具合を調べました。[回答の質]は、単語の種類数を単語数で割ったものになります。結果、若干ではありますが、「よい」点の方が、バラエティに富んだ回答だといえます。そこから、「よい」点に比べ、「よくない」点は、回答内容が共通している(バラエティに富んでいない)傾向があるといえます。

次に、各設問について、どのような回答傾向があるのかを調べました。初めに、回答に用いられた単語の種類ごとにその頻度を数え、上位9単語を見てみました(単語は活用がある品詞の場合、標準的なものに直してあります)。「よくない」点に否定語の"ない"が282個と非常に多いですが、この単語は「よい」点でも出現しています。また、"ⅩⅩ"や"わかる"や"CM"といった単語も両方で出現しています。これでは、設問ごとの回答傾向がはっきりしないので、さらに突っ込んで、これら単語間の連を調べてみました。太線、実線、点線は単語の関連の強さを示しています。単語同士が同時に出現する確率が高いほど、線は太くなっていきます。

vol396_06.jpg

図1・2からわかるように、「よい」点と「よくない」点では、単語の関連が異なります。

「よい」点の方では、"印象"⇔"残る"が見られるので、「印象に残る」という文を含んだ回答があると想定できます。この素材は、「印象に残る」ので、「よい」というわけです。

以上のような、文章データから、役に立つ知識・情報を取り出そうとする技術を総じてテキストマイニングと呼びます。

しかし、よく見ると両方で共通して、 "ⅩⅩ"⇔"ない"

                      "ない"⇔"わかる"

の関連が強いことがわかります。これはどういうことなのでしょうか?

以上の単語を含んだ元データを見てみましょう。すると、「よい」点の方では、「ⅩⅩがわからない」ところを肯定的にとらえ、「よくない」点の方では、否定的にとらえていることがわかります。

「よい」点

・Ⅹはだいぶ定着してきたと思う。何を言ってるのか良くわからないのもいいのでは。

・なんでⅩⅩなのかわからないけど、つい音楽にのせられて見てしまう

「よくない」点

・ⅩⅩのインパクトが強すぎてビールのCMとは最後のほうまでわからないし、ブランドも記憶に残らない。

・インパクトはあるけど,ビールのCMだかⅩⅩのCMだかわからない...。

テキストマイニングを行うことで、自由回答データから、キーとなる単語とその関連を見ることができました。まとめると、この素材は、「印象に残る」ので、「よい」が、「ⅩⅩがわからない」ので、「よくない」と言えます。

今回のようにテキストマイニングだけでは不十分で、元データを読み込む必要がある場合もありますが、どの元データにまとを絞って読み込めばよいのか?という課題に対して、テキストマイニングの手法は有益な情報を与えてくれるのではないでしょうか。

■Web版CM評価調査・動画興味反応曲線調査から

 当社が考えるCM評価調査のネットリサーチ化への取り組みのもうひとつの大きな柱として従来集合調査(ホールテスト)で実施してきております動画興味反応調査をWeb上で実施するWeb版動画興味反応曲線調査システムがあります。

[目的]

 現在の当社ホールテストでのCM興味反応曲線調査システムは、機器の施設配備の関係から東京本社と一部の支社でしか実施ができません。また、調査対象者もホールテスト参加可能者という、時間的・地理的制約があるため、Web版動画興味反応曲線調査システムを開発することで、これらの制約が解決すると共に、調査準備期間の短縮・費用の削減を図ることができます。

 上記の目的を達成するために先ず社員を対象にインターネット接続環境を3カテゴリー(アナログ接続、ISDN接続、CATV経由又はADSL接続)に別けて動画再生状況の比較も一つの目的としてWeb版動画興味反応曲線実験調査を実施しました。

 この実験調査ではストリーミングによる動画再生技術を用いました。その理由は、動画の違法コピーを防止するためと現在の主流接続方法であるアナログ・ISDN回線に適応させることが重要と考えたためです。更に、画面上にボタンを設置しそのボタンにマウスを這わせることで動画の興味反応データを収集できる仕組みとしました。

 実験後にアンケートを行った結果をまとめると、

 ◆動画再生までに数十秒かかった

 ◆再生時の画像が粗くタレントの顔が識別できない

 ◆実際のTV画面で見る印象とかなり異なる

といった意見が特にアナログ・ISDN接続着から多く挙げられた。反面、CATV経由又は、ADSL接続環境の対象者からは特に不満の声はありませんでした。こうした実験結果から現状では、動画による調査はCATV経由又はADSL接続者など"ブロードバンド回線ユーザに限定した調査としてのみ実編可能であると考えます。

図3:【参考】(例)CM興味反応曲線

vol396_07.jpg

図3は30秒CMの興味反応曲線を示したものです。青の折れ線は印象的・おもしろい・親しみがあるといったポジティブなイメージの反応曲線です。一方、グレーの折れ線はつまらない・下品・おもしろくないなどネガティブなイメージの反応曲線となります。

<Web版動画興味反応曲線実験調査 調査概要>

調査対象者 :社員14名(自宅内インターネッ卜接続者)(アナログ接続:5名,ISDN接続:5名、CATV経由又はADSL接続:4名)

調査期間 :'01/03/24~'01/03/25 

調査対象CM数 :4CM(15秒×2,30秒×1,60秒×1)

■今後の課題

今後の課題として以下に幾つか項目を挙げましたが、まだ実験段階にありますので全体的に汎用性のあるシステム作りが今後の課題となると考えます。

 ◆設問項目を自由に組替えられる汎用性のあるシステム作りが必要

 ◆静止画像の表示順・表示位置をランダムに変更が可能なシステムとすること

 ◆テータ集計・解析のシステム化

 ◆自由回答分析ツーレ(ラキストマイニンク等)を用いた分析メニューの充実

 ◆評価広告の保護(動画・静止画の違法コトの防止策)

 ◆Web版動画興味反応曲線調査の実績を積み現状との比較を行う

■今後の展開・方向性

ネットリサーチの今後の展開・方向性として以下に幾つか挙げておきます。当社は広く社外の優秀な技術を持った他社との技術提携を進めながら、通常の質問紙による調査では実現できなかった様々なリサーチニーズをネットリサーチ上で展開実現したいと考えております。

 ◆オンエア前のCM/絵コンテ評価調査

 ◆TVCMに限らず、交通・屋外広告・商品パッケージ評価調査

 ◆全国の支社への展開(会議室とPCがあれば実現可能なシステム)

 ◆Web版動画興味反応曲線調査対象パネル(CATV経由又はADSL接続者を対象)構築

 ◆掲示板を用いたWeb版グループインタビュー

 ◆商品パッケージの3D表示によるバーチャル商品評価

■最後に

今回は、私共が去年から取り組んできたWeb版CM評価調査とWeb版動画興味反応曲線調査について実験調査から事例もあわせてご紹介しました。

今後益々増えるネットリサーチへの要請を基に、今年下半期より更に具体的な形で皆様にご提供していく予定です。

    eマーケティング局 データべ-ス管理部 北 信吉(E-mail:v006100@videor.co.jp)

                  事業推進部 田村 玄(E-mail:v009090@videor.co.jp)

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