デジタルメディア教室(6)~情報リテラシー(機器操作抵抗感)~

VRDigest編集部
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※本記事は2001年に発刊したVR Digestに掲載されたものです。

最近、街中や電車の中で、携帯電話でメールのやりとりをしたり、情報検索をしている人をよく見かけます。彼らは携帯電話の小さなキーボタンを実にスムーズに、しかもスピーディーに使いこなしています。しかし、逆にこの携帯電話のキー操作に抵抗感を持っている人も多いのではないでしょうか。そして、そのような人達にとっては、「どこでも」自分の欲しい情報やコンテンツにアクセスできるモバイル・メディアとして注目されているこの携帯電話が、単なる携帯性のある「電話」というツールでしかない可能性が十分にあります。

このように、日々新聞や雑誌をにぎわしている新しいデジタルメディアですが、その普及の鍵を握るのは、実はハードの性能や機能・価格のみならず、このような機器の操作に対する抵抗感など情報リテラシーの占めるところが大きいのではないかと思われます。そこで今月は、この機器操作の抵抗感について一考してみたいと思います。

 現在、世の中に浸透している機器換作としては、テレビのリモコンや携帯電話など基本的に「片手親指で操作するタイプ」、パソコンのキーボードなど「両手両指で操作するタイプ」、同じくパソコンのマウスなど「片手で画面上のポインタを動かして換作するタイプ」、銀行のATMや駅の券売機など「直接画面に触れて操作するタイプ」、また「音声で操作するタイプ」などがあげられます。

そして、このうち「(テレビなどの)リモコン」「(パソコンなどの)キーボード」「(銀行のATMや駅の券売機などの)タッチパネル」の3つの機器換作に対する抵抗感について、当社のMCR(Media Contact Report)調査データで見てみると図1のようになっています。

【図1 機器操作抵抗感】

vol396_19.jpg

 ※スコアは"とても抵抗を感じる"+"やや抵抗を感じる"

これによると、3つの機器の中で最も抵抗感が少ないのは「リモコン」で、"とても抵抗を感じる"または"やや抵抗を感じる"という人が個人全体の約1割しかいません。しかし、「タッチパネル」や「キーボード」に抵抗感を持っている人は比較的多く、それぞれ約3割、4割います。ちなみに、これら3つの機器全てに抵抗を感じるという人は個人全体の7%で、逆にいずれにも"まったく抵抗を感じない"という人は約2割います。

これを性・年代別に見ると(図2参照)、いずれの機耕)男女50~60代で抵抗感が高く、中でも「キーボード」は男性60代、女性50代で約6割、女性60代にいたっては約8割の人が抵抗感を持っています。

逆に、機器操作に対する抵抗感が低いのは男女20~40代で、中でも興味深いのは「タッチパネル」の抵抗感が男性より女性の方が低いという点です。BSデジタル放送チューナーのリモコンの複雑さが指摘されたりもしますが、例えば、リモコンにタッチパネルを併用するなどの工夫をすると、今後デジタル放送のキラーコンテンツとして期待されているTコマースのターゲットである女性が受け入れやすいものになるのかも知れません。

【図2 性・年齢別 機器操作抵抗感】

vol396_20.jpg

 このように、代表的な機器操作である「リモコン」「キーボード」「タッチパネル」の抵抗感について見てみると、各々の機器操作についてある-定の抵抗を感じている層が存在していることがわかります。そして、これらの層にその機器操作を要求するデジタルメディアを受容させることは困難だと思われます。

 そこで重要なのは、その機器操作に抵抗を感じてる人は絶対にそれを操作することができないということではなく、むしろその抵抗感を減少させるにはどうしたらいいのか、という視点だと思われます。例えば、「将来、携帯電話をテレビやエアコン等の家電リモコンに...」という話を耳にすることがありますが、これも突如携帯電話がリモコンになったとしてもその操作に抵抗を感じる人は多いと思われます。しかし、冒頭に示したような、街中や電車の中で携帯電話でメールのやりとりをするという経験を経た人たちにとっては、携帯電話をあらゆる家電のリモコンにという話は、それほど抵抗を感じることなく受け入れられる事なのかもしれません。

 また、同じ事は機器操作の抵抗感以外にも言え、例えば、先程少し触れたTコマースについても、現在パソコンで行われているEコマースが、お茶の間の慣れ親しんだテレビで行えることが、そのままコマース市場の拡大を意味するというのはあまりにも短絡的で、むしろ、そもそもクレジットカードで決済をすることに抵抗を感じている人が世の中にどれぐらい存在するのか、また、そのような人たちの抵抗感を減少させるにはどうしたらいいのか、といった視点が重要なのではないでしょうか。

 このように、今後の新しいデジタルメディア及びそのサービスの普及においては、それ自体の性能や中身もさることながら、それを生活者に受容させていくプロセスこそが重要であり、そこを疎かにするとどんなに素晴らしい性能や機能をもった新しいデジタルメディアでも、日の目を見ないまま消えていくということも考えられます。

 当社としても、デジタルメディア時代を予見するにあたり、今後ともこのような生活者の視点にたった調査・研究に積極的に取り組んでいきたいと思っております。

                 メディアマーケティング局デジタルメディア部  伊藤 正裕

Media Contact Report(MCR)調査概要

・調査地域 :東京駅を中心とした半径30km圏

・調査対象者 :満10~69才の男女個人

・標本抽出法 :住民基本台帳より無作為2段抽出法

・標本数 :指令標本数2,600人有効回収標本数1,986人

・調査方法 :訪問による質問紙留置法

・調査対象日 :2000年6月5日(月)~11日(日)

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